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二度目の後夜祭でお付き合いすることになって早数日 
私には恋人になってどうしても復活させたい習慣があった 

お弁当を作りたい。そしてそれを食べて欲しい 
前は料理の練習と言い張り食べて貰っていた。けどもう恋人なんだから素直に手料理を振る舞いたい 
無理しなくていいとはやんわり言われたけどそこはどうしても譲れなくて頑張って押した 

そして復活第一日目。お弁当を渡した時折角なのでステイリーさんに一緒に食べれないか聞いてみたら快諾をして貰えた…! 私は自分のお弁当片手に約束の場所に急いで行く。恋人になってから気持ちがすごくふわふわしてる。体も軽く感じるし世界が明るく見える。単純すぎるけどやっぱり幸せという事なんだろう 

相手はもう待ち合わせ場所にいた 
「ス、ステイリーさん…!お待たせしました…!」 
ててて、と急ぎ足で彼の元に笑顔で走り寄る 
「いいえ、僕も今来たところですから。どこで食べましょうか」 
「え、えとえと…ふ、二人になれる場所ならどこでも…」 
あ、なんかすごく恋人っぽい…!照れつつもこんな些細な言葉一つに自分でにへっとしてしまう 
「そうですね、あんまり人目につく場所は……裏庭にでも行きましょうか」 
「は、はい…!行きましょう…!」 
自然に隣り合って歩く。こうやって…また一緒にいれる。それは本当に奇跡だ。隣にいてくれて、話せることだけに泣きそうになるのを誤魔化しつつ雑談しながら裏庭に向かうのだった 


ベンチに腰掛けお弁当を広げ水筒からお茶を注ぐ。そしてまずはおしぼりを手渡した 
「今日はいい天気ですね…」 
自分の分のおしぼりで手を拭いつつ空を見上げる。涼しい風が気持ちいい 
「そうですね。寒くはないですか?」 
相手も手を拭いつつ私を伺う 
「だ、大丈夫です…!お日様暖かいですし…その…一緒にいるだけで…ぽかぽかするんです…」 
「……そうですか」 
照れたように笑ってくれる。それだけで自分の顔は真っ赤だ。 

緊張の一瞬。ステイリーさんがお弁当のふたを開けた 
一段目は海老と枝豆の塩炒めと、新じゃがとベビーリーフの彩りサラダ 
卵焼きには細かく刻んんだシイタケを入れて、ウインナーはしし唐と一緒にソテーに 
二段目はピリ辛ご飯を豚肉で包んで照り焼きにした肉巻きおにぎり 
く、崩れてないかな?うん、大丈夫。今日は気合い入れてみたけどどうかな?と緊張しつつ反応を待つ 
「今日のお弁当も美味しそうですね」 
「そ、そうですか…!?よ、よかったです…。え、えと…では…い、頂きます…!」 
「頂きます」 
見た目をクリアしても肝心の味はこれからだ。箸を無意識に握りしめ様子を見る 
「…美味しいです、とても」 
「は、はい…!良かったです…!お、お勧めは卵焼きです…!」 
なにせ焦げやすくなると分かってても出汁を入れてなおかつ中に入れたシイタケにもちゃんと手を加えた逸品なんだから。…そう言えば恋人同士って…恋愛物語だとはい、あーんしたりしてるな… 
ちょ、ちょっとやってみようかな?図々しくないよ…ね…?ど、どのタイミングでやればいいのかな!? 
「ちょうどいい味付けで美味しいです」 
「あ…。…そ、そうですか、よかったです…」 
考えすぎてタイミングを逃した…。勝手にちょっとしょげつつ自分でも食べる。うん、美味く出来た 
「あ、そうだルリアさん。今度の日曜、お暇だったりしませんか?」 
「日曜日…ですか?ちょっと待ってください…えと予定は…大丈夫です…!クローシアさんがショーでもやるのですか?」 
ステイリーさんが休みの日に誘ってくれる用事って言ったら多分そういう事だよね? 
「いえ、その……ルリアさんが良ければ動物園にでも行きませんか……?」 
「動…物…園…………動物園…ですか…?」 
え、ま、まさか…これは俗にいうで、デートのお誘い…?嬉しい、という気持ちが溢れだしそうになった瞬間待て!と自分を諫める 
落ち着いて落ち着いて。デートとは限らない。むしろその可能性のがある気がする! 
「…な、何かイベントありましたっけ?それとも研究で必要とか…?」 
「いえ、純粋に……デート、として……です」 
真っ赤になったステイリーさんの顔に自分まで真っ赤になった 
ま、ま、ま、ま…まさか…本当にデートなんて……! 
「……え、あ…は、はい…っはい…!!い、行きたい…です…!で、で、でぇ…と…」 
「そうですか、良かったです……。じゃあ何時にどこで待ち合わせしましょうか……」 
「は、はい…!では…」 
そうして浮足立ちつつも、私たちは初めてのデートに行くことになったのだった 



