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サヨナラをした後 
ただ泣いて泣いて、動けなくて 
気付いたら床で寝てて先生に心配された 

それから数日私は床に寝てたせいで熱を出した 
リース先生がよく見に来てくれては楽にしてくれてたのは覚えてる 
それ以外は意識がもうろうとしていてあまり覚えていない 

心が悲しかったのもやはり重なって、熱はかなり悪かったらしい 
いっそ、そのまま消えてしまえれたら楽だったのかな?とかバカなことを考えた 


兎に角元気になって一番に私は璃王さんに会いに行った 
寝てる間もステイリーさんの事が気になって仕方なくて、今頃自分を責めているんじゃないかって予感しかしなくて 
あの時あった事が現実と認めたくなかったのか、様子を他の人から聞きたかったのもある 

璃王さんから聞いた話だと、ステイリーさんはここ暫くやっぱり私を凄く心配していたらしい 
思い詰めた様子もあったらしく会う事を勧められた。けど、私はもう会えない 
だから首を振って事情も話せず、ただステイリーさんの傍に居て欲しいと頼んだ 

物言いたげにしてたけど彼はそれ以上突っ込まずただ、分かったって言ってくれた 
それが心強かった 


学校復帰をしてから暫くは淡々と日々を過ごした 
上手く実感がわかなかったのかもしれない 
空いた時間が出来ると余計な事を考えそうで講義を増やした 

ただ勉強して、バイトに入って 
寝る前余計な事を考えずにすむように魔法訓練も沢山した 

集中したおかげかどちらの成績も少し、上昇した 
それなのにあまり喜べなかった 

友達から少しやつれたのも心配された 
あれ以来食欲がろくになくてあまり食べてないのが原因なのは分かってた 
栄養剤を飲んでごまかしてはいたけど顔にはやはり出てしまう 

心配してくれた友達にも何一つ話せずただ勉強に集中してると誤魔化し続けた 


そんなある日 
暫く体調が悪くて話せなかったルスさんと久々に話が出来た時だった 
彼は私が痩せた事を心配してたけど、ダイエットと暑くなってきたから食欲ないとやんわり返しておいた 
それを聞いて彼は少し考えた後、口を開く 

「最近ステイリーとどう?」 

…相手はやっぱり勘が鋭い。私が落ちこんでいるのを感づいているのかもしれない 
そして私は相手に出来るだけ嘘をつきたくない。それに誤魔化すのも長くは出来ない。避けれない話題として今の自分は仕事中。相手は入院患者さん。それをひたすら頭において言葉を紡ぐ 

「…振られちゃったんです。だから最近会ってなくて…。だから御免なさい…」 

相手を出来るだけ動揺させないよう精いっぱいの気を使ってにこやかに答えた 
でもそれが逆に相手を驚かせてしまったらしい 

「は…?え…それどういう…」 

それだけ言って彼は一回言葉を区切って何かを察したかのように私をしっかり見た 

「ステイリーのこと嫌いになった…?」 

考えた挙句そういう結論に行きついたらしい 
私はゆっくり首を振る 

「好きですよ?今でも…誰より… 
…恋愛ってでも思う通りに行く訳でないですし…。済みません、折角気を使って頂いていたのに…私じゃ駄目でした…」 

彼には割と最初の方から勘付かれていたのでやたらステイリーさんの事を教えて貰ったし頑張れ!と応援されたのも一度や二度じゃない。好きな自覚をちゃんと話して以来むしろ自分の知らない時間のステイリーさんが知りたくて二人で話せる時は色々教えて貰ったりもしてた 

それなのに、私は相手の応援や信頼に応えれなかった 
私があの優しい人を追い詰めた… 

それが申し訳なくなって、でも極端に顔に出す訳にいかず少し困ったように笑うしかなかった 

「…そんなことはないと思う。ただあいつはくそ真面目すぎるから…。ゴメンね」 

彼はもしかしたら分かっているのかもしれない 
ステイリーさんの苦しむ気持ちを… 
私は相手の手を優しく握る 

「いいえ、ルスさんは悪くないです。謝る必要ありません…。勿論…ステイリーさんも…。私、あの人の真面目な所好きですから…大丈夫ですよ。心配しないで下さい…って難しいでしょうが…。私は、大丈夫ですから」 

