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明るい音楽があちこちから耳に届く 
買い物街の道中は早めからクリスマスの用意に入ってる 
田舎ではにぎわってもこんな人が多くならないから慣れない私は人に流されそうになってしまう 

「……っと。大丈夫ですか? ルリアさん」 
「ステイリーさん~ …す、すみません~…」 
人ごみから手を引いてくれたのは私の愛しい恋人、ステイリーさん 
彼が抱えていた自責の念から、両想いながらに私たちはずっと友達として過ごしていた。そんな私たちも色々あってついに恋人…。こいびと… 
その響きだけで付き合ってそれなりに経つのに顔がにやけてきてしまいそうになる 
「いえ、これだけの人ですからね。 手、このまま繋いでいきましょう?」 
手がぎゅっと繋がれた。それだけでこのまま人ごみの中にいてもいいなんてゲンキンな事を考える自分が大概だ 
「はい…!」 
笑顔で返すと笑顔を返してくれる。愛おしさが日々募って止まらない。天井なんてない 
私たちは手を繋いだまま買い物を続けた 





「ふぅ、流石に人が多いと疲れますね」 
ステイリーさんは椅子に座って一息ついた 
買い物が終わって休憩しようにも店も概ね混んでいたから他に誰もいないし私の部屋に招待してみた 
だから今は二人きり 
「そうですね。 はい、お茶どうぞ」 
そう言って紅茶を彼の前にだした。本当はコーヒーのが相手は好きなんだけど自分はどうもあの苦みが苦手で買い置きがなかった 
「有難うございます」 
自分も同じテーブルの45度くらいの位置に座って相手の反応を待つ 
「あれ?何かいれました?」 
「お疲れだと思ったのではちみつ入れてみたんです。どうです? やはりそのままの苦さがある方がお好みですか?」 
「大丈夫ですよ。体にしみます。有難うございます」 
「いえいえ。…喜んでくれればそれで嬉しいですから…」 
「…そうですか」 

2人になるとよくなる甘いような、気恥ずかしいような空気 
いやなんかじゃなくてとても幸せな空気だ 

お茶を飲み干して二人でまったりする 
「…クリスマスまだ先ですがお店はこんな早くに準備しちゃうんですね」 
「そうですね。…あの…少々気が早い話ですが…クリスマス…どうします…?」 
「あ、お気になさらず!バイト入れますのでステイリーさんは存分にご友人となりご家族となりお過ごしください…!」 
あれ?なんでがっくりしてるんだろう? 
「もうバイト入れてしまったのですか…?」 
「いえ…。まだ休みはとれますが…ですが…」 
クリスマスって言ったらやっぱり家族と過ごすのが普通だと思うしルスさんにクローシアさんと思いっ切り遊ぶ可能性だって十分ある 
「…あ、あの…ですが…その…渡したいものはあるので…せめて一目お会い出来たらな、とは…」 
恋人になって初めてのクリスマス。やっぱり何か特別なのを贈りたくて手編みのマフラーをクローシアさんに教わりながら一生懸命作ってる 
せめて、誕生日に一目会いたいくらいは許されるはず…! 
「一目でなくて…もっと我がまま言って良いんですよ?」 
「…え? で、では…一時間とか!?」 
「…一日中とは言ってくれないのですか?」 
「………え」 

顔が一気に熱くなった 
「だ、だって…!ご家族とかご友人とか…ステイリーさんにはたくさん一緒に過ごしたい方がいらっしゃるでしょうし…」 
言ってて語尾がだんだん小さくなっていく 
私だって…本当は…。でもそこまで我がままになってしまうのはちょっと怖い。呆れられてしまうラインが分からない。嫌われたくない 
そんな風に迷う私の手に彼は手を重ねた 
「僕が誰より一緒にいたいのは貴方です。…それに…イブはルリアさんの誕生日じゃないですか。 僕に貴方を祝わせて下さい」 
そう言って額がこつっと合わさる 
繋がる部分の熱が熱い 
少し目の前がにじんだ。誕生日にお祝いなんて…それは本当に嬉しいもので… 
「…一緒にいて…くれますか…?」 
やっとで絞り出した声はとても小さくて 
でも相手には届いたみたいで嬉しそうに笑ってくれた 
「はい。一緒に過ごしましょう、ルリアさん」 
「はい…!」 
こらえきれず涙が溢れた 
嬉しくて仕方なくて泣いたのはこれで何度目? 
「私…すごく…幸せ者です…」 
「…そうですか」 
涙を指で優しく拭ってくれて、子供をあやすように私の頭をなでる 
「…子供じゃないですよ…?私…」 
ちょっと困った感じで訴えてみたら唇が相手のそれでふさがれた 
「そうですね。子供扱いはしてないつもりですが?」 
顔が羞恥で真っ赤になった 
耳まで熱い 
「…はい…」 