そして当日。早起きして気合いを十分入れたお弁当を作って待ち合わせ場所でそわそわと相手を待つ 
まだかなまだかな…。待ち合わせで待つのって楽しい…。楽しみ…。嬉しいなー… 
相手を待つのがこんなに楽しい事なんて初めて知った。今までも何度か待ち合わせしたことあるし待ったことだってある。けど恋人という魔法がかかるとその楽しさや幸せが凄く倍増している 
服装…クローシアさんに選んで貰ったけどどうかな?可愛いかな?髪、はねてないよね? 
前髪をなんども弄って整える 
「すみません、お待たせしましたルリアさん」 
と、その相手が少し駆け足で来てくれた 
「良い天気になって良かったですね」 
あぁ…、ステイリーさん今日も格好いい…。じゃなくて 
「あ、い、いえ…!今来たので…!はい…!良いお天気ですね…!…い、行きましょうか?動物園!初めてです…私…!予習頑張ってしてきました…!」 
「そうでしたか。じゃあルリアさんの行きたいところ、全部周りましょうね」 
と言いつつさらっと私の手からお弁当が消えた。そしてもう一つの手が差し出される 
「では行きましょうか」 
「はぇ!?い、いえいえいえいえ!荷物は私が持ちますので…!今回は前みたくお詫びでなく単にで、で、で、デート…なのです…から… 
な、な、なので荷物はやはり自分で持たねば…!」 
「女性は荷物が多いですしこれくらい持たせて下さい。……それにこれ、お弁当を作ってきてくれたのですよね?なら僕の荷物でもありますし、ね?」 
…ステイリーさんはこういう時結構強引だ…。異論は受け付けません、というような笑顔で私の手をとって歩き出す 
「……すみません…ステイリーさん…。そ、その…荷物重いかもですが…疲れたらちゃんと私が持つので…!」 
「これくらい大丈夫ですよ。ルリアさんも疲れたらいつでも言って下さいね」 
「はい…!」 
…最初からこんなドキドキしていて…私の心臓は持つだろうか…? 
変な心配で一杯になりつつ繋がるぬくもりを頼りに前に進むのだった 