今は仕事中だ。どれだけ心の底で言葉に出す事すらも辛いと叫んでも、それを表に出してはいけない 
精一杯の強がりで相手に笑顔を向ける 

「……そっか。ルリアちゃんは強いな」 

そんな事はない。まだ弱いままだ 
でもその言葉を受け取っておく 

「…そう見えるなら…有難うございます。さて、検診やりましょうか」 

泣かなかった辺り自分を褒めて良いのかもしれない 
仕事中のスイッチがなかったら無理だったとは思うけど。それでも、何とか泣かずに乗り切れた 

それでも、それはやっぱり仕事中だからという限定で、終わって病院から出た途端、涙があふれて止まらなくなってしまった 
口に出す事で、実感が増してしまったのが辛い

ほら、やっぱり自分は弱いままだ… 
そんな自分が情けない 



暫くしたある日、習慣でつけ続けていた星飾りの光が弱くなってきた気がした 

本当に無意識だった 
無意識にお弁当を渡す為、いつも待ち合わせに使っていた場所に気付いたらいた 

『おはようございます、ルリアさん』 

そう言っていつも笑顔で迎えてくれていた彼 
当然だけどそこに居ないのに声が聞こえた気がして手を思わず伸ばした 

当たり前だけど誰もいないベンチに手が触れただけだった 
そこは当然のように暖かくなんかなくて、なぞってもあの日のぬくもりなんて残ってない 

「…っ……!!」 

思わず走り出した 

私達が友達になった場所 
後夜祭で一緒に踊ったテラス 

『1曲、お相手願えますか?』 

そう言われて差し出された手 
特別な絆が嬉しかった。友達になれて本当に嬉しかった 
…私は今にして思えばその時にはもうとっくに… 

あの時繋いだ手は今は空っぽ 


次にはラウンジの周辺に居た 
私は…あの時勢いで告白して…それで… 
ひたすら後悔した 

相手が優しいからつけ上がったって自分を恥じた 
…何て成長がないんだろう…。私は相手が好意を伝えてくれたのを良い事に…相手の望まない領域に踏み込んでしまったのだから… 
あの時の私もそうだった。相手が優しいのを良い事に、私はただ気持ちをぶつけて…そして失恋した… 

今度は会う事すら…もう出来ない… 


その気になれば思い出の場所なんてどこにでもあった 
話して、傍で重ねた時間が何より尊い自分の宝物で… 
例え切ない記憶が一緒でも、その中にあの人がいるならそれがとても大切で… 