それ以上言葉が出なくて体に寄り添う事で気持ちを示した 
もう一度、軽く唇が重なる。それがくすぐったくて嬉しくてたまらない 
「大好きです…」 
そう囁いたのはどっちなのか 
そのまま私たちはクリスマスの約束をして、何がしたいとかどこに行きたいとか話しながら暫く二人で触れ合ったり笑ったりして過ごした 

私は子供で 
なんの疑いもなくこのままずっと一緒にいたいって素直に思っていた 



それからすぐ、私は学院から暫く姿を消した 



その連絡が来たのは突然だった 

村からの手紙は父親からかと思った。その前の手紙でステイリーさんと付き合う事になった事を報告してあるからちょっと緊張してその手紙を開いたら 
それは近所でよく面倒をみてくれた人からで 


『お父さんが倒れた。出来れば帰って来て』 


そんな内容だった 

頭が一気に真っ白になった 
次の瞬間には荷物を作っていてバイト先への連絡しなきゃとか急いで考えていた 
ステイリーさんにも部屋のポストにメモを入れておいた。ちょっと実家に帰ってきますが心配しないで、と 
それが自分に出来た精一杯でそのまま飛び出すようにフェステリアに帰った 


怖かった 
お父さんの方のおじいちゃんとおばあちゃんはもう年で数年前に亡くなってしまってて 
お母さんの方も病気でいなくて。親戚は疎遠すぎて他人同然 
お父さんがいなくなったらもう、身内と呼べる人はいない…。足元が急になくなる感じがして、世界に自分がいれる場所がなくなりそうな感覚に陥る 

泣きそうになりながら必死に急いで帰った私を待っていたのは… 



「…過労と心労…?」 

さすがに仕事は休んでいたけどもう普通に生活してたお父さんがいた 
「…そうだ…。あの人は物事を大げさにするのが好きだから…」 
力が抜けてそのままへたりこんだ 
「…よかった…」 
お父さんが戸惑う気配がしたけど私はそのまま延々泣いてしまった 
ただうろたえながらどうして良いのかうろうろしてたお父さんがなんだか面白かった 


暫くして落ち着いて、私は倒れたばかりのお父さんをおいて帰れず家の事をしていた 
ふと日付を見てお弁当…作ってあげる日だったけどステイリーさんがちゃんと書置きに気付いてくれたか心配になった 
今すぐ連絡する手段なんてない。どうにも出来ない事がちょっともどかしい 
気付いていてもいなくても、きっと今頃心配してる… 
そう思うとちょっと心が沈んだ。けど今は家族を放り出せない 

私とお父さんでご飯を一緒に食べる 
ただ無言で。これは前からそうだった。仕事の話以外話題がなくて、仕事の話を食事中にするのはどうも躊躇う故に黙ってしまう。学校生活で人とお話ししながら食べるという事を知った今じゃなんだか物足りない 
「…えとさ…えーと…そ、そういえば…前の手紙の…恋人の話なんだけど…」 
思い出していたせいでポロっとステイリーさんの事を話そうとしたら、お父さんが盛大に食器を落とした 
「だ、大丈夫…!?」 
「……………………………大丈夫だ…」 

大分長考してるな… 
「…もしかして…反対したい…?」 
「い、いや…そういう訳では…」 
しどろもどろになりながら視線が落ち着いてない 
「…好きにしなさい…」 
そう言って食器を洗って席に戻る 
今までの私ならここまで。お父さんに踏み込む勇気なんてなかった。嫌われないよう顔色を見るだけ 
けど、自然と言葉が出るようなってる。今まで関わって来てくれた人達すべてが私を前に押し出してくれる 
「…あのね…!私…ちゃんと…幸せだよ…?」 
「…そうか…」 
そう言ったお父さんの顔は少し穏やかになった気がした 
一安心しかけたけど… 


「…なら、もう無理しないで帰ってこないで…大丈夫だ」 


その一言で私は思わず席を立った 
「…なんで…?」 
「…幸せに…してくれる人がいるなら…その人といるべきだ…。ここには…何もない…」 
「……そんな事言わないでよ…っ!ここは私の故郷なんだよ…?」 
お父さんは意を決したように私を見た 
「…ルリアは将来医者になりたいとずっと私の反対を押して勉強していた…。けど本当にやりたいことがあるなら…いつでもそれをやっていいんだ…。ここを私は…母さんの為に故郷にしたけど…ルリアはルリアで行く場所を好きに決めていい…」 
それは、お父さんなりに私を気遣った言葉なのかもしれない… 
でも、頭が真っ白になった。そんな事、そんな言葉 