そして動物園。入場料を払おうとしたらサラッと払われてしまい、出そうとしてもお弁当作って貰ってるんですからと受け取って貰えなかった…。奢ってもらってい、いいのかな…?恋人ってそういうものなのかな…?今後お弁当で返して行こう…! 
そう決意して入口をくぐる。中には当たり前だけど動物がさっそくいた 
「わぁ…!え、えと回る順番とかどうしましょうか?わ、私はですね!ふれあいコーナーには行きたいんです!あ、あとペンギンとか見たいです…!」 
「慌てなくても大丈夫ですよ。ルリアさんが行きたいところ、全部行きましょう。ふれあいコーナーは……こっちですね」 
ステイリーさんは地図を見ながら私を誘導してくれる 
「えと、順番でいいです…!他も見たいので…!ステイリーさんはどんな動物が好きですか…?わ、私は…その…もふもふとしたのが…」 
「好きな動物ですか……うーん、動物なら基本なんでも……。でも小動物とか可愛いですよね」 
「はい…!はい!そうですよね…!小さくてもふっとしてるの可愛いですよね…!あ…!見て下さいステイリーさん!あれ!キリンです…!首長いです…!…キリンって首疲れないのでしょうかね…?」 
「どうなんでしょうね。攻撃する時は首を使うらしいですしそれだけ頑丈に出来てるのでしょうが、人間のように疲れることもあるんじゃないですかね…」 
「攻撃…!囲われてる代わりに安全と言うのは良い事なのかなかなか難題ですね…」 
なんて哲学的?なことを考え暫く眺める。…動物ってこうちゃんと見ると迫力あるなぁ… 
「次どっち行きます?…あっちに鳥類で…そう!鳥も見たいのです!大空に羽ばたく為にも…!」 
現状医学の勉強が忙しすぎてなかなか進展出来ないんだけど、それでも空を自力で飛びたいっていう願いを諦めたわけじゃない。変身魔法の練習もちゃんとひっそりやってる 
「ではあちらに行きましょうか」 
当然のように手を引かれて目的地に向かうのだった 


鳥類は当たり前だけど止まっててもすごく近くにいるわけでもなく、飛んでいたらいたで目で追うだけで精いっぱい。そんな程度の観察力しかない… 
「…速くてじっくり観察にはなりませんね…」 
「あそこにいるナナイロオバネインコは大人しいですよ。光の加減で尾羽が七色に見えるんです」 
「そうなのですか?七色って綺麗でしょうね…。えと?どれですか…?」 
ちょっと木があって角度的に指さした方角が見にくい。ふらーと無意識に動くと何も言わず手が引かれた 
「あそこの止まり木に止まっている鳥ですよ」 
「…あ、あれですか?小さくて七色まで見るのは難しそうですね…」 
「触れあいコーナーにもいるようですよ。……もう少し見ていますか?」 
「え!?鳥って逃げちゃいそうじゃないですか!?いるのですか!?」 
「大人しい鳥ですし…もし逃げても魔法で捕まえるようです」 
「な、成程です…!魔法で…優しく捕まえるますよね…?」 
「えぇ、もちろんですよ」 
よく訓練された鳥は伝達にも使えるっていうしそういう類だったりするのかな?と思いつつ私たちはそのまま期待のふれあいコーナーに向かうのだった 



