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璃王さんと話してステイリーさんにキス(頬だし友愛…友愛…。うん。…愛情がなかった訳じゃないけど…)して思わず脱兎で逃げ出した後日 

私は【友達】になった璃王さんを探して学科塔で見つけた 

「璃王さん、こんにちはっ」 

笑顔で挨拶する 

「あぁルリアか、こんにちは。何か元気だね」 

「友達にまでそこまでどもりませんよ?私」 

慣れない相手にはいつもどもってしまう私だけど親しくなればその限りでない 
私にとって彼はもう親しみのある相手だ 

「そっか…。それは光栄だね」 

彼にとっての私も少し変わってくれたんじゃないかと自惚れる 
だって笑い方が変わった気がしたから 
友達って…良い響きだ…! 

「あの、少し良いですか?」 

「ボク?ステイリーじゃなくて良いの?」 

思わず真っ赤になった 
あーもう…!この人は…。気を使ってくれるのは有り難いけどわざと言ってない? 

「い、今は璃王さんに用事…というかお話です…」 

「話?良いよ。場所変える?僕も話すことあるし」 

「…璃王さんも?えと、はいっ…!ではそこの空き教室にでも」 

「了解」 

う、しかし友人とはいえ男の人と二人きりはやっぱりちょっと緊張する…! 
あれ?じゃあステイリーさんは?勿論最初は緊張した。 
けど今は………ドキドキしてるけど…安心するんだよな…。あと嬉しくて幸せになれる 
やっぱり私にとって特別なんだな、ステイリーさんは… 

そんな事を考えながら適当に席について向かい合う 

「で、では改めてまして…。 
重ね重ねになりますが先日は有り難うございました 
これ、お返しします」 

きちんと洗って包んだ借りたハンカチを買ってきたチョコレートと一緒に差し出しながら言った 

「わざわざ有り難う。でもお礼ならもう言われたから良いのに」 

と言いながらきちんと受け取ってくれた 

「いえ、その…あの…最後逃げ出してしまいましたし……。すみませんでした…と」 

まぁあの時は大分からかわれた気もしたけど 
でも、落ち着いて考えたら最終的には感謝の気持ちが勝った 

「別に良いよ。それよりあの後のステイリーの様子見せたかったよ」 

「…はぁ…」 

そう言われても正直私としては知りたくないかも 
…恥ずかし過ぎる……! 


「じゃあ次はボクからの用事 
ゴメンね」 

彼は急に私に謝る。しかしその割にはいい笑顔 
何だか嫌な予感がする 

「キスの話、嘘だから 
ここじゃ普通でもなんでもないよ」 

………………………え? 

「ゴメンね」 

【楽しかったよ】と顔に書いてある 

…………一気に顔から火が出た 
…つまり私は…ステイリーさんに………… 

「り…り…り……璃王さん……!!!」 

さすがに睨みつけても彼は反省してなさそうな態度 

「だから謝ってるじゃん。からかってみたくなったんだ、ゴメン」 

再三の謝罪 
しかし心底謝ってる気がしない…… 

「…あーもぅ……!!…………本当に次ステイリーさんとどう顔を合わせたら良いんですか!!? 
 恥ずかしい……!」 

半ば八つ当たり気味に当たり俯く 
彼は実に楽しそうに笑うばかり 

「大丈夫だって。両思いなんでしょ?きっと喜んでるよ」 

「……それはなさそうな気がします……もー…!」 

両思いという言葉に真っ赤になった 
けど彼は幸せになれないと自分を責める人 
だから手放しで喜んでくれるとは思えない 
というか璃王さんはこういう人だ。一々怒っても仕方ない…。ちょっと拗ねた感情はおいておく事にした 


私は気持ちを仕切り直して私の用事をちゃんと伝える事にした 
勇気を出す時のおまじない。お守りを一度触る 

「…えとですね、私…あの時璃王さんとお話出来なかったら…逃げてたと思うんです 
私は弱虫で、臆病で、自分が傷付くのが怖い卑怯者ですから…」 

空気を読んでくれたのか、彼は黙って促してくれる 
…こういう所、きちんと話を聞いてくれる所がこの人の良い所だなぁ 

「好きな人なのに、誰より大切なのに…。与えて貰ってばかりのくせに…逃げるなんて最低の選択肢でした…」 

例え、お父さんの事が重なったとしてもそんなの言い訳だ 

「弱い私の逃げ道を塞いでくれて、本当に、本当に有り難うございました…! 
私、決めました!傍に居る事で傷つけてでも…隣に傍に居るって…。あの人の悲しい位の優しさ含めて…大好きだから…離れる事で傷つけたくないです…!」 

