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 あー、せいせいしたせいせいした。
 ちょっと絵が上手いからって世の中渡っていけるとは限らない。才能の暴力を見せつけたられた生活から解放されたんだ!

 次の新天地で俺の新しい生活がはじまる!
 と意気揚々出来たのは数日。

 

 ふと気づけばヤツがバカをしてないか、次の同室になるやつに迷惑かけてないか。ともう関係ないのにおかんみたいな思考をしてしまう自分がいやだああああ!(頭抱え)
 言っておくが俺は純粋にノーマルだ! 可愛い女の子が好きだ! 守りたくなるタイプとか最高だよな!!!
 だから男をかいがいしく世話する趣味なんてかけらもない!!!

 ……筈なんだがな。
 

 あいつ、七夜璃玖は間違いなく天才だった。だからなのかどこか浮世離れしていて、顔が滅茶苦茶悔しい位イケメンで。
 あいつ本当車椅子じゃなかったら死ぬほどもてただろうな。それでもいい、と思う程思われるにはあいつはバカすぎる。女心を悟らないにもほどがある。
 『付き合って下さいって言われてどこに? と聞いたら怒られた。理由がわかるか?』
 と言われた俺の身になれえええええええ!!!


 ぜーぜー。ふっ、もういいんだ。俺が気にしてやる必要はないったらないんだ!!
 と思ったんだけどな!!

 

 

 ばーちゃんが腰痛めて入院して。病院にいったが運の尽きだったな……。

「げ」
「あ」
 嫌な顔を思わずした俺と、不愛想な顔ながらに地味に嬉しい時の顔をしやがった俺の元同室、璃玖がそこに……いた。
「遙。元気か? 新しい学校はどうだ?」
 ……こいつは嫌味とか含まず純粋にこういう事言うんだよな。だから変に憎めないし嫌いになりきれなかった。
 もう一度いう。俺は純然たるノーマルだ!
「まぁぼちぼち。お前こそ新しい同室に迷惑どうせかけてるんだろ? 大丈夫なのか?」
 迷惑かけてないやつは想像が出来ないから言い切ってやった。
「……迷惑、まぁかけざるを得れないな」
 足元を見て言う璃玖。まぁそこはどうしようもないし俺だってどうこう言う気はない。
「違う。俺はお前の性格の問題を指摘しているんだ」
「……俺そこまで迷惑かけたのか?」
 いつもこいつはこうだ。ただの馬鹿なんだ。
「けっ。しらねーよ!」
 ふいっとそっぽ向いて逃げようとした腕を掴まれた。おい、お前車椅子から落ちそうになってるじゃねーか! やめろ!
「遙、待ってくれ!……っと」
「あーこら! 落ちるな! ったく。なんだよ?」
 介助も手慣れたものだ。俺は手際よく璃玖を椅子にしっかり戻してやった。
 おかげさまで介護の世界にいくかーって思いきれたあたりが嫌だ。なんだか本当悔しいものがある。
「俺、お前にいかに甘えていたかいなくなってわかった。だからお礼を言いたかったんだ。ずっと、有難う。俺遙がいたから自由に絵をかけていたんだな」
 ……プチ感動した。
 こいつときたら出来ないことが多いのは仕方ないにしても画材そのままとか放置とか常習犯で絵に熱中すると他の全部を捨ててやるやつだった。
 それに日常もすんげー適当だったし。服なんて制服きてればいい、とか毎日それしか着ないから始まり食べ物も用意しなかったら消しゴムようのパンをうっかり口にする始末。何度俺が突っ込んだことだか……。
「あー、いい迷惑だったよ」
 けっ。これ位言う権利あるだろ。
「そうだろうな」
 そう言って璃玖は少し笑った。軽口が叩き合える位にはまだ近しかったのか、俺ら。

 

「少し、話をしないか?」
 俺はそれに気を許すべきじゃなかった。
「わーったよ」
 うっかりなんてするんじゃなかった。

 


