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それは少し昔の話 
私の住んでた国、フェステリア 
そこの一部が氷の大地と化した 

私の住んでいた場所はそこまでじゃなくとも毎日のように雪が降り、とても、とても寒かった 

私の家は村で唯一の病院。当然毎日が大変になっていた 
足を滑らした人、この寒さで風邪やインフルエンザにかかった人、凍傷を負った人 
兎に角色々 

「・・・またダメか・・・!せめて私が魔法を使えたら・・・!」 

お父さんは毎日毎日国に嘆願書を書いている 
薬が足りない、食料が足りないと 

でも都市部なら兎も角こんな田舎にろくに手は伸びず、村の皆で頑張るのも疲弊を始めて限界が見え始めていた 
お父さんはよく言うようになった 
『魔法治療があればあの人を救えたのに・・・!』と 

続く寒さ。それに沢山の人が倒れた 
その度に私達は治療に走った 

お母さんの友達だった人、よく様子を見に来てくれてた人も 
まだ私が家の手伝いを始めてなかった頃、一緒に遊んでいた友達 
近所のおじいちゃん、おばあちゃん 
その他色々。広くない村はみんなが顔見知りで、とにかく必死に村の皆を助けようと奔走した 

毎日がめまぐるしくて、でもろくな治療もしてあげれなくて 
どうして国は助けてくれないのだろうか?支援があれば助かる? 
現状に痺れを切らした私は無謀な行動に出る事にした 

”王様に直接言えばいいんだ”と 

物語の王様は遠くにいて、私達の声が直接届かない。だから知らないんだ 
分からないんだそう思い込んだ 


現実は、物語通りじゃないのも分からないくらい、私はバカで世間知らずの子供だった 


お父さんに置き手紙をして、村を飛び出した 
使ってないからたまっていたお小遣いを握り締め走る 

数日おきにしかない馬車に乗り、王都に向かう汽車に乗り継ぐ 

そこもやっぱり寒くて、薄暗くなった町並みを必死に王宮に向かって走った 
”急がなきゃ、急がなきゃ” 
早くみんなを助けないと・・・!その一心だった 

都会の町並みは田舎とは違うけど普通で 
こっちみたく雪が酷く積もってる訳じゃない、普通の冬の景色だった 

入り口には大きな門構え 
大人の人ともう一人誰かが私の前にその門をくぐって入っていった 
(入っていいのかな…?) 
よく分からず門に近づくとその門は閉ざされた 

「何者だ?許可なき物通すわけにいかぬ!」 

怖い声に体がすくんだ。だけど怯むわけにいかない 

「わ、私は…!コルカ村の者です…!王様に話があってきました!お願いです!ここを通してください…!」 

今にして思わなくても、私はバカだった 
門番の二人は何かを確認して私の前に立ちふさがった 

「帰るんだ。たかだか一市民に会うほど王は暇ではない」 

「…!こ、困ります!私・・・私の村は今困っているんです…!何人も倒れたり…凍傷おこしたり…!薬が…食料が必要なんです…!お願いしま 
す…!お話をさせてください…!」 



二人の門番を潜り抜けて門にしがみついた。けど子供の力じゃ門は動かない 

「お願いします…!私たちを助けてください…!王様…!」 

必死の叫びだった 
けど、何一つ届けたい相手には届かない 

「いい加減にしろ!」 

「きゃっ!!」 

私は突き飛ばされて地面にしりもちを付いた 

「これ以上何かするなら容赦しないぞ」 

門番は剣を手にする 

背筋が凍った 
死にたくない…!怖い!と本能が警告する 

怖くて怖くて 
走って逃げた 

そんな私を遠目から見ていた存在に気付かずに、ただ走った 


…そして人通りのない道に逃げ込んだ 

「助けて・・・!!」 

届かない 

「誰か…!」 

私には相手に声が届く場所にすら立てない 

「…誰か…助けて……!!」 

必死に泣いて体を抱きしめる 

力が欲しい 
何もなくては何も守れない 

「…お母さん…」 

星を見上げる 
あそこには今、もっと村のみんながもしかしたら今、この瞬間に逝ってしまっているかもしれない 

「届かないよ…!」 

相変わらず星は遠くて 
そこに行かれてしまっては何一つ届かなくなってしまう 
声を届けたい相手はこの地上にいるのに 

声を相手に叫ぶ事すら出来なかった。 




-sideヴェルノ- 



※ヴェルノ11歳時です。 



魔女が来る 
そう言われ準備の為に囲われていた場所からどれ位ぶりかに出してもらえた 
年が近い魔法使いを見せようという魂胆なのだろう 
下らなすぎる 

こんな力、なければよかったのに 
何度思った事だか 

シファネがいなかったらとっくに世界に絶望していたであろう 
この力のせいで、王子のせいで、自分には自由がない 

誰も信じれなく、誰にも心を許せず孤独に囚われる日々にうんざりしていた 

廊下を歩いていたらふと、門が目に入った 
(誰だ・・・?) 
薄暗くてよく見えない。けど小さな女の子が必死に門にしがみついている 

何かを叫んでいる 
窓を開いて顔を乗り出す 
傍にいた者にとがめられたが気にせず様子を眺めた 


その子は必死に何かを訴えて、そして門番に突き飛ばされ、あろう事が剣を出され逃げ出した 

「…なんだ…?今のは…?」 

驚愕した 
自分達は民を守る立場でないのか? 
何故その民を虐げるマネをした? 

「よくある光景です、王子」 

お付の者は何でもないように言い放った 

「今国には問題がおきてまして。ありとあらゆる傲慢な者どもがああやって押しかけるんです。全く…こっちも大変なのに…」 

国が?大変? 
ああ、確か氷の大地が出来ているんだったんだっけか?それを解決する為に今から会う魔女を呼んだとか 

「だからと言って剣を出す必要はないであろう!あのものは我らの民であるぞ!!」 

窓を閉められ何事もなかったように相手は歩き出す 

「あのような一人なんかに一々耳を傾けていられません。それが現実です」 

体が震えた 
閉められた窓、王宮と街 

その距離を今更始めて感じた 

なぜ、その一人も大切だと思わないんだ…? 

そんな事を考えた 

慌てて前を歩くお付を追い越して父上に、国王の元に走った 


「父上!!!」 

「…なんだ?騒々しい奴だな。これから例の魔女が来る。王子として恥じぬようちゃんとしとけ」 

「父上!今民は…一体どうなって…?」 

「…さぁな」 

そんな、たったそんな一言だった 

「んな事よりしっかり相手を見ておけ。その為にお前を会わせるんだからな」 

そんな事 

あの子の必死な叫びはこの王には全く届かない 
自分にだって、全く届いてなかった 

「民が、困っていました!手は打たないのですか!?」 

「…一人前顔して口出すんじゃねぇよ。はぁ~・・・早く解決してそんな事より魔法開発に回してぇのに…」 

「父上!!」 

「黙れ」 

「・・・!」 

「…もうじきに魔女が来る。顔を上げてろ、ヴェルノ」 

これ以上言っても無駄、という雰囲気だった 

魔女に会った時は正直あまり覚えていない 
ショックでそれどころじゃなかったからだ 

父上には、民の気持ちが全く届いていない 
今もああしてまで困っている人がいるというのに…! 

(変えなくては…!) 
王子という立場に初めて感謝した 
力をつけて、誰にも、父上にも文句を言わせなくして 
この国を変えてみせなくては、自分が…! 

結局事件の事もろくに知れず 
無知な王子のまま学園に入ったのはまた先の話 

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