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それはある日のこと、男子会というのが何故か行われた 
ぼくは好奇心が買って半分寝たりもしてしまったけど参加した 

その時会った人、双子の妹がいるというアリューテさん 
彼は物質の永続化の魔法の持ち主だった 

その時ぼくはその魔法に興味を持ってアクセサリーを作って貰う約束をしたわけだ 
で、今現在は…… 



「…ない…」 

広い原っぱの中、擦り傷を作りながら一人、その材料に使って貰おうと四つ葉のクローバーを探すのであった… 


ぼくはレティが好きだ。最近ようやく認める気になった 
身分差とか色々障害しかない気持ちで叶わないのは分かってる 
けど、それでも今はぼくが一番彼女の傍に居て、彼女に依存の感情ではあるが頼って貰えてる 

まだぼく達は未成年で結婚出来る年じゃない。子供とギリギリ言える年齢だからこそあと少し、一緒にいれる 
そうでなくなったら、彼女がレディーと呼ばれる年になったら 

きっとぼく達は引き離される 
彼女にふさわしい伴侶を探す年になった暁には、どれだけ両親同士が仲良くても、どれだけぼくを信頼して貰っていても、結婚は別だ。ぼくが絶対に邪魔になる 
単純に幼馴染の情だけでいれたなら…その先も彼女が相手を作っても笑って良かったじゃんとか軽く言えただろう 

けど現実問題自分の感情は変わってしまった 


いつかは 
けど、今は違う。それに甘えて少しでも、自分を相手に刻みこみたい 
笑って欲しい。喜んで欲しい 
一つでもぼくが与えた物を残して欲しい 

今から未練がましい事をしていて嫌になる 
自分でも良くないとはわかっている。けど気持ちにもう目をそらせない 

「…だからって…プレゼントとか安易すぎだし…」 

独り言をつぶやきながら止まってた手を動かす 
他の誰かの力を借りたくなかった 

気を取り直した所に邪魔は現れる 

「お?アズサではないか?どうした?こんな場所で一人で」 

…なんでこう嫌な相手に限って縁があるんだか… 
ヴェルノ=アルフォード 
自分の出身国の王子様にてレティの親戚 
彼女が…好きな人。…気にくわないのはようは単なる嫉妬というどうしようもない感情だ 

この人は分かってるのか大物なのか単に鈍感なのかぼくの態度を面白がってるようにしか感じない 
それがまた癪に触る 
そういえば今日はレティがお兄様とお茶するのと浮かれてた気がしてまたムカムカしてきた… 

「…別になんでもありませんよせんぱい」 

そっけなく答えてまた草むらに向き合う 

「何でもなくないであろう?何かを落としたか?それなら人を呼んで手伝うぞ?」 

遠慮するな?ん?と言わんかごとくの態度だ 

「…単なる探し物。放っといていいから」 

「…そうか。あまり暗くなるとレティシアが心配するからはやく帰るんだぞ?」 

その一言が善意とはわかってる。分かっててもカチンとくる 

「うるさい、さっさとあっち行って。そっちこそレティを待たせたら承知しないから!」 

…自分は何でこうも子供なのか…嫌になる 


時間が経ってきた頃、急に暗くなってどうしたのか空を見上げたら雨が降って来た 
勿論そんなの歌えば問題ない。ただ問題は集中力だ 
探し物をしながら歌うのは気が分散して効果が正しく発揮され続けると限らない 
…寒くなったら服の水をはじけばいいか… 

何て適当な事を考えてもう少し、と手を動かす 



「…っくし…!」 

もう何度目かの服を乾かし、探すの繰り返しの中、いくら小雨でも流石に体が冷えてきたらしい 
今日は諦めるか…と草むらを出た途端傘を持って走ってくるレティが見えた 

「…お嬢様…?」 

「もぅ!何してるますの?アズサってば!」 

何してるの?と聞く前に言われた 

「別に…そっちこそどうしたのさ?傘なんて持って走って」 

「お兄様から聞いたの!アズサってば傘も持たずに一人草むらで探し物してると!」 

…あの阿呆め…!! 
誰にも言うなとは言わなかったけど 

…ふと気付いて手持ちの時計を見ると約束していたという時間からさしてたっていない 

「…お茶するんじゃなかったの?なにこっち来てるのさ。今日は用事あるって予め言っておいたよね?」 

…一緒に居るのをみたくないとか下らない理由を内に秘めて、だからと言ってあからさまに邪魔する気にもなれなくて 
用事があるから今日は一緒にいれないと先に納得させておいた覚えがある 

