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side ルリア 

(また今年もちゃんとお祝い出来ないのかな…?) 

と私は空を仰いでため息をついた 
大好きな人の誕生日。それがもうじき。それは分かってる。 
出会って最初の時は誕生日だった事すら知らないで通り過ぎた 
次の誕生日は…お別れしていた状態だったから何一つしてあげれなかった 

そして今年。恋人になったので祝う事は出来る。出来るのだが相手は遠くの空の下にいるのであった 
折角自分の誕生日に貰った通信の魔導具も役に立たない場所 
行って欲しいと言ったのは自分。だから後悔はしてない。けど、また直接祝えないのかと思うと気が沈んだ 
ため息が出そうになるのを慌てて首を振って止めた。直接は無理でも当日に間に合うよう贈り物を贈ればいい。今年会えなくても来年…留学が終わってれば次はちゃんと祝える。相手が帰って来ればそこから先はずっとずっと一緒に祝える 
私の誕生日の日、ずっと待っててくれたあの心が震えるほどの嬉しさを相手に伝えれるくらい頑張っていいのを贈ろう。そう思って店を見ていたら…とても素敵な贈り物を発見出来たのだった 



side ステイリー 

(今日も疲れた) 
息を吐いて椅子に座る。専門の場所。専門の教育。行ってみるべきだと言われていた場所は流石に自分の知的好奇心を十分満たしてくれる 
それ故時間も忘れてうっかり没頭もよくしてしまうのだが 
ちゃんとご飯を食べないとルリアさんに叱られてしまうな…。と思ってちょっと笑みがこぼれた 
今頃彼女も勉強してるのだろうか?遅い時間までよく本を読んでしまうとか前に言ってた気がする 

引き出しを開けて、今まで貰った手紙をそっと指でなぞる。ここは確かにやりがいもあるし自分にとって力を発揮できる場所なのかもしれない。けど、それでも 
彼女の元に必ず帰るという気持ちは揺るがないままだ 

そうだ。彼女と言えば。今日はやたら大き目の荷物が来た。一体何なのだろうか?たまに味が恋しいだろうと送られてくるエリュティアの菓子だったりするのだろうか? 
そっと荷を解くと、その中にはいくつかの本。それに薬と思わしきもの達と思った通りの菓子類。 
体を気遣って魔法薬でも送ってくれたのだろうか?それにしても量がなんだか多い気がする 
同封されていた手紙を手にして封を切った 
いつもより少し薄い気がする手紙。中には荷物に入ってる本の一冊のタイトル。それを開いて欲しい 
それだけ 

何を伝えたいのか首をかしげて言われた通り本を開いた 
そこから光が溢れる 

『今晩は。ステイリーさん』 

…彼女の姿だ 
これはメッセージを姿付きで送れる本だったんだ 

『え、えといきなり大荷物で驚いたことでしょうけどちゃんと受け取ってくれると嬉しいです』 

ちゃんと受け取りますけど無理してないですか?と問いたくなる。これは録画メッセージだから声をかけても無駄なのは分かってるけど 

『今日は特別ですから。あのですね、直接やっぱり言いたかったのですがやっぱり無理なのでこんな形で失礼しますね』 

彼女はちょっと恥ずかしそうに俯いて顔を上げた 


『お誕生日、おめでとうございます。ステイリーさん。貴方の特別な日に、今年はちゃんとお祝いしたかったのです…!』 


僕もうっかり忘れていた誕生日。それを笑顔で彼女が祝ってくれた 

『え、えとささやかな物しか贈れなかったですけど、使って下さると嬉しいです』 

ささやかなんてそんな事ない。こんなにも、嬉しいんだから 

『留学から帰ってきたら、ケーキ作りますからね…!ずっと先でも待ってます。ちゃんと、待ちますので』 

無意識に彼女に手を伸ばしても手はやっぱり通り抜けただけだった 
けど、それでも手をのばさずにいれなかった 

『では、えと録画時間というのがあるのでそろそろですが…その…お体にはちゃんと気を付けて。食事はちゃんととってくださいね。…また、お手紙送ります。お元気で』 

彼女がペコリと頭を下げて画像は終わった 



顔が熱い 
離れているのに、それでも気持ちはちゃんと続いている 

「ちゃんと、帰りますから待っててくださいね…。ルリアさん…」 

手紙に一つ、唇を落とす。遠く離れた彼女に繋がる気がして 

無理はしないよう今日は早く寝ようとも思うけど、ちょっとだけ 
これだけは許してほしいと願いながら机に向かう
 

そしてペンをとり、彼女へのお礼の手紙を書き始めるのだった

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