出会って、一緒に踊って、告白して、ハロウィン、クリスマス、お花見…色々な事を経験した 

最後に着いたのはやっぱり一番思い出の多い書庫の部屋だった 
勇気を出してあの日以来避けていたこの場所に入る 

『こんにちは、ルリアさん。貴方も来たのですか』 

いつも会うとそう言ってお辞儀をしてくれた 
ゆっくり入って自然にしまったドアの音に体が大きく反応した 

『もう、終わりにしましょう』 

…そうだ、終わったんだ 

『さようなら、ルリアさん…』 

私よりずっとずっと、貴方の方が傷ついてそうで怖い 

夢じゃなかった 
だってここには居ない。 
例え会えてももう…… 

「……っく……ふ……っ……」 

あの日以来意図して考えないようしていた 
寂しいと感じないよう頑張って来た何かがついにふつりと切れた 

思わず星を抱きしめる 
それなのに、その星すら光が消えていく 

「待って…待っ……いや…だめ……!!消え…ない…で…!!」 

必死に幻術を使って魔法力を補給出来ないか試しても無駄で、光がぼやけていく 

『僕も、ルリアさんが好きです』 

そう言われたのもこの場所 

『僕は…もう…貴方と…一緒にいれません…』 

そう言われたのも…やっぱりこの場所 


そして今、この支えだった光が消えるのも…この場所… 


「いや……」 

どれだけ必死になっても消えるのを留める事が出来なくて 
自分と相手を繋いでいる証だった星が消えてしまった… 

『その時は、またあげますよ。その次も、次も』 

そう約束してくれたのに 
もうその約束も果たされる事はない 

私に…もう星が手に入る事はない… 

遠い星 
手には掴めない 

近かったその星すら私は…なくしてしまった… 

ただ泣いた 
もう繋がりがないと実感するのに十分すぎた 

寂しい 寂しい 寂しい 
胸がただ抉れるように痛い 

心に大きな穴がぽっかり空いてしまった 

そしてそれは二度と埋まらない…。自分のせいで埋めれない 

ステイリーさんを自分が追い詰めたから 
好きになっても困らせるだけなのに好きで居続けたから 

自分の愚かさに気分が悪くなる 
失くしてしまったのは全部、全部自分のせいだ 

そしてきっと、相手も傷ついている 
それも苦しくて仕方ない 
苦しむのは自分だけで良いのに。泣くのは自分だけで良い 

でも自分は無力で 
一人で泣くしか出来ず気付いたら夢の世界に居た 


夢を見た 
ふわっと優しく抱きあげられて移動させられる 

(…そういえばよく徹夜でここに居た時…うっかり寝ちゃった時は…こうしてステイリーさんに運ばれてた…) 

あの時と同じ感覚だ 
温かさに安堵する。懐かしい温もりに全身を預けたくなる 

ずっと、この夢を見れたら良いのに 
そうしたら夢で一緒にいれる 

「…御免なさい…ルリアさん…」 

もう懐かしい気すらする愛しい人の声 
優しく前髪を撫でなれる感覚 

これは夢?離れたんだから夢でないとおかしい 
愛しさで涙が無意識にあふれる 
優しくそれを指で拭われた 

「…すて…り…さ…」 

何とか声を絞り出した 
少しして唇に何かが触れる感覚が一瞬だけしたけどすぐ離れた 

優しく頭を撫でられ私は都合のいい夢に身を任せてそのまま深く、眠りに落ちた 


次に目覚めたらソファーの上だった 
…無意識に歩いてきて寝転がったのだろうか…? 
ふとブランケットがかけられているのに気付く 

「…ステイリーさん…?」 

まさか、だけどあれは夢でなかったのだろうか…? 
慌てて周りを見回してもそれ以上に誰かがいた形跡は見つからなかった 

それでも、夢現の時感じたあの腕の感覚は…涙をぬぐってくれた指は…多分… 

「…ばか…っ…」 

思わずブランケットを握りしめた 
そんな行動一つでやっぱり好きになってしまう自分が救えない 
好きだから相手を追い詰めたくせに何様なんだろうか…自分は… 

「…だいすき…」 

自分の気持ちをそれでも口に出してみたらますます強くなるばかり 
どうして自分はこんなに我儘になってしまったのだろうか… 

髪を見てみたけどそこに魔法は掛かってなかった 
そこまでは流石にもう…してくれない…。当たり前だ 
彼は優しいから、放っとけなかったから自分をソファーに運んだだけで、きっと誰にでもそうする 
そう自分に言い聞かせる 

髪から星飾りを外した 

もう光らないそれを見るのすら辛かった 
でも捨てる事も手放す事も出来ずそのままハンカチにくるんでポケットに入れた 
鏡と一緒にお守りになりそうだ… 

結局現実は変わらない 
どれだけ寂しくても、哀しくても私はこれからあの人がいない日常を過ごさないといけないんだ 

もう少しだけブランケットの温もりに身を預けて、離れがたく思ってもそれでもゆっくり立ち上がる 


今度は自分の足で、ゆっくりドアを一人で出て行った 



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