「わぁ…!!もふもふした子達が一杯です…!」 
兎がいる。何羽もいる。可愛い…! 
思わず飛び出しそうになるのを必死で理性で抑える。初めてのデートだしあまりはしたなくしたくないのと触りたい欲求でそわそわしてしまう 
「触りに行かないのですか?」 
もふもふ…もふもふ…はしたないかも…もふもふ… 
「………行ってきます…!」 
欲望が勝ってしまった… 
スカートを汚さないよう気を付けて座って近くにいる兎をゆっくり触り始める 
あ、あったかい… 
「…もふもふです…。可愛いです…」 
「ここだけでも一日過ごせそうですね」 
ステイリーさんも兎の頭を撫でる。…なんか可愛い… 
「そうかもですね」 
よし、抱っこしてみよう…! 
と思ったのにこわごわと手を伸ばしたけど逃げられた。…もう一回…!と思ってもやっぱりそうっとしている内に逃げられてしまう…。ううう… 
「……恐がっていると動物にも伝わってしまいますよ。危害を加えるつもりはないとをわかってもらわないと」 
「な、成程です…!わ、私は安全ですよー…!ですよー…!!」 
今度は気合い入れすぎて逃げられた… 
「…私は…もふもふに愛されないようです…」 
物凄くしょげていたら隣の人はくすくす笑った。うぅ… 
「……ルリアさんは自然体でいるのが一番かと。ほら、笑って下さい」 
「うう~…自然体っていざとなると難しいです…」 
笑おうと思うと顔が引きつる。仕事中スイッチを押せば仕事用笑顔は出来るんだけど… 
「そういうものですかね?………失礼します」 
と言うや否や横からステイリーさんはくすぐってきた 
「え!?わひゃあああぁぁ!?!?ちょ、くすぐったいですー!」 
「ふふ、すみません、ちょっと悪ふざけが過ぎましたね。どうです?少しは力が抜けましたか?」 
な、なんか珍しい事された気がする…。ほ、本当にくすぐったい… 
「…くすぐったかったですよぅ…もう…。…力抜けたのでしょうか…!?ならばいざ…!」 
「そうやって意気込んじゃダメですって」 
改めて気合いを入れようとしたらステイリーさんは見かねたのか兎を抱っこして私の膝の上にのせた 
「わわ…!」 
逃げそうになるけどこのチャンスを逃したくなくて慌てて抱きしめる 
小さくて暖かくてふわふわだ… 
「…もふ…」 
うっかり暫く幸せ満喫タイムに入ってしまった… 

「…はっ…!す、すみません…!思わず…!う、兎可愛いですよ…?ステイリーさんももっと触ってみたらどうです?」 
なんたることだ!初デートなのに動物に夢中で相手を放置しちゃうなんて…! 
と焦ったら自分の頭をなでられた。顔が勝手に熱くなる 
「!?!?…あの…私小動物ではないですよ…?」 
う、嬉しいけどなんで自分!? 
「すみません、可愛くてつい……」 
胸がぎゅーっとなって羞恥であわあわしたら兎がその間に逃げてしまった 
か、可愛い…可愛いの…?私…。ど、どうしよう、嬉しい… 
「あ…。あ、あのあの…えと…」 
相手の行動にあてられたのか、自分もステイリーさんの肩にぽすっと頭を乗せて小声で呟く 
「…恥ずかしいけど…嬉しいです…」 
「…………ふれあいコーナーだというのに何をしてるんでしょうね、僕たちは」 
2人して真っ赤になりつつ寄り添ってる… 
本当に何してるんだろう…?さ、流石に離れよう… 
「…に、人間も動物なので…触れ合ってる…とか…?…と…鳥!さっきの鳥さんいるのでしょうかねー!?」 
「さっき飼育員の肩に乗ってるのを見かけましたよ……」 
ステイリーさんは明後日の方向を向きながらそう言った。誰かいるようには見えなくても私はてんぱってそっちに体を向けた 
「そ、そうなのですか!?し、飼育員さんはそっちですか!?」 
そしてそのまま目線方向に猪突猛進しかける 
「え。ちょっ、ルリアさん、そっちは誰もいませんよ!」 
「え?え?あ、そ、そうですねー!!」 
「大丈夫ですか?えと……あ、あちらにいらっしゃいますね」 
「あ、そ、そうですか…!あ…鳥さんですね…!わぁ~…!」 
恥ずかしさを誤魔化すようにてこてこ歩み寄ってみた 
飼育員さんは流石のプロ精神で私の肩に鳥を乗せてくれる 
「わわっ!?」 
ちょっと慌てたけどそーっと触れみたら羽を軽くパサっとしてすりすりしてくる。可愛い…! 
「あはは、くすぐったいです…!」 
「ふふ、良かったですね。餌でもあげてみますか?」 
どうやら近くに動物の餌が種類別に売られているみたいだ。ステイリーさんは私の為に鳥の餌を買ってくれた。私は思わず手を差し出した 
「あ、あげたいです…!」 
そのまま私の手に餌を乗せてくれた。そうしたら鳥が他にも寄って来てわっさわさに囲まれる 
「わわわ!?わわ!ひゃっ…!く、くすぐった…あはは…本当くすぐったいです…!ステイリーさんもどうです?これ…あはは…くすぐったいですけど気持ちいいですよ?」 
「お腹が空いてるのですかね?では少しだけ……」 
彼も残った餌を少し手に取る。そうすると私の手の餌にありつけなかった鳥が寄っていく 
2人して鳥まみれ 
「ステイリーさんももてもてですね…!あ…」 
餌がなくなって鳥が一気に羽ばたいていく。世は無情… 
「…もふもふ…気持ちよかったです…」 
うっとりしてたらお腹がきゅー~と音をたてた 
「……あ、あの…今のは…その…」 
「気づけばもうこんな時間ですか……お弁当を食べれる場所、探しましょうか」 
そう言って手を差し出してくれた 
「は、はい…」 
手を握り返そうとしてふと止まる。手を洗わないとダメですよ!とちょっとだけ医者モードみたいな言い方でしっかり二人で手を洗い、そうして手を繋いだ 
「い、行きましょうか…!」 
やっぱり恥ずかしさも残ってるけど、さっきよりずっと自然に手がつなげた 



