top of page

恋をした 
初めて好きになった人は優しくて、真面目で、友達思いな人 

彼の全部を好きになった 
例え恋人という成就を結ばなくても、傍に居たい。相手を一人にしたくない。支えたい。星を与えたい 
その気持ちを一番大切にするべきだと友人に教わった 

だからこそ諦めない。この恋は手放さない 
私が勝手にあの人の傍であの人を一人にしないと決めたんだから 


「いい天気でよかったすね」 

広々とした場所に広げた敷物 
その上にはバスケット 
典型的なピクニック…みたいな物だ 

「今日は採取に付き合って頂き有難うございました」 

授業で必要な薬草を採る為にちょっと遠出が必要で 
折角だから誘ったわけである 
用事も終わり、私にとっての本番が始まる 

今回は見せたい物も用意してあったりする 

「いいえ。一人で遠出も心配ですし」 

学内は安全なのに優しいなぁ…。やっぱり好きだな。うん 

「…で…では、どうぞ…!!」 

意を決してバスケットを差し出す 

昨日から、ううん。その前から必死に材料を吟味して練習してそして作ったお弁当 
アゲハ先生も先ずは胃袋から掴むのは基本って言ってたし…! 
彼が蓋を開けるのを緊張して見守る 

「…これは……凄いですね。ひょっとして…全部手作りなんですか?」 

手応えあり!内心でガッツポーズを作る 

「まぁ…。料理…い、今練習していて……その……はい……」 

嘘じゃない 
ステイリーさんに食べて欲しくて、喜んで欲しくて上達する為の練習を始めてる 

「………有難うございます。…えと、頂きますね」 

少し顔を赤くして照れくさそうに手をのばす 
………無性にくすぐったい 
緊張しながら反応を待つ 

「…美味しい…。本当美味しいです。ルリアさんも食べたらどうです?」 

…喜んで貰えた…! 
嬉しくて嬉しくて思わず笑みがこぼれる 

「…はいっ…!!」 

自分も一口。我ながらなかなかの出来栄え 
でもステイリーさんと食べてるって事が一番効いてるのかも 

「美味しいです」 

「そうですね」 

一見和やかな私達 
ただちょっと、たまに意識し過ぎて一時停止する 
でも前みたいなぎこちなさは卒業した 

…よく考えなくても両思い……両思い……。気を抜くとにやけそうになる…… 
頬を手で叩いてなんとか留まる 

「作りすぎましたし残していいですから」 

気合いを入れすぎて明らかに量の多い食事 
うん。やり過ぎた 

「出来るだけ頑張りますよ」 

穏やかで、優しい愛しい人 
………ルスさんから聞く昔話とは印象違うよなぁ 

そういうのを経たからこそ今があるのかな?多分 



「ご馳走様でした…」 

「…無理しなくてよかったですのに…」 

目の前には空のバスケット 

「いえ、おいしかったですし…折角作ってくれたのですから」 

「…あ…有難う…ございます…」 

あ、ダメだ顔が熱くなる 
二人して釣られるように赤面して、一瞬目が合うけどすぐ反らす 

「あ…あの…今…特訓中なので…出来ればまた味見役…頼んで良いですか……?」 

「え…。は、はい。僕で宜しければ…」 

……嬉しい…心臓がうるさい… 
ダメだ、いたたまれない…!! 

「え…えと…あ、有り難うございます………その……ほら!花綺麗ですね」 

必死でごまかすように花を摘む 

「そ、そうですね」 

うぅ、ダメだ!嫌な感じじゃないけどぎこちない…!! 
ぷちぷちぷちぷち花を摘む 
あ…思わず沢山摘んでしまった…… 
あ、そうだ 

「ルリアさん?」 

「ちょっと見ないで下さい」 

背を向けて見せないように花を編む 
案外忘れてないみたい。綺麗な花冠が完成した 

魔法を使う時使ってる媒介を手にして、ちょっと頑張るから魔力増幅の薬を飲み込む 
これで準備は出来た 

「ステイリーさんっ」 

花冠を見せて立ち上がり、彼の頭に乗せる 

「私から贈り物です」 

その言葉を鍵にして、魔法を発動させた 

キラキラ光る星を頭の上から降らせる 

「…これは…」 

「幻ですけどね」 

私は彼みたく星は作れない 
けど姿だけでもと練習してみた 

「星をくれた貴方に、私からの星です」 

幻は手にも掴めずすぐ消えてしまう 
魔力の限界も早い私は長い時間見せる事すらも出来ない 
それでも精一杯の気持ちを込める 

『傍にいます』 
『大好きです』 

せめて、この気持ちが彼にとって優しい物になりますように 
祈りをこめて光を紡いだ 

魔力が限界で座り込む 
反応を伺うとステイリーさんは星を手にとる仕種をした 

「…人から貰うって…こういう気持ちだったんですね」 

私が感じたのと同じように少しでも感じてくれたら嬉しい 

「…手には取れないけれど、不思議と温かさを感じる気がします」 

と笑ってくれた 

「…あの…一緒に魔法使ってみませんか?」 

「…協力魔法ですか?」 

「はいっ。私はまだ力になれる程じゃないですが景色を映すのは不涸花杯で特訓しましたし」 

「…何がやりたいのです?」 

「私が景色でステイリーさんが星 
それであの人に見せてみたいのです」 

誰に、は言わなくてもきっと伝わる 

「…そうですか…。そうですね 
…はい。やってみましょうか」 

「…はいっ…!!魔法練習頑張ります!先生!!」 


「先生なんですか?」 

「聞いたら教えてくれるでしょう?」 

「まぁ、それは確かに 
じゃあ厳しくしますよ?」 

少し、意地悪そうに楽しそうにする 
こういう新しい表情を少しずつ発見出来るのは嬉しい 

「はいっ!お願いします!」 

こういう風に少しずつ、距離を作り直したい 
笑って、傍にいて 

傍を選んでよかったって、いつか必ず言えるようにする 

「では、今日は疲れてそうですし…明日からですかね?」 

「…はいっ!」 

明日もまた会える約束 
小さな事でも嬉しい 


そして彼は立ち上って私に手を差し出した 

「帰りましょうか」 

「…はいっ!」 

私はその手を掴んで立った 


私達は隣同士で同じ速度で歩いて帰って行った 

bottom of page