もやむのサイト
読むのが面倒な人の為の設定情報
・国民は12歳になると王都に行き、魔力の有無、どれほどのものを所持しているかの検査がされる。才能の有無でその後の人生が大いに変わる。特に才能がなかったものは田舎へ返され農耕やそのほかの仕事につかされる。才能があった場合はそのまま都市部に引越しそれ相応の仕事を約束される。
・ルリアはこの検査で才能なしと出ました
・アテンションで分かると思いますが今回はいつものステルリのラブコメではなくヴェルノ様とルリアの友情ものというか…交流話というか…です。ペア重視の精神。二人はお友達です(重要)
・ハロウィンイベント後のお話です
・メルシー☆さんと日記で会話したのを編集・校正してSS化したものです
ではどうぞ
---------------------------------------------------
何故か記憶がぼやけているけど何だか大騒ぎで楽しかった気がするハロウィンが終わった。気持ちの上で色々変化をおこしつつもようやく普通に戻ってきた実感が出てきたある日の事だった
私は前方に見慣れた金髪の人を見つけ小走りで近づいた
「ヴェルノ様…!こんにちは…!」
その人は私の出身国の王子様。色々あって私達は身分差はあれど友人となったのだ
彼は私に気付いて振り向いた
「ん?おぅ、ルリアか!」
彼は辺りをキョロキョロを見回す
「ん?今日は一人か?」
と珍しそうに言われた。
…私ってそんな一人でいないかな…?…というか王子様ってそういえば一人で歩いたりするものなんだ…。今更だけど
「は、はい…!ちょうど講義終わったところで…。ヴェルノ様は?お一人ですか…?」
「あぁ、俺も今終わったとこでな。これから寮へ戻ろうかと思っていたところだ」
それなら丁度いい
落ち着いたら話したいと思ってたことがあったんだ
「あ…で、でしたら…よければですが…私に時間…頂けないでしょうか…?む、無理にとは言いませんが…!」
「ん?あぁ、構わんぞ。何か話があるのであろう?」
私の急な申し出にも、ん?と首を傾げ何でもないように応えてくれた
「どこかで座るか?んー…どこへ行こうか…」
「あ…えとでは…あっちにある広間はいかがです?人気もありませんし
ちょっとすみません…待っててくださいね」
話をするなら飲み物は必要だろう。急いでお店に入って二人分買って戻り相手に一つ、フルーツジュースを渡す
「えと、行きましょうか…?」
「おぅ、すまぬな。泉だな、よし向かうか。」
受け取ってもらいそのまま広間に移動するそこはちょっと休憩するには丁度いい広間でベンチと噴水があるだけの落ち着いた場所だ
「よし、ここでいいか。よし、はじめよう」
私は備え付けのベンチに座り相手も少し離れて座った…改めてお話するとなると緊張するなぁ…
「えーと・・・改めて先日はお疲れさまでした・・・!色々助かりました、本当に・・・」
はっきり覚えてる訳じゃない
けどこの人には助けられた。そんな確信がある
「ん?あぁ、気にするでない。それにしても楽しかったな」
にこっと笑って手をらひらさせ特に気にする様子もない
…この人やっぱり大物なんだなぁ…。そんな人が未来の王様…。うん、とっても嬉しい感じがする
「あ、有難うございます…!そうですね…何だか色々大変だった気がするんですけど…今は…はい、良い思い出になってます…
ダークマ…お二人のシチューからもじゃが出てきて…ヴェルノ様がフローリアさんについて演説をなさったり…色々ありましたけど…良い思い出です…!」
ヴェルノ様は何故か演説のところでぶっとジュースを吹き出した
「げほっ……!」
「だ、大丈夫ですか!?」
むせるのが収まるまで思わず背をさすった