嬉しくない 

「……」 
「ルリア…?」 
「…私の…今までの…努力とか…気持ちとか…お父さんには…本当に伝わってない…んだね…」 
ただ傍にいたい。自分を見てほしい。その一心でやってきた努力 
でもそれだけじゃない。孤独を埋める為だけでここまでやってきたんじゃない 
人を助ける為の力が本気で欲しくてやってきた。半端な覚悟で歩める道じゃない 
ここで私は確かに寂しかった。自分のまま話すことが出来なかった。それでも… 
「…私だって…ここを大事だと思うから…頑張っていたんだよ…!?そんな風に…決めつけないで…!」 
「………そうか…」 

それで会話は終了だった 



私は部屋に戻ってただただ悲しくて泣いていた 
「ステイリーさん…」 
髪に光る星に触れると少し落ち着く気がした 
そこで私はようやくお父さんの言わんとすることに気付いた 

私はいつかここに帰る。そのつもりでずっと頑張って来た 
…その時、私達はどうなるんだろう…? 
ステイリーさんは将来…何がしたいんだろう…?学者?研究者?…それはこんな田舎で出来る事なのだろうか… 
相手の将来の夢によっては…こんな田舎で一緒になんて無理になる。…傍にいれない… 

そう思った瞬間頭から布団を被った。 
私は、どっちかしか選べれないとしたら?大事なのは…どっち? 



以前よりギクシャクしてしまったまま数日過ごしてこのまま冬休み、年越しまでいてしまおうか悩んだ。けど家にいるのも億劫で学院に帰る事にした 

ふと移動中、同乗者が持ってた袋でクリスマスを思い出した。そういえば…マフラー途中だっ… 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
「あっ…!」 
思わず大きな声を出してしまい慌てて口をふさいで顔を伏せた 
クリスマスイブの約束をすっかり忘れていた…!慌てて今の日付と帰るまでの日程を計算して凄くギリギリな事に気付く。でもまだギリギリでどうにかなるかもしれない…! 
将来の事とかそういうのは一回おいておいて 
私は必死に編み物と移動中格闘する事になるのだった 

多少の乗り物酔い覚悟で… 



学院につけたのは何だかんだで当日…日も沈みかけている頃だった 
もうきっと待っていない。そう思っても、ずっと一緒にいれないかもしれないとか頭で考えても 
気持ちが止まらない。ただ会いたい。それだけで走った 
待ち合わせに選んでいたのは去年、ステイリーさんの苦しい気持ちを分けてもらえたツリーの前 
ここから出発したくて選んだ場所 

走って走って、転びそうになりながら進んだその先には… 
見慣れた夜のような色のくせのある髪 
私の愛しい人の姿 

「…っ…ステイリーさん…!!!!」 
声を必死に出して、荷物を手から放り投げてそのまま胸に飛び込んだ 
「…ごめ…なさ…ごめ…」 
「大丈夫ですよ。…お帰りなさい、ルリアさん」 
「…ただいま…」 
私が泣き止むまで、ステイリーさんはそのままずっと優しく抱きしめていてくれた 



「…雪が降って来ましたね…。場所、移動しませんか?」 
優しく気遣う気持ちに胸が痛くなる 
自分にとって今一番大事なのは…なんなんだろう…?ただ、わかるのはどっちを選んでも後悔するって事だけ 

「…ステイリーさん…私…ステイリーさんの恋人失格かもです…」 
俯いて言うとそれだけで胸が引きちぎれそうに痛んだ 
「…どうしてですか?」 
「…ずっと…一緒にいれない…かもしれない…です…」 
恋人でそこまで考えるとか考えすぎかもしれない。けど、ずっと一緒にいれる訳でないかもしれないのに…このまま話さないのはそれこそ不誠実な気がした 
…ステイリーさんは…こんな気持ちだったんだろうか…?自分の傍にいつまでもいさせたらいつかは深く傷つける。それが分かってても一緒にいたい気持ちがある 