そしてお弁当を食べていい広場まで移動する。家族連れがぼちぼちいる。その中でも人気の出来るだけ少ない端の方を選んでシートを敷いたり準備をしておしぼりを差し出す 
「えと、どうぞです…!」 
「あ、ありがとうございます」 
「ちゃーんと手は綺麗にしてくださいね!…で、で、では…その…ど、どうぞ…」 
今回も結構自信作だ 
おにぎりの段にはパンダおにぎり、和のおかずの段には犬いなり寿司 
動物園にちなんで動物に見せるよう可愛く見た目を作ってみた 
唐揚げと卵焼きとお花のウインナーの段には星の型で抜いたニンジンとチーズを散らせて… 
そ、そして…テンションが作ってた時高かったのもあり…うっかり赤いウインナーでハートも仕込んでみてしまった…! 
こ、恋人っぽいかな?とつい…! 
「……これはまた凄いですね……食べるのが勿体ないくらいです。作るの大変だったんじゃないですか?」 
「い、いえ…その…ステイリーさんが喜んでくれるなら…大変でもなんでもないです…」 
「嬉しいですが毎回力を入れるのは疲れてしまうでしょうし、程ほどで良いですからね?」 
今度はステイリーさんのお腹がくぅ、と鳴った 
「……見てるとお腹が空いてしまいましたね……」 
そう言って照れ笑いする仕草が愛おしい 
「心配しなくても出来る範囲で頑張ってるだけですよ。ど、どうぞ召し上がってくださ……」 
そういえば…前に雑誌で見たデート必勝法では…人はいるけど…知り合いいる感じじゃないし…やってみかったし… 
私は意を決しておかずの一つを箸でつまんだ 
「え、えと…その…あ、あーん…です…」 
「…………え。」 
さすがにステイリーさんも固まった。そして挙動不審に辺りを見渡す 
「……えと……い、いただきます……」 
あ、食べてくれた… 
「………美味しいです………」 
「え、えと…嬉しいです……も、もう一口どうです…?」 
「……じゃあ……もう一口だけ……」 
「は、はい…!でははい、あーんです…!」 
「……ありがとうございます……。ルリアさんも食べて下さいね」 
「そ、そうですね…!食べましょう…!…なんか…美味しいですね…」 
ちゃんと味見だってしたし美味しくなるよう頑張って工夫だってした 
けど今感じてる味の方がずっと、ずっと美味しい 
「……ルリアさんが作ってくれるものはいつも美味しいですよ。でもこうやって空の下で一緒に食べるとまた違いますね」 
「嬉しいです…。そうですね…、凄くなんだか…特別に感じます…。デ、デート…なのもその理由かもです…」 
「…そう、ですね…」 
2人で照れながらハニカむ 

