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これで何度目かになる髪飾りの星魔法のかけ直し 
当初もっと保つと言ったけど実際それより感覚が短い。熟練度、技術そういった要因もあるのは否定しない。否定しないけど… 
一番の理由は集中しきれないからに他ならないと思う… 

「ど、どうぞ…!」 

そう言って何度目かになるある時のかけ直し彼女はまた、目を閉じてこっちを向く… 
まるで【どうぞキスして下さい】みたいな状態で… 

「あの・・・お願いですから、眼を開けてください・・・」 

「え…でも…目を見てる方が……その…恥ずかしいと言いましょうか…」 

あ、恥ずかしいと言う感情はあったのか 
なんて失礼なことを考える。いや、考えざるを得ない気もする 

「眼は見なくていいですから・・・!どこか、別のところを見ていてくれませんか・・・」 

「え…他って…言われましても……。目を閉じるの何かまずいのですか…?」 

彼女は目線の先を戸惑いながら探し、相変わらず分かってない発言をする 

「まずいです、非常にまずいです。・・・わかりました、眼は閉じてていいですから下を向いていてください・・・」 

「そしたら何か…変じゃありません…?というか…何でダメなのですか?」 

…いい加減頼むから分かって下さい 

「必要なのは髪飾りだけなのですから別にルリアさんがこちらを向かなくても良いのです・・・!本当にあなたは何もわかってないというか・・・・・・いいです、僕も目を閉じて集中します」 

「え?あ…すみません…!!」 

宣言通り目を閉じて髪飾りをしっかり手にして集中して魔法を使う事にした 
一つ一つ星飾りに触れつつやっぱり眼を閉じてこちらを向くルリアさんがその度に視界に入る 
…気にしない気にしない… 

やっぱり気になる… 

「・・・全部かけ終わりました。今後のあなたの為に言っておきますが、異性が近くにいる状況で眼を閉じて顔を向けるのは止めたほうがいいと思います 
。好きでもない相手なら尚更です。変な勘違いをされかねませんよ・・・。あと、あまり僕を信頼されすぎても困ります・・・」 

「?私ステイリーさんのこと好きですよ・・・?勘違いも何もないと思いますが・・・?それに・・・ステイリーさんは私に酷いことしないって・・・思います」 

と言って真っ赤になる彼女 
…何と言うか勘弁して下さい…本当に 

「酷いことをするつもりはありませんが・・・少し買いかぶりすぎです。貴女はもう少し危機感と・・・男というものを勉強したほうがいいと思います」 

少し疲れた。ため息交じりに無駄と分かってるもう何度目かの忠告をしておくことにした 

「危機感と男性を・・・・・あ、ではステイリーさんが教えてください!」 

何と言う曇りなき信頼で輝く目なのだろうか。もう頭を抱えるしかない… 

「貴女は自分で何を言ってるかわかってますか・・・?」 

「…?何かおかしかったですか…?す、すみません…。私…でも他に誰に頼って良いのか分からないですし…。教えてもらうならステイリーさんが良いと思って…」 

「他の友だちにでも聴いてみては・・・って済みません…」 

「あ、い、いえ…」 

うっかりした。彼女は他に友達がいないんだった 
しかしそういう時に限って余計な事は起こる 

「…呼んだ? 何ならボクが教えてあげようか」 

と、笑顔で璃王が現れた。いかにも【楽しそうだね】と顔にかいてある表情で 

「え…!?あ…えと…宜しいのでしょうか…?」 

「うん、ステイリーがどうしても教えたくないみたいだから、ボクの出番かなと思って、ね?」 

あぁ、どうしてこうややこしくなるのだか… 
ルリアさんは基本的に人を信頼し過ぎる。そういう人に璃王は危険だ。要らぬ事を吹きこまれ多分それを疑わない 
そして絶対被害をこうむるのは僕なんだ。間違いなく 

「全然呼んでない。呼んでないから、帰れ。」 

「え…?あの…喧嘩は良くないですよ…?そ、その…ステイリーさんが嫌なら私璃王さんに聞きますよ…?」 

「喧嘩はしてません。帰るよう促しているだけです。いいですかルリアさん、璃王が含み笑いをしてる時は何を言っても鵜呑みにしてはいけません。ただでさえ貴女は疑うということを知らないのですからそれくらいは覚えてください」 

そもそも含み笑い自体気付かない可能性しかないわけなのだが 

「え、折角ご提案頂いているのに…?…含み笑い…?え?えと…えと…済みません。よくわからないです。けど…璃王さんは別に悪い方ではないのですし…」 

「…うん、御馳走様」 

璃王の言葉は無視することにした 

「本当に貴女は・・・。今までルリアさんの周りにはいい方しかいなかったのでしょうが・・・将来が心配です」 

「ご馳走様…?はい…?え、えと……周り…?……あ、そうかもしれません。環境に恵まれるって有り難い事ですよねもちろんステイリーさんも璃王さんも良い人だって思ってますよ?」 

だから璃王を信じないで下さい。本当に 
というか駄目だ、この娘はどう言ったら伝わるんだ・・・! 

「あ…あの…ステイリーさん…?お疲れですか?」 

と気遣われながら額に手を当てられる 

「熱はないみたいですね…」 

「だから・・・貴女にとってそれは医療行為で当然のことなのでしょうが、異性にはあまりやらない方がルリアさんの身のためですよ・・・?」 

「患者さんにそんな区別出来ませんよ……それで、結局男の人についてはステイリーさんが教えてくれるのですか?」 

「・・・とりあえず勘違いさせるような行動は慎むべきです。眼を閉じるのも然り、むやみに人を心配して顔を近づけるのも然り。・・・・・・そのうち誰かにキスぐらいされても何もいえませんよ?」 

もう疲れたからやけくそに言い放った多分今回も伝わらない確信はあったけど 

「……え…………ステイリーさんは…私にキスしたくなるのですか……?」 

彼女は真っ赤になりながらよりによってそこを拾い上げた。思わず自分まで真っ赤になる 

「えっ・・・・・・いや、質問するところはそこじゃないでしょう・・・!そういうわけなので今後はもう少し気をつけてください・・・!」 

「え…!?は、はい…?目を閉じない、近付き過ぎないですね?……でも私……ステイリーさんにしか目を閉じるのしてないですし…問題ないのでは…?」 

信用しすぎですよ・・・と内心で愚痴る 
僕だって男なのに全く… 

「わかりました、眼を閉じるのはもう何もいいません。近づきすぎるのだけはこれから気をつけてくださいね・・・?」 

「は、はい…!出来るだけ…気をつけます…」 

多分大した改善はされないだろうな、とどこかで諦めている自分がいる。けど少しは通じたと思いたい 

「お願いします。・・・講義があるのでそろそろ失礼しますね」 

「は、はい…!行ってらっしゃいませ…!頑張って下さい…!」 

彼女の言葉に手を振るとことで応え、若干疲れたままニヤニヤしている璃王を引きずって先を急ぐ事にしたのだった 
振り向かなかったから気付かなかった 


彼女が恋をしているかのような真っ赤な顔をして僕を見送っていた事に 


fin 

 

 

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