「私ね…いつかは…帰るんです…。家で…医者を…お父さんとやるつもりで…今まで頑張ってきてて…」 
「…はい」 
「…その時が来たら…私は田舎に…帰るんです…。ここにはいれない…」 
胸が痛い。それよりも何もかも投げ捨てて好きな人といたくなる。でも自分の今までを全て捨てるのもまた悲しいし納得が出来ない 
「…その時は…お別れになっちゃうかもしれない…です…。 
…ここの人達も…場所も…好きです。けど…私が最初助けたくて…力を求めたのは…あの場所の人達の為で…。…ステイリーさんといつか離れるなんていやです…。凄く嫌です…!けど…どっちかしか選べなくて…選べって言われたら…私はどっちを選ぶのか…分からない…」 
思いの丈をぶつけてぎゅっと抱きつく 
折角のクリスマスなのにどうして私はこんな別れ話みたいな事してるんだろう… 

痛いくらいの沈黙が少し流れた 
相手の腕の力が少し強くなってしっかり抱きしめられた 


「なら僕が、あなたと共に行きます」 


そんな言葉が耳に届いた 

「…え…?」 
言われた言葉にとっさに頭がついていかなかった 
理解が追いつくと途端に顔が熱くなった 
「い、一生の問題ですよ!?い、田舎ですし…何もないですし…つまらないですよ…?本当に…」 
「僕がそこで何が出来るかはわかりませんが…それでも貴方がいれば、つまらない場所なんてないですから」 
そういってまっすぐ見つめられる 
離れるのは嫌だ。けど帰らなきゃ 
その両方が叶うなんて…そんなの都合が良すぎる 
一時の感情で大好きな人の一生を左右させていいのだろうか? 
単に慰めようとしてくれてるだけ?違う。ステイリーさんは無責任な言葉を言わない 
「…私…嬉しいですけど…少し怖いです…。 それだけの価値が…私にあるのか…」 
「……この寒空の下、帰って来ないかもしれない貴方を、それでも会いたくて待ち続けていただけでは理解して頂けませんか?」 
ステイリーさんは迷って俯く私を優しく諭すように言葉を紡いだ 
会えないかもしれない。でも会いたい。その気持ちが…お揃いだった私達 
「ルリアさんが何のために今まで頑張って勉強してきたのか、僕は知ってます。僕がそんな貴方の夢を諦めさせる存在にはなりたくないです。……幸い僕はどうしてもここにいなければならないというしがらみはありませんので、どこへでも、貴方と一緒に行きますよ。貴方がそうしてくれたように」 
嬉しくてまた涙が溢れる 
何か言わなきゃとか思っても声にならない。そんな子供みたいな私に呆れるでもなくステイリーさんは優しく背をさすってくれる 
「…いっしょに…いたい…」 
小さくつぶやいた言葉は相手に届いたみたいで腕の力が強くなる 
「…いさせて下さい。僕も…ルリアさんと離れたくないです」 

少し体が離れて見つめあう 
近づいたのはどっちからだったのか 

雪が振って寒い中 
互いの熱が凄く暖かかった 



気が済むまでそうしていた後、くしゃみが出た上にお腹がなるという事態に陥った 
くすくす笑われて思わず縮こまった 
私たちはまだ離れたくなくて、売れ残ったのになったけどケーキとチキンを買って私の部屋に来た 
ジュースでになったけど乾杯してご飯を食べた 
そのまままったり二人でベッドに背を預けて寄り添い偶々触れた手を繋ぐ 
「…ステイリーさん…」 
「はい?」 
「…そ、その…さっきの…ですね…その…わ、悪い意味じゃなくて…その…保留…しませんか…?」 
「…保留、ですか?」 
「あの、えと…い、今決めちゃうと…やっぱり早い気がしまして…。ステイリーさん若いんですし…」 
「ルリアさんの方が若いじゃないですか」 
「わ、私は…いいんです…!と、とにかく…まだその…付き合って長くないですし…そこまで決断させちゃうのが…やっぱり心苦しんです…」 
そう言いながらも手を”離したくない”と伝えるようぎゅっと握る 
「一生の問題ですから…考えて決めて欲しいんです…」 
本当はこのまま甘えたい。でもそれじゃあ決めさせたと後悔する気がした 
「…分かりました。ルリアさんが卒業するまでにちゃんと決めます」 
これで…振られたらすごくイヤだなぁ…とかわがままな事を考えていたらキスをされた 
「ちゃんと、準備した上で…次は言います」 
「…はい…」 
二人してお揃いの真っ赤な顔 
まるでもう一回言うのが確定事項なように 