「何言ってますの!アズサが雨の中一人で探し物してると聞いて放っておく主じゃありませんわよ!?」 

どう?偉いでしょ?偉いでしょ?と言わん如くのドヤ顔… 

「…ばかじゃないの…?」 

「もう、バカはそっちじゃないですの!?雨の中探し物なんてそんな大事な物ですの?」 

「…違うようなそうなような…」 

疑問符の表情を浮かべる彼女を直視出来ない 

だってぼくは知ってる彼女が今日に向けて一生懸命部屋を整えて、衣装を用意して、とても楽しみにしていた事を 
それなのに、ぼくを探しに来る方を優先させてくれた… 

それが嬉しいなんて… 

「…大事な物になって欲しいんだ…」 

彼女の肩に頭を乗せて小さく呟く 

「え?なんですの?風邪でもひきました?アズサ?」 

何と言うか…本当人の気を知らないお嬢様だよなぁ… 
それでも愛しく感じてしまうんだから手に負えない 

「何でもない」 

頭をあげて軽く笑う 
ふに落ちない顔を彼女はしていたけど心配ないの?と首をかしげるから頭を軽く撫でた 

「ま、今日は引き上げるよ。帰ろう、お嬢様」 

「あ、待って!ほら、傘一緒に入りましょう?濡れますわよ?」 

「…却下。歌いながら帰る」 

…普通に考えれば美味しい状況だろうけど今は心臓が持たない 
第一何で迎えに来ておいて傘が一本なのか…やはりこのお嬢様はあほな気がした 

「あ、では私も歌いますわね!」 

二人で歌いながら雨をよけて帰った道はとても楽しかった 
その後アズサも一緒にお兄様とお茶しましょう?と言われたのには全力で却下をしたけど 



後日 
ようやく見つけた四つ葉のクローバーをアリューテさんに加工して貰った 

「四つ葉のクローバーか…自分の物にしたい子にあげるの?」 

思わず飲んでたお茶を吹いた 

「げほ…!な、な、なに…それ!?」 

「あ、知らない?花言葉でね、一般的なのは幸運。でも私のものになってって意味もあるんだよ」 

…もの凄く渡しにくくなった… 
彼がデザインしてくれた王冠についたクローバー… 
デザインは王族のレティがつけてもおかしくないよう高貴な雰囲気をリクエストしたので問題ない 
問題ないけど… 

「あ、御免ね。友達にあげるなら普通に幸運と思えば大丈夫じゃないかな?」 

「う…うん…」 

要らぬ情報を聞いてしまった… 



それでも割と苦労して見つけたクローバーに手をかけてくれたアリューテさんの為にも渡さずにはおけない… 
適当にみつくろったラッピング用品で普通に箱に入れてリボンをかけたこれ 

渡す言い訳はもう決まってる 
彼女の部屋の前でノックをする 

「お嬢様、入りますよ?」 

「あ、もう少し待って…!あと少しですから」 

「了解」 

今日はレティが新しく新調したドレスの試着日 
ぼくはそれを知ってるから扉の前で待つ 


「…お待たせしました!どうです?アズサ!」 

終わるや否や部屋から飛び出してくる 
…このおてんばもその内なおさないとな…と従者心で考えその姿に思わず言葉をなくす 

ドレス姿なんて今さらだ。なのに着飾った姿に見惚れるなんて…これが…盲目になると言う事なのだろうか… 
何だかそれも嫌だなぁ…とか考えていたら不安そうにレティがぼくを見る 

「あ、えと…うん、似合う」 

彼女はその一言で分かりやすくぱぁっと顔を明るくしてニコニコ笑った 
…くそ…可愛いとか思うのがなんだか悔しい… 

ぼくは覚悟を決めてプレゼントを差し出した 
ちなみにレティのお付きの衣装用意する人に予め髪飾りだけは用意させて欲しいと言いくるめてある 

「…これ、アリューテさんが作ったやつだけど…新調したドレスにあうんじゃない?身だしなみ整えるのも仕事なんだからね?」 

なんていつも通りの減らず口 
内心は気に入って貰えるか緊張している 

レティは嬉しそうに箱を受け取りリボンをほどいた 

「わぁーーー可愛い、すごく素敵ですわ!つけるのもったいないですわぁ!!キラキラぁーっ!クローバーも素敵!クローバーの花言葉ってなんだったかしら?いやもうそんなこといいですわ、わぁーわぁーっ」 

ぴょんぴょん跳ねながら大喜び 
…良かった… 
って花言葉知らないのか…。良かった…。い、いや、そっちの意味で勘違いされても困るし… 

「アリューテさんにありがとうっていわなきゃですわ!」 

「…そうだね…」 

「アリューテさんは凄いですわね!こーんな素敵なの作れるんですから!」 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぼくも苦労したけど・・・・・・・・・? 

「…そうですね!」 

「どうしましたの?アズサ。カルシウムが足りてませんわよ?」 

・・・・・・知るか・・・・・ 

「いいえ?どうぞお礼は彼にまで!気に入ったなら使えば良いしそうでないなら使わないでも良いし」 

そっけなく言いきって顔をそらす 

「もう、アズサってば急に拗ねるなんてどうしましたの?子供みたいですわよ?」 

…この人はわざとか…?わざとか…!!?? 

「べ・つ・に?兎に角煮るなり焼くなりあとはお好きに」 

決して壊れない魔法がかかってるからそうしても意味はないのだけれど 

「まぁ、そんな事しませんわよ!ちゃーんと大事にします!」 

「…それずっと色あせないからちゃんとってずっとになるけど?」 

「あら、そうですの?だったらずっと使えるのですね!それは素敵ですわ!」 

…ぼくは自分が思う以上に単純だ… 
ずっと使ってくれるなんてありえないかもしれない。でも、そう思ってくれる。それだけで報われる 

例えその冠をつけている時ぼくが近くにいれなくても、彼女にぼくが贈った幸運が近くにあってくれるなら、それでいい 

「本当、どこまでレティが物持ち良くなれるか次第だからね」 

「あ、私物持ちは良いのですわよ!?アズサの意地悪!」 

「…知ってるし」 

小さな頃にあげたぬいぐるみを未だに持ち続けてるんだからそれくらい分かる 
だったらこれも、大事にして欲しい 

もう一つの花ことばはきっと叶わない 
けどせめて、彼女に永く幸運を与えて欲しい 

そっと贈り物に祈りをこめた

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