「…す、すまぬ…ありがとう…。まぁそんなこともあったなぁ、なかなかできぬ経験をした。」
「そ、そうですね・・・なかなか出来ないです・・・。あの時のヴェルノ様は・・・凄い素敵だったですよ?」
落ち着いたみたいなので手を離す
「お、おぅ…そうか。いつか彼女にもきちんと伝えねばと思っているのだがこういうのは難しいな」
…私は遠くをみて一呼吸置いて一気にジュースを飲みこむ
人に何かを伝えるのは難しい…。いつも間違えて上手く伝えれない私だからなるべく、出来るだけ言葉を慎重に選ぶ
「・・・ヴェルノ様は私とちゃんと会話した初めてのとき覚えてます・・・?あの時は、そちらから話しかけて頂いて・・・
『守っていく対象が目の前にいると思うとやる気もみなぎってくるな』
とおっしゃって頂けました・・・。私その時思ったんです…”この人にはちゃんと、言葉が届くんだ”・・・て
昔、私達の言葉は・・・届かなかったから。だから・・嬉しかったんです、本当に」
「ん?あぁ、そんなこともあったなぁ。ちゃんと届く…?届かない声…?どういうことだ?」
ヴェルノ様は意味が分からないといった様子で首を傾げた
私は昔の事を思い出しながら口をゆっくり開いた
「…人に思いや願いを伝えるのは難しいですよね…」
「ん?…あぁそうだな本当に」
「…その中庭で話した時、エリザさんが言ってた事件ありましたよね?氷の大地と呼ばれた事件…
…王都にいらっしゃったヴェルノ様には実感なくて当然ですけど…。私の実家のある村は被害を受けたのです
毎日寒くて…食べ物も薬も足りなくて…。うちは父が医者なのでそれなりに対応はしてましたが…物資が足りなかったんです。魔法もなかったですし…
父はよく国に嘆願書書いてて…でもダメで。私は…当時子供で…王都まで行ったんです
…直接王宮の前まで訴えに行きまして。今にして思えば当たり前ですが…文字通りの門前払いでした
…私のやり方は当たり前です。けど…でも、父の大人のやり方も通じなかった。…その時私には…王宮には、王族には声が届かないって勝手に…思い込みました…
申し訳なかったです…」
一気に話して言葉を区切った飲み物はもう空になった
「あぁ、あの氷の事件のことか…
あの時のことで覚えているのは門のところで衛兵に刀を抜かれ追い返されるふびんな少女のことだけだ。他のことは一切俺は知らされていない。 被害の大きさも、なにもかも…」
彼は立ち上がり空になったコップを私の分まで捨ててくれた
「俺もあの少女を見て父上にお願いに走ったが、ダメだった
『魔女が来る。ちゃんとしろ。お前には関係ない』そんなことばかり。
息子である俺でさえその態度なのだ、きっとお前のお父上の願いなど届くはずもなかったのだろうな…。いや、ルリアが謝ることではない。謝るのは此方側だ。父上になり替わり謝罪しよう」
そういうとヴェルノ様は私の前で頭を下げる
「俺は父のようにはならない
だからお前たちの気持ちはすべて隠さず伝えてほしい」
…あぁ、本当に…この人は…伝えた言葉をきちんと受け取って、王子様なのに一市民にまで頭を下げてしまう
伝わる。届く。それがたまらなく…嬉しい
「…ヴェルノ様…。…有難うございます…。頭を上げて下さい。今の王様もちゃんと国の為に動いてくれてます。国を守ってくれているから戦争がないんだって…父は言ってました
…子供の私には…あの時は一杯一杯で…。今みたく考えれなくて…
そういえば私も…その時門番に剣を向けられて逃げました…。偶然ですね、何だか」
ヴェルノ様はどこか嬉しそうな表情を見せ、すぐ側にある噴水の縁に腰かける
「そうか… ん?あぁたしかに…お前と似たものがいたということだろうか?
皆考えることは同じ…か?」
まぁあの時は大変だったし…同じような人はいくらでもいたのかな…?