なんだか…幸せだな…。今でも夢を見てるみたい…。ステイリーさんと恋人なんて…。夢だと困るけど…それでもふわふわして…現実味が…。 
ステイリーさんが私を好きってだけでもすごい事なのに……って…あれ…?私ちゃんと伝えたっけ…?図書館で言ったけど…あれってでも勢いでいっただけで… 
「……?顔に何かついてますか……?」 
口周りを触りながら問われた。あ、しまった。見過ぎた 
「あ、い、いえ…!大丈夫です…!え、えと…いい天気ですね…!親子連れがやはり多いと言いましょうか…!ああいうの良いですよね!はい!」 
「そうですね、子どもと一緒に来たら楽しいでしょうね」 
いいなぁ…。家族仲良しでああやって一緒にいれたら… 
「ですよね…!子供とお弁当持って…あ、いえ…結婚出来たらのお話ですが…すみません…」 
「結婚……。……そう、ですね……」 
「は、はい…」 
…しまった。妄想が飛躍しすぎた… 
い、いや。そこまで要求してる訳じゃなくて!いや、確かにそうなったら嬉しいけど… 
…私の頭の中がお花畑になりすぎてる… 
「え、えと……次はどこに行きたいですか……?」 
「え、えとそうですね…ペンギンとか…」 
そう言ってご飯を食べてまたデートを再開するのだった 
色々な動物を見れたのは可愛かったし単純に勉強にもなった気がする 



そして、魔のコーナー。誘惑の場所… 
ありとあらゆる動物を見た後でぬいぐるみを見るのって…物凄い誘惑すぎる…! 
「か、買わない買わない…お菓子のお土産だけ…。あ、これ可愛い…」 
なんで動物園にこんなのあるんだろう?と思わなくもないんだけど…黒猫のぬいぐるみがあった… 
…動物だから…? 
「ルリアさんは黒猫好きなのですか?」 
「ス、ステイリーさんを思い出すのです…」 
一度だけ、ステイリーさんが魔法に巻き込まれて黒猫の姿になったことがあった 
その時は彼だと知らないで拾って世話をして色々語ってしまった思い出が… 
「……忘れて下さい……」 
「あ、す、すみません…!え、えと…ステイリーさんは何か買わないのですか…?」 
それでも地味に手の中でもふもふはしてしまう。手触りいいなぁ… 
「僕は特には……」 
「そうなのですか…。で、ではささっと買い物してきちゃいますね…」 
すごく名残惜しい。けど黒猫を戻してバイバイと手を振った 
「……」 


やっとの事で誘惑を振り切りバイト先と友達へのお土産を清算してきた 
「…あれ?ステイリーさん…?どこ行ったんだろう…?」 
「あ、お土産買えました?じゃあ帰りましょうか」 
「は、はい…!え、えと…帰る…ですか…」 
もう少し一緒にいたい。…でも疲れてるかな…? 
「……どこか寄りたい場所でも?」 
「あ、い、いえ…!そういう訳でなくて…その…えと…楽しかった分…ちょっと終わっちゃうのが…」 
口の中だけで寂しいってもごもご呟く。楽しい分終わるのが寂しい。なんて贅沢なんだろう 
「では夕ご飯、どこかで食べて帰りましょうか」 
「い、良いのですか…!?一緒…嬉しいです…!!」 
「僕もまだ一緒に居たいですから。……お店はどこでもよろしいですか?」 
「はい、はい…!ステイリーさんにお任せします…!」 
「ではこちらです」 
「はい…!」 