ステイリーさんは照れて目をそらして、何かを思い出したように上着のポケットをごそごそしだした 
「ルリアさん。これ、誕生日プレゼントです。お誕生日おめでとうございます」 
綺麗にラッピングされた長方形の箱 
…私は今日何回ステイリーさんに泣かされるんだろうか…?涙腺が弱ってるのもあるけど嬉しすぎて苦しい 
「…ありがとうございます…!」 
涙が出ててもそれでも笑顔はしっかり向けた 
「開けて良いですか?」 
「どうぞ」 
箱を慎重に開いたらそこには綺麗なペンダントがあった 
思わず手に取ってまじまじ見る。…こう言ったらなんだけど…高そう…? 
「これ、通信出来るんです。これからまたこういうことがあっても困ると思いまして…」 
「…え!?そ、そういうのってお高くないですか!?」 
「値段は出来れば気にしないで頂けると。僕だって大人なんですし大丈夫ですから」 
…とっても野暮ったい事を言ってしまったかもしれない… 
でも、本当きっと安くはない。それでも…私を思って買ってくれた。私と、連絡を繋ぐためだけに… 
「ありがとう…ございます」 
「…いいえ。これはですね、魔力をこうやってこめると相手のが光るんです。で、受ける時は自分も魔力をこめればいいですから。緊急の時は音を出すことも出来るんですよこうやって…」 
ステイリーさんは使い方を丁寧に教えてくれた 
これでいつでも相手と離れていても連絡がとれる…。例えば夜とかでも… 
う、嬉しい… 
「大事にしますね…」 
これは私たちを繋いでくれるもの。そう思うととても愛おしい 


あ…そうだ、何だかんだで完成させた私のプレゼント… 
とは言え包みまでは用意出来なかったけど… 
私は荷物を探してマフラーをちゃんと出来てるかもう一回確認してそっとステイリーさんに手渡す 
「私から…クリスマスプレゼントです…。今日と言う日に…待っててくれて…嬉しかった…。ありがとうございました。…ちょ、ちょっと下手かもですが…」 
ステイリーさんは手触りを確かめるようにマフラーに触れる 
「有難うございます…。とても嬉しいです」 
はにかんだその笑顔を見て 

 この人がすき 

なんて散々感じてきた気持ちがまた重なった。恋に重複があるのなら、私は何重にステイリーさんを好きになってるんだろう…? 
今日だけでも何回恋を重ねたかもう分からない 
「そういえば!ステイリーさん風邪ひいてないですか!?さ、寒空の中たくさん待ったんですよね!?」 
い、今更すぎる…!なんて私は鈍いんだろう…! 
「大丈夫ですよ。これでも魔法使いなんですから。ちゃんと暖かくしてました」 
「そう…ですか…?」 
「そうですよ。ほら、大丈夫でしょう?」 
そう言って彼は私の手を自分の頬に当てた 
確かに平熱っぽい温度はしてる 
「でも今日はちゃんとお風呂で温まって…暖かくして寝て下さいね…?」 
「分かってます」 
本当はまだ一緒にいたい。けどもう就寝時間になってしまう 
ステイリーさんは俯いた私に囁く 
「…明日、今日のやり直し出来ますか?」 
「やり直し…ですか…?」 
「デートの…」 
言ってて照れたのかちょっと赤くなって目をそらされた…こういう仕草可愛いなぁ…。あ、いや、年上の人にそんな感想なんて 
「したいです…やり直し」 
「では後で…布団入ったらこれで相談します?試しもかねて」 
そう言って自分のペンダントを手にする 
私が寂しそうにしてるのを気付かってくれたのかもしれない 
「はい…!夜更かししないよう気を付けないとですね」 
「そうですね。ルリアさんと話していると時間があっという間ですし」 
今度は私がぼふん!となって真っ赤になる番だった 
「そ、そうですか…。嬉しいです…」 
「はい。…では今日はもう遅いですし」 
「はい…。ま。また後で…」 
「えぇ。後で」 
扉を出るまで見送って、夢見心地で一息ついた 
ステイリーさんから連絡が来る前に済まそうと急いでお風呂に入って布団にもぐる 
こっちから連絡していいかな?それとももう少し待とうかな?とそわそわ待つ 

不思議 
ここに帰ってくるまで私は胸が引き裂かれる思いだった。それなのに今はこんなにも…幸せで満ちている 
お父さんのこと…その内相談してみて…いいのかな…?で、でも家の事だしなぁ… 

なんて悩んでいたら手にしたそれが光った 
この星の光が私の道標に見えた 
大丈夫。そう思えて自然と不安が消えていった 


誕生日。一歩また大人になる日 
今年はただ幸せな気持ちで終われたのだった 

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