「そうですね…。似た考えの人はどこにでもいるのですね… まさか本当に私…とかは流石にないですよね」
いくら世間は狭くてもそれは…流石にないと思う…
「どうだろうか…遠目であったからあまり覚えてはおらぬのだが、桃色の髪に青色の瞳で必死に衛兵にしがみついていたのは覚えている
もしそうだったのなら、俺に国を変えたいと思わせたのはルリアということになるな!!」
ニシシッと笑いながらそんな恥ずかしくなるような事を言う
思わず感じた恥ずかしさを誤魔化すように口を開く
「…当時は確か二つ結いしてて…服は…おぼえてないですね。何だかそれ…本当に私みたいですね」
「ぉう、そんな感じだった気がするが…いかん、思い出せぬ。 まぁあれだ、とりあえずあれはルリアだったということにしよう
俺が決めた。異論は許さん」
エッヘンとしながら決めつけてしまう
そうかもしれない、違うかもしれない。でもそうかもしれない
ならそれは、とても凄い事だと思う。そんな偶然があって、今こうして話す友人になってるなんて
「は、はい…!分かりました…!ではそうします…!…だとしたら素敵な偶然ですね…。私がヴェルノ様の切欠になれたなら嬉しいです…!」
「あぁ、俺もお前がきっかけでよかったと思っている」
…この人こういう一面をもっとフローリアさんに出せたらきっと成就…する…と思う…多分…
フ、フローリアさんもきっとヴェルノ様のこと大好きだし!うん!こんなに相手に嬉しいって気持ちを与えれる人なんだから本当叶って欲しいな…
まぁ今は置いておこう
続く言葉を話すべきか少し考えた。けどきっと必要な話な気がしたから話を続ける
「…えと、少し話は戻りますが…氷の大地の事件…被害は…大きかったですよ?麦の主な収穫地で…保管もしてましたし…。結局国土の五分の一被害受けたと聞きました」
「5分のッ??!そ、そんなに…」
「え、えぇ…。その程度は…」
この先の一言を言うのには勇気がいるでも相手がいい人なのも分かってる。友人と言う立場に甘えてみる事にした
「…失礼ですが…ヴェルノ様って…その…色々知らないの…ですか?」
「俺はその…あぁ 父上はお前には関係ないと何も教えてはくださらなかった
言ったことがあるかわからぬが俺は国へ居た時、城から外へは数えるほどしか出してもらえたことがない
だから皆がどんな生活をしているのか、どんな場所があるのか…国のことも民のことも何も知らない…
俺が知っているのはこの力だけ、魔法だけ…」
彼は失礼な物言いの私に怒らずそれどころか知らない事をぎゅっと手を握りしめて苦しそうにする
そんな風に苦しくして欲しくなくて…私は目の前に移動した
膝をついて座り目を合わせ、固めた拳を手で包んだ
「ヴェルノ様は沢山、知ってます
そうやって、考えてくださり、友人の為にその身を呈し、そちらから歩み寄ってきて下さり…今もこうして知ったことで悔やんで下さる心を知ってます
ヴェルノ様は素敵なご友人だって沢作る方法だって知ってるじゃないですか。一緒に反省文書いたり、喧嘩出来たりする相手、貴方に友人が必要なんだって心配して下さる…素敵な友人だっていて…人を愛する心知ってます
力は、人を助けるためにだって使える物です。それを知ってるじゃないですか
”それだけ”なんて全くありませんよ?」
笑顔を作り手を開かせる
「拳を固めるのは攻撃する時って言います。今のヴェルノ様だったらこうした方がきっといいかと」
そう言って開いた手を自分の手と繋ぐ
「頼ってください。今度は私も力になりたいです」
「ありがとう・・・・・・・・お前は本当によい友だ
お前が俺に心を開いてくれて本当に良かった。ルリアの言葉は俺の心を支えてくれる。頑張ろうと思わせてくれる、まるで魔法みたいだッ」
嬉しそうに目を細めてそんな事を言われた何だか恥ずかしくなって顔が思わず熱くなって何となく手を離した
…同時に前にステイリーさんに自分の言葉を優しい魔法と言われたのを思い出しさらに真っ赤になってしまう…
自分の言葉が誰かにとっての優しい魔法になってくれるのは…それはとても、とても嬉しい
「あ…いえ…そんな…。さ…支えになれるなら嬉しいです…」
「お前のような友がいて、俺はとても恵まれているな」
「…私も、ヴェルノ様が友人で恵まれてます…!嬉しいです…!」