改めて口にすると意思がより強く固まる 

「ただ…もしも、万が一…私のせいで本気で潰しそうになってたら…言って下さい…。どうするかは…その時にしか分かりませんけど…押し潰すのは本望ではないので…」 

気持ちは時に重くなる 
出来るならステイリーさんにとって私の気持ちはそうならない様にこれから頑張らなくちゃ 

「…うん。分かった」 

たったそれだけ 
でも、その言葉にはステイリーさんへの気持ちがきっと詰まってる 
何せ大好き仲間なんだ!だからそうだと思う 

「…有り難うございました…!璃王さんにも何かあったら必ず力になりますから!」 

「…有り難う。頼りにしてるよ」 

「…はいっ!」 

一呼吸分の沈黙。話が終わったのを悟ったのか彼が立ち上がる 

「さて、じゃあボクは行くけど君はどうするの?」 

「私これからバイトです」 

「そう。頑張ってね」 

「はい。有り難うございます」 

ここでふと閃いた 
彼の服の袖口を握る 

「あのですね…!」 

何?と顔が言ってる 
私だってやられっぱなしじゃない 

「これは私の国の敬愛行動です」 

手を取り、甲に軽くキスをした 
ちょっとした仕返しもこめて 

「璃王さんは私の恩人です…。 
本当に有り難うございました」 

心の奥の抱えていた罪悪感を軽くしてくれたのは間違いなくこの人だ 
感謝の気持ちが少しでも伝わりますように 

…やっぱり恥ずかしくなってすぐ手を離す 

「で、では…!また…!!これからもよろしくお願いいたします…!!!」 

「ねぇ…今の」 

珍しくちょっと戸惑う彼にしてやれた気分になった 

「…半分嘘です。仕返しです」 

敬意を誓う行動としてあるけど一般的ではない 

「やられっぱなしじゃないですから、私だって」 

それだけ言って言い逃げした 

生意気だっただろうか?不快に思っただろうか? 
ちょっと不安になって頭をふる 
相手はちょっと意地悪でからかうのが好きな人なんだ。黙って負けてばかりじゃ友人とは言えない 

「…うん、大丈夫…!」 

少しずつでいい。強くなろう 
璃王さんと友人としてあれるように、ステイリーさんの傍にいれるように 


「…………でもどうやって次顔合わせたら良いの……?璃王さんのばかーー!!!」 

急には変われない私は会いに行く勇気は出ないまま 
新たな問題に頭を抱えるのであった 



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おまけ 
お父さんへの手紙 

『拝啓 お元気ですか?私は元気です 

色々報告したいことが沢山あります。本当は帰って目の前でお話したかったのですが、今はまだ、目標も達成してないですし何より友人と一緒にいたいと思っていますので手紙で伝えます 

お父さんは今、寂しくないですか?学ぶ為とはいえ離れたことで寂しがってないか心配です 
離れて初めてお父さんがお母さんに対して抱いた気持ちを理解した気がします 
私はお父さんの娘だから、もしも同じことが私に起きたらきっと同じように自分を責めるんじゃないかって感じました 
私が傍に居ることで悲しい思いをさせたかもしれないです。自責の気持ちを強くしてしまったかもしれないです 
ごめんなさい 

でもね、友達が教えてくれたんです 
それでも離れることに比べたらずっと、ずっと救いになるんだって 

私ね素敵な友人達が出来たんです 
勇気をくれた友達、傍にいるのは間違ってないと教えてくれた友人、そして こんな不器用で失敗ばかりの私の傍にいて星を与えてくれた大切な友人 

少しずつ手紙に書いていこうと思います 
只、今回はお父さんに手紙を書きたかっただけなのでこれで失礼します 

それでは、体には気をつけて  
                             ルリア 』

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