 璃玖はそのつらと車椅子で目立つ。人目に触れない病院の裏庭を選んで飲み物はおごらせた。
「お前新たな同室のやつと上手くやれてんのか?」
 俺があれだけ苦労したのをそいつもやってるのかと思うと……手を合わせたくなった。
「ああ。それなりにな。お前にしかられた部分は気を付けるようちゃんとしている」
「そ・れ・を! 俺といる時にやっておけ!!」
「それはすまない。本当に」
 くっそー。普通に謝られるとやりにけーなー!
「そのな、今の俺の同室……歌舞伎やるやつなんだけど遙は知ってるか?」
「あー、可愛い子なら覚えるけどそっちはどうかなー」
「顔いいぞ。立月美弦っていうんだけど」
 俺は盛大にジュースを噴き出した。
「どうした?」
「げっふげっ……!!!! おま!! そいつ……!」
 俺は知ってる! 俺は気づいていた!
 なぜなら俺には美少女センサーがばっちりついているからだ!!(キラーン)
 なんでか男としてあの場にいたあの美少女は俺の花丸チェックだったとも!!
 学院側ああああ!!! しっかりしろ! 男女で同室になってるぞー!!!
 ちくしょうリア充死ね! いや、待て、こいつの事だから絶対気づいてないな(確信)つまり男子と思い込んで共同生活……。なんとうらやまけしからん……!
「そのな、色々あって内緒にしてほしいんだが……俺は美弦が女子と知ってしまったんだ……」
「今すぐ部屋を変えろ!!!!! リア充は滅びろ!!!」
 想定外がすぐ起こる!! 璃玖、お前は本当前からそういうやつだったよ!!!
「……色々あってな。向こうの希望もあって女子隠しに協力しつつこのまま同室になる事になったんだ」
「なんだよその色々って……」
 うさんくせーうさんくせー。こいつツラだけはいいけどまさかそれでいい、とか?
 おれあの美少女の性格まではしらんからな。つまりリア充は爆発しろ。
「……ステ…ナ…ト……」
「ん? なんだって?」
 ぼそっとつぶやいた奴の声は上手く届かなかった。
「いや、なんだ。言えない部分もある。すまない。
 だが……なぁ、遙。俺はどうしたらいいんだろうか」
「は? 部屋変えればいいんじゃね?」
「それはしない。約束したから。ただ……その、たまに困る時があるというか」
 ほほう? こいつが困る? どんなだ?
「女だと思うと……落ち着かない時があるんだ……」
 ……は?
 なんだ? こいつ顔赤らめてね?
 え? なんだこれ?
 朴念仁で絵しか世界にないような奴だったよな? 璃玖って。
「普通にしないと相手が困るとわかってる。だから普通にしているつもりだ。
 ただ、相手を描きたい、と思う時があるし、描くと満足感があるというか。
 でも見ていると落ち着かない時もある」
 ……俺は白昼夢をみているんだろうか。あの、あの、あの!! 璃玖がこんな普通の男みたいな事を言いだすとか……。
 女か。女だ。この野郎。
「落ち着かない時どうしたらいいんだろうか……」
「よし、リア充殺す」
 俺は璃玖の頭にヘッドドロップをかけた。躊躇なく。
「真面目に苦しいんだが」
「おお、苦しくしてるからな! リア充しねえええええええ!!!!」

 病院の裏庭に怨嗟の声が響いた。


「俺は! 何も教えてやらねーからな! お前が自分で考えて決めろ!」
「……わかった。そうだな。自分でどうにかしないとな」
「そうだ!」
 ……変に答えを言うと絶対に、間違いなくこいつは暴走する。
 それよりは遠回りでも自分で自覚させる方がましだろう。投げたとも言う。
 俺はそこまで親切じゃねーやい!
「有難うな、遙」
「なんでだよ」
「いや、お前がそういうなら俺にはそういうのが必要なんだって思うから」
「……璃玖は少し変わったな」
「そうか?」
「ああ。お前前は他人にそこまで関心なかっただろう? 芸術として見れるかどうかってだけで」
「……否定しないな」
「いいんじゃねーの? 人間味が出てきて。お前の事情なんて興味ないから全く知らないけどさ。今のお前だったらまだましだっただろうな」
「遙がいてくれたからましになってただけだと思うぞ。お前のお陰だ」
「お、お前なー……」
 天然はこういう時本当強すぎる。
 何度でもいう。俺はノーマルだ!
「ちくしょう! 美少女でも紹介しろ!」
「そう言われても」
「だよな。お前にそんな知り合いいないよな!」
「……知り合い範囲で言っていいなら……この前会った子は可愛い部類だったろうけど……」
「詳しく」
「ちょっとした縁で顔を合わせた事がある小さめの子なんだけどな。体が弱いんだろうな。この病院で入院していて」
 ほうほう、俺好みの設定の子じゃないか。
「あまりに痩せてて見てられなくて食えるの聞いてリンゴもってたんだけど」
 ん? なんか一足飛びに展開の雲行きが怪しく感じて来たぞ。俺はわかる。なぜならこいつと付き合いが長いからだ!
「むいて食わしてやろうとしたら彼氏らしき奴が不機嫌になって出て行った。俺は間違っていたんだろうか?」
 そしてこのまがおである。

「おんどりゃー! 彼氏付を紹介しようとするなー! リンゴもってくまではギリギリいいとしても食わそうとするってなんだー!!! お前ちょっとそこになおれ!! もう一回お前のその性根叩きなおしてやる!!!」
 もう限界だった。

 ああ、だからこいつにもう関わりたくなかったんんだ。
 結局巻き込まれるんだからな! そして後始末が俺の仕事になるんだ!

 もう金輪際関わってやるものか!!
 

 そこ! フラグと言わない! 俺は絶対! 絶対! 新たな環境で幸せを掴んでやるからなーーーー!!!! 

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