「まぁでもこないだまでは友にすらなってくれなんだがな」
…根にもたれてた…
「…ううぅ…。それは…申し訳なかったです…。でも言う事ないじゃないですかー…」
思わずちょっとジト目で睨んでしまう…良いこと言ってたのになぁ…本当…
一回咳払いして場を仕切りなおす
「えと…楽しくない話ですが…知りたいですか…?田舎の…都会以外の私が過ごして、見てきた現実を…」
「あぁ。今後の俺はその情報が必要だ。どんなことでもいい。今の国の情報が知りたい」
私も噴水の縁に座った噴水の水の冷たさが心地いい
「…ではお話します…
私の村はコルカと言う名前で…小麦や果物、農作物を主に作る普通の小さな村です
小さなおかげか昔から皆で支え合っていて…貧しい状態の人がいても食べ物もないという事はなかったですね。そこは村によるかと…
そして珍しく医者のいる村です。さっき言いましたがその医者が私の父です。父は元々都会人でした。祖父母が魔法優秀で医者をやはりやっていたとかで。あ、父は生れつき魔法が使えません
…もう亡くなった母が…まだ私程度の年齢の時伝染病が流行ったそうで。その時皆都会まで医者にかかりに行くお金もなく沢山の人が死んだそうです
田舎に医者は普通いないです。これは今も現実です 食べ物は作るからさして困らなくとも基本的に皆貧乏です…。私のうちは医者ですから私は田舎の割には裕福で…例外です…」
そういう風に言うと本当に私は恵まれた環境に生まれたんだなって思う
「母は医者になろうと都会に行き父と恋をして父がこっちに来てくれました…。近場の村の人達から、馬車で数日かかる距離の人まで来る人がいます。…休みなんてほとんどなかったです。毎日手伝って…
私は痛感しました。力がなくては…誰も助けれない…と 魔法治療の力が欲しくなりました。でも素質は通らず…医者になるための学校は流石にお金が高すぎまして…。私はたまたま学園に入れたから良いです。けど、そんな都合のいい奇跡ばかりじゃない…。今も医者にもかかれず、貧しく暮らす人は多いです
…お願いがあります。いつか…出来るなら多くの村にせめて医者を…と。知り合った病院関係者さんに頼みたくても…入国審査きついですし…」
「そんなことが…。俺は本当に何も知らないのだな…」
そう言って何かを考え込んでから彼は口を開いた
「俺はここを卒業したら国へ戻って父上に変わり本気であの国を動かすつもりでいる。だから必ずお前の願いをかなえよう。お前たち民は俺が守る」
”王子様”は強い意志を持ったそんな瞳でじっと私の目を見た
「…改革…ですか…?…辛い…戦いになるのでは…?あ、い、いえ…その…変わって欲しい部分も確かにあります…。のでそれは嬉しいです…!
あ、あの…!王族についてはあまり知らないですし…なんの力もないですが…私、出来る事あるのなら手伝いますので…!必ず…!」
私も負けないようしっかりと相手を見て力になる意思を伝える
「覚悟の上だ。父上にははっきり申し上げて向き合って戦わねばなるまい。 だがそうしなければ何も変わらぬ
そうだな、もし助けが必要になったときはルリアに頼もう。その時はよろしく頼む」
そうにっこりと笑っていってくれた一市民が力になるなんてたかが知れてるでも、それでも友人なら、何かの支えにはなれるのかもしれない
「…そう…ですか。はい…。私達が何を望むのか、それ位は言えるので…!頼りにして下さい…!お願いします」
ぐっと拳を握る
「他にはなにかあるか?もっとこうしてほしい、などはないか?」
そう言って懐から手帳とペンを取り出し、ほれほれ、と煽られる
きゅ、急に言われると浮かばない…!
え、えとえと…何があったっけ…!?
「え、えと…他に…
薬の代金がせめてもう少し手に入りやすければ…せめて予防薬位…とか…あ、あと都会に行くのが遠くて…汽車がもう少し…こっちまで来てくれると…とか…私の村は言った通り平和ですが、治安悪い村もあるので…警備とか…あると…
…い、今浮かぶのはこれ位です…!さ、参考になるでしょうか…!?」
彼はメモを取りながら考え込む
「ちょっと待てよ…
いや、待て、それくらいなら現段階でもなんとかできるかもしれぬ。医者はそもそもあまりおらぬ故難しいが薬ぐらいはなんとかできるやもしれぬぞ!