そこはオシャレでちょっとこじんまりした洋食店 
ステイリーさんはサラダとパンつきの煮込みハンバーグを。私はオムライスを頼んだ 
最後にはデザートまで勧められるままに頼んでしまった…。ステイリーさんはコーヒーだけだったのに「ルリアさんの一口頂きますから」なんて言われたら頼むしかなかった 
すごく美味しくて満足してまどろむ 
「お腹一杯です…。美味しかったです…!」 
「美味しかったなら良かったです」 
窓から見える景色をゆっくりと眺め、ステイリーさんは残ったコーヒーを飲み干すとソーサーにかちゃりと置く 
「……この先に湖があるのですが寄ってから帰りませんか?」 
「は、はい…!はい…!嬉しいです。行きたいです…!」 
まだ一緒に居たいって思ってくれたのかな?それとも名残惜しそうにした私の為?どっちにしても嬉しい 
そっと会計札をとってレジに向かおうとする。動物園の入場料を奢られた分奢らねば…! 
でもその会計札はそっと押さえられた 
「今日は僕に払わせて下さい。せっかくの初デートですし」 
そのまま否応なく手から会計札を引かれた 
「えぇ!?あ、いえ、ですが…動物園の入り口も払って頂いたのに…」 
「今日のデートにお誘いしたのは僕ですから、気にしないで下さい」 
そのままさらっと財布を出してレジでお会計。て、手際がいい…! 
「あ、有難うございます…!ご馳走様でした…!」 
次のお弁当は本当に豪華にしないと…! 
でも…こういうのって…本当に彼氏みたいだな…いや、彼氏なんだけど…まだ慣れてないせいなのかぎこちない。こういうのってその内慣れるのかな…?次はでも私が奢らないと…! 
内心で意を決しつつ湖に向かって夜の道を歩く

そこは綺麗な水辺だった 
「…わぁ…!見て下さいステイリーさん…!星が一杯映ってます…!」 
水辺に歩み寄って映った星を眺める。本当に学院って綺麗な景色が多いなぁ… 
「そうですね、今日は月もないので星が綺麗に映ってますね」 
さりげなく手を取られる。何度もつないだ手なのに心臓ははねる 
「…えと…その…。…この映ってる星…水をすくえば手に入れたって言えるのでしょうかね…?私には必要ないですけど…」 
空いてる手で髪をちょっと弄る 
「……ルリアさんには僕がいますし、ね」 
少し意地悪そうに微笑みながら握る手を少し強められた 

そう、私にとって遠いだけの星。手に入らなかった存在 
それは一回無くしたけど、でもまた手にある。かけがえのない存在… 
息を深く吸って、言葉に出してみようと向き合った 
「…はい… 
あのですね…私…ステイリーさんが…好き、です…。多分…貴方の星を見た時から気になってて…臆病者の私に…優しく話かけてくれたり…お友達になってくれたり…星をくれて…ダンスを踊ってくれた 
どれも…私にはとても特別で…大好きになって… 
わ、私…普通とずれてるみたいで…お話もうまくなくて…色々、足りない事が多くて…。でも、それでも…が、頑張りたいです…。ちゃんと…彼女として相応しくなれるように…。つまらないとか、至らない部分とか私一杯あると思うのですが…それでも…好きな気持ちはしっかりあるので…そ、その…ス、ステイリーさんを私、幸せに出来るよう頑張ります…!」 
一気に言って相手の反応を待った 
「……今でも十分、ですよ」 
聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声でそう呟いて空を見上げた。 
「僕は、あの時では考えられない位幸せです。ただの闇でしかなかった空に、今は星の光が沢山満ちている。貴方が隣にいてくれるから、いてくれたから、見えるようになったんです」 
握る手を握り直しながら私に微笑んでくれた。 

どうしてこの人はこんなに私の欲しい言葉をくれるんだろう?自分が同じだけのを返しきれてるなんて思えない程に 
自分が彼にそんな影響を与えれたなんて実感がわかない 
「私が…そこまでの事をしたのですか…?」 
素直に受け止めきれない自分が可愛げなく感じて俯いた 
「……したのですよ。何度だって言えます。僕の方こそまだまだ至らないことばかりでしょうけど、これからもこうして、隣にいて頂けると嬉しいです」 
その時、湖の周りの草陰から何か光るものが沢山舞いあがった 
私達を祝福してくれてるように 

