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どうしたものだか悪ふざけが過ぎたと言う訳ではなく、あの二人はぎこちなさがとれなまま数日が過ぎた。二人の問題だからこれ以上出来ることもなさそうだけど気にはかかる 
そう思っていたらエリザとばったり会った 

「あ、璃王君。こんにちは」 

「こんにちは、エリザ」 

「…ねぇ、最近どう?ステイリー君」 

そういえば彼女はルリアの友達だった。やはり気にはかかるみたいだ 

「普段はいつも通りだよ」 

ルリアに関してだけ、変わってしまった 

「普段は…か。そっちもやっぱり何かひっかかってるのね。ドロシーとサラジュ君もなんか微妙だし…」 

あの二人まで何かあったのか 

「やっぱり簡易の製法では、セレナブレスリリーベルの香水の効果もいまいちだったのかしらね…」 

その花は確か自分の本心を夢として投影し、本人に気づかせる…あ、そうか。そうすればいいんだ 

「そうだ、あの二人夢に入れちゃって話しあわせちゃおうかな。夢なら本音が出やすいし」 

ボクが思うにあの二人は力が入りすぎなんだ。元通りになろうとしすぎてから回ってる。なら自然に話す切欠を与えればいい 
ほんの思い付きだったけどエリザが食いついてきた 

「あ、それいいんじゃない!?ならドロシー達も…頼めない…?」 

サラジュ・カーマの為…。ちょっと渋い顔が出た 
けどエリザは真剣だ。友達の為、その気持ちはわかる 

「分かった、ならエリザも協力しなよ?」 

「それはもちろん!」 

「決まりだね。舞台はどうしようか?」 

どうせやるなら徹底的にとも思う 

「あ、なら不思議の国のアリスはどう?皆も知ってて分かりやすし。丁度今ルリアちゃんから絵が綺麗なオススメ本借りてるの!」 

成る程、メルヘン世界か悪くないかもしれない 

「じゃあ役割決めないとね」 

ボク達はとりあえず図書館に行く事にした 



図書館にて   

「やっぱりルリアちゃんはアリスよね。こういうエプロンドレスで」 

これしかないとばかりにエリザが言う。なるほど、天然娘にははまり役だ。 

「良いんじゃない?」 

「ドロシーはハートの女王よね、やっぱり」 

「それもはまり過ぎ」 

クスリと笑って采配の妙に納得する。 

「ああ、じゃあサラジュ・カーマがキング?――ちょっとベタすぎるか」 

「まんま過ぎよねー。あ、この帽子屋とかどう?」 

王子様が帽子屋とは、キングからの格下げぶりにまたも笑ってしまった。 
エリザはなかなか良い配役をしてくれる。 

「了解。ならエリザは芋虫でどう?」 

悪乗り気味に提案をしてみる。 

「何で私が芋虫なのよ! 
…お嬢さん、お悩みは何かな?って?」 

予想外にノリノリだ。 

「―――決定だね。次行こう」 

「えー…。じゃあ璃王君はチェシャ猫でどう?」 

「チェシャ、って確か――、ああ惑わす役か。良いよ」 

任せて、とばかりに頷く。 
エリザの配役はやはり的確だ 

「えっとステイリー君は…」 

「白兎だね。残り役割的にも(笑顔)」 

即答した。 
別に先だっての一件で笑われたことを根に持っている訳じゃない。 

「そうね。それにしても何か楽しそうね」 

「楽しいよ、協力感謝するよ。じゃあ準備もあるし明日夜決行で」 

話はまとまったとばかりに、ドアに向かって歩き出す。 
悪企みには全力で力を貸す、けど、今は少しだけ時間が欲しい。 
(特別キャストを一人、招待しよう) 
頭に配役を思い浮かべる。やはり彼女にもあれしかない 
ドアに向かう途中、背中に声がかけられた。 

「有り難うね、なんと言うか…」 

「…いいよ。お互い【友人】の為だから、ね」 

振り返りそう答えると、先に図書館を出た。 
歩きながら夢の構想を練る。 
キャストは決まった。 
後は、ボクの魔法の出番。 
明日の夜は腕によりをかけて夢の舞台を演出してあげよう。 
エリザの、ボクの、友人の為の楽しい楽しい夢が幕を開ける。 

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