汽車か…金や人材が多くかかるものはいまの俺の力ではなんともできぬからそれは俺が国へ戻ってからだな。
あとは…警備…?うむ…軍事系統は父上に知られてしまうな…それもまた機会を見て、だな
うむ、実に参考になった
とりあえず寮に戻り次第俺の臣下のものへ連絡を取る。今の俺でも予防薬の配布くらいはできよう。あとは俺付きの医者に村を回させよう。
これで少しはなんとかなるか?」
どうだ??と首を傾げ問われる…
吃驚した。駄目元で言ってみただけの言葉が現実味を一瞬で帯びる…
本当に王子様なんだな…とかずっと感じてきたはずなのに現実味が一気に沸いた
「え…本当ですか!?薬なら!? だったらこれから寒くなる前にインフルエンザの予防薬…出来る分だけでも…!
交通は…行けない訳でないので…急いで欲しい話でないので…!
え、えと…警備も医者も無理なさらないで下さい…!本当は医者は頼みたいのですが…それでヴェルノ様に何かあった時お医者さんがいない方が困ります…!
…欲を言えば田舎に行っても良いという学園で勉強している人達が卒業後行けると一番良いんですけどね…
魔法薬も魔法医学もないというのは当たり前ですが…あった方がずっと救えますからね…
今はせめて薬さえ…何とかなれば…。はい。現状でも生き抜く術は持ってますし…私も村に出来るだけ薬は送ってますし…」
「よし、インフルエンザの予防薬だな・・・それくらいなら用意しよう! 俺は今此方にいて俺付の医者は今暇であろうからな。気に病むことはない
あぁ~…それに関しては一度国に戻って話せねばならぬなぁ…。そもそももっと我が国は魔法に関して視野を広げるべきなのだ…さすれば魔法医療の方も発達するはず…
時間はかかるだろうが俺が何とかしよう!
まぁとにかく医者の巡回と予防薬の配布はまかせろ。準備させておく。
っとこんなところか??」
「…宜しく…お願いしたします…!本当に…本当に有難うございます…!」
頭を深く下げる。目頭が酷く熱い
涙をなんとか堪える
「…ここで勉強して思いましたがやはり魔法医療はあった方がずっと便利ですね…本当に
…私お世話になってばかり…ですね。何かお返し出来たらいいのですが…」
「お返しかぁ……では今度俺にケーキの作り方を教えてくれるか?フローリアの喜びそうなふわっふわなおいしそうなケーキだ!あれが作りたい!」
「え!?料理ですか…!?」
ダークマターをうっかり思い出し頭を振る
いやいや…折角の頼みなんだから…引き受けよう…!…あ、でもこの前ステイリーさんを妬かせちゃったばっかりだし…。その気が無くても私だって女の子と二人でステイリーさんが料理してたら…もやもやしそうかも…
どうしたら…あ、そうだ!
「だったらフローリアさんも一緒にどうです?
一緒に料理は仲良しになりやすいと思いますしシチューのやり直しもしたいですし!…そうです!どうせならロニヤさんにも講師を頼んで…リュンヌさんと料理やる約束もしてますし…みんなでアゲハ先生に教わりましょうよ!!」
それなら問題ない!うん!いいアイディアだ!
「ん?まぁ教えてもらえるのならなんでもいいのだが??うむ、ならばみんなで料理教室だな!それがいいな!」
「は、はい…!楽しみですね!…私、小さくても力になれるよう頑張りますから…!今後ともよろしくお願いします…!」
これは国民としてより、友達としての言葉だ
「あぁ、此方こそよろしく頼むぞ」
相手にもそれが伝わったのか、ぽんっと軽く私の頭に触れて、そして立ち上がった
「では俺はそろそろ行こう。国に連絡を入れねばならぬ。お前も早く寮へ戻れよ、そろそろ日が陰ってきているからな」
そう告げるとヴェルノ様はそのまま立ち去る
「は、はい…!ではまた…!」
振り向かず立ち去る背中に声をかけながら、撫でられた頭が何だかちょっとくすぐったくて自分で少し撫でる
…図書館によって料理の本を借りていこう…。アゲハ先生に許可も取らなきゃ…。うん、頑張ろう…!
友達が増える。それは世界が広がるという事なのかもしれない
お互いがお互い、力になれる関係になれるのなら…。それはとても嬉しい
私は友達にとってそういう人になりたい
髪に光る星を手に取る
この人にとっても私が支えになれてたら…
顔を上げて一人の道を歩き出した
この学園に来たばかりの頃は俯く事の多かった独りでの道
今はちゃんと前を向いて進んでいく
------------------------------------------------