…綺麗… 
それしか浮かばない 
ステイリーさんが手を伸ばすと、その指先に魔法のように光が一つ灯った 
「新月の夜に孵化する朔光虫という虫です。この湖に群生していて星の様に光るので、一度見せたかったんです」 
湖の周りの木々や草もきらきらと瞬き、一面が星の海のようだった 
「…すごく、素敵です」 
そう言って暫く景色に見とれる 
握っている手と手が自然に指を絡める 

「…遠くて、寂しかった星を私の手にくれて…今もこんなに近くにくれて…暖かいものにしてくれたのはステイリーさんです。貴方が至らないなんて全くないです。いつだって…今だって…私には勿体ない位で…。それでも私も一緒に居たいです。こんな私ですが…これからも宜しくお願いしますね、ステイリーさん」 
しっかりと笑顔を向ける。幸せだって伝わると嬉しい 
「はい。よろしく、お願いします」 
相手もまた、笑いかけてくれる 
そのまま暫く、光が瞬く湖を二人で眺めていた 

「……そろそろ、帰りましょうか。今日は遅くまでお付き合いありがとうございました」 
それを合図に私たちは手を繋いだまま、帰路に向かい歩き始めるのだった

ステイリーさんは私の部屋の前まで送ってくれた 
「あ、あの…その…えと…今日は有難うございました…!あ、に、荷物…結局最後まで持たせてしまってすみません…!」 
気付いたらお弁当箱を最後まで持たせてしまった…!途中で持つつもりだったのにうっかり甘えてしまった…! 
「そんなに重くなかったですし大丈夫ですよ。こちらこそ、ありがとうございました。……今日は楽しんでいただけましたでしょうか?」 
「は、はい…!すごく、凄く…楽しかったです…!ちゃんとしたデートって初めてでしたが…とても特別で…幸せになれるものなのですね…」 
「それなら良かったです。また、行きましょうね。……じゃあ今日は遅いのでこの辺で」 
ステイリーさんも名残おしそうなのは勘違いじゃないと良いな 

そして何か思い出したように、お弁当の入っている鞄を指差す 
「忘れるところでした。鞄に今日のお礼を入れておきましたので、受け取って下さいね」 
「は、はい…ってえ?鞄?お礼!?わ、私何も用意してないです…!?」 
え、お土産って相手にも買うものだったの!?慌てて鞄を探って包みを発見する 
「僕が勝手に買いたくなった物なので気にしないでください」 
「…有難うございます…」 
包みを優しく抱きしめて、そして開いてみる。その中には…黒い猫のぬいぐるみがいた 
「わ…!あれ?これあのお土産屋さんの…!?よ、よかったのですか…!?忘れて欲しいのでは?」 
「あの時のことは出来れば忘れては欲しいですけれど……これを見て今日の事を思い出してもらえれば、と思いまして」 
「…嬉しいです…!凄く嬉しいです…!有難うございますステイリーさん…!」 
猫のぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて笑顔を向ける。また宝物が増えた。思い出が増えた 
初めてのデートの日を思い出す特別な贈り物。すごく嬉しい 

「喜んで頂けてよかったです。……それではおやすみなさい、ルリアさん」 
そういってステイリーさんはおもむろに顔を私に近づけ頬に一つ、唇を落とした 
「お、お、おやすみ…なさい…」 
思わず頬に手を添える。とても熱い 

手を振って立ち去る彼を見えなくなるまで見送って、部屋に入ったら力が抜けた 
心臓がうるさい。体全体が心臓になったみたい 
貰ったばかりの猫をぎゅっと抱きしめる 

「大好き…」 

貴方が私にかけるのは、恋という特別な魔法 
初めてのデートを経て、私はもっと貴方に恋をした 

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