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「さぁ!アズサ!イースターエッグを探しますわよ!」 

と午前の講義が終わった後迎えに行ったら幼馴染のお嬢様は開口一番そう言った 
まぁ朝から張り切っていたし行くとは思ってたけど 

「気合い入れすぎて空回りしないようにね。で?レティの柄はどんななの?」 

「もう!そんな小言ばっかりじゃ楽しいイベントも楽しめませんわよ!ふふ、私のはね、これですわー!」 

生徒に配られた各自の卵の絵柄の用紙をぼくに見せびらかす。真っ赤な色で金色のラインが入っていて青い蝶がいる。なんともレティらしい雰囲気の柄だ 
レティは目線でアズサのは?アズサのは?と聞きたそうにそわそわしてる 

「ぼくのはこれ」 

水の中で花と蝶が描かれてる。自分らしいとは思ったけど…こんな凝った絵柄を全員分やってたなら…その作者は今頃手が腱鞘炎じゃないかと心配になる 

「へぇ~。アズサらしいですわねっ」 

「レティもね」 

なんかイベントで楽しみ!以上にレティがニヤニヤしてる気がする… 
こういう笑顔の時は大概ろくな事にならないのは 

「侍女達がね、アズサに素敵な衣装用意してるんですって!」 

「さて、ちゃちゃっと移動しようか、レティ」 

逃げようとするぼくの腕を彼女はしっかり笑顔で捕獲する 

「ふふふ、アズサがどうなるのか楽しみですわ♪」 

…どうせ、ぼくはレティに甘いし弱いよ… 



兎耳を付けられ渋い顔しながら学内を回る 
…レティみたいに女子なら可愛いんだろうけど…。いや、男でもわりと今日はつけてる人いるしおかしくないんだろうけど… 

「さて!まずはどこから探します?」 

「どこでも…。とりあえず光らないか試してみたら?」 

「そうですわね。んー…!」 

実行はしてるみたいだけど光る様子は…あ、早速発見? 
でも光が見えた場所を探してみたらレティのじゃなかった。そりゃ他の人も探してる最中だしそういう事もあるか 

「周りにはなさそうだね。どこから行く?」 

「早々に見つかったらつまらないですものね!じゃあまずは~あっち!」 

絶対適当に指したであろう方向に歩き出す 
そうやって生き生きしてる姿は…ちょっと可愛いとか思ってしまう自分が大概…痛い… 

同じように探してる人に会って話してお菓子交換したりしたりとしてたらぼくの卵は図書館にあると情報が入った 

「ぼくのは見つけやすい場所にあったみたいだね」 

「そうみたいですわね。どうします?先に取りに行きます?」 

「いいよ、場所が分かってるなら卵って持ってたら割りそうだし。レティの探しちゃおうよ」 

なんか笑顔でニマニマされた 

「…何?」 

「いいえー。ちゃんと見つかるまで一緒ですわよ?」 

…なんか顔が熱いのが負けた気分になって癪に障った 

「…そりゃーね、レティは目を離すと暴走しそうだし?ぼくがちゃんと監督しないと危なっかしいし」 

「私そんな暴走しませんことよ!もぅ!」 

頬をぷぅっと子供っぽく膨らませるレティの頭を軽くポンと叩いた 

「はいはい…って…」 

ふと気づくと目の前にはニヤニヤ笑ってるアゲハ先生がいた… 
ゲッと言わなかっただけ耐えれたと思いたい… 

「はろはろー。ハッピーイースター♪リア充満開なお二人におねーさんからお口の恋人を進呈しましょう。」 

とお菓子を差し出してきた 

「わぁ!アゲハ先生のお菓子は美味しいって評判ですのよね!嬉しいですわ!」 

「…どうもアリガトウゴザイマス」 

「ふふふ、美味しいのはお菓子だけじゃないのよ?そういえば、ある筋からの情報によると、アズきゅんの卵は住所特定されたみたいね。 
それは教師として是非ともガン見チェックしておかないと。 
なんかめっちゃファンシーな柄だったりしたらオイシイわよねぇ(´ε`*)ネタ的な意味で!」 

と何か聞き捨てならない台詞を言い出した 

「ちょっと!?普通の水中の絵柄ですからね!?見てどうするんですか!?」 

「ふーん。でもおねーさん、自分の目で見たものしか信じない主義だし? 
  普通の水中の柄なのに、なんで動揺しているのかなぁ?余計気になるよネ!」 

流石のぼくでも先生相手に何か変な事されそうな予感がしたとか言えるわけがない…! 
怒鳴りそうになるのをぐっとこらえた 

「…いえ、別に…みるだけなら構いませんよ…。見る『だけ』なら、ですからね!?」 

…あれ?これ何かフラグを自分から立ててないか…? 

「アズきゅんの卵はおさわり禁止ってことね。 
  別に良いわよー。相手は”食材”だもの。手を触れずとも…ねぇ? (´゚ω゚)」 

「いや!もう中身抜いたんですし食材とは言えない状態なのでは!?」 

「卵の殻はまぁ普通は食材扱いにならないけど、栄養価は高いのよぅ。 
  だから粉末にして離乳食に加えたりするの。 
  つまり、ギリ食材カテゴリーよ。良かったわね☆」 

「…殻が食材なのは分かりましたが絵まで塗ったイースターエッグは食材とはもう言えないと思います…!」 

「へぇ!卵の殻も食材だったのですわね!私初めて知りましたわ」 

レティはレティでずれてるしー!!! 

「レティ、もう行くよ!先に図書館寄ってくからね!」 

「え?もうお話は良いのですの?」 

「良いから!」 

「じゃあね~お二人さん♪イベントイチャイチャ楽しんでね♪」 

「イチャイチャですって、アズサ」 

期待した目で見ないで欲しい…! 

「イチャイチャしない!ほら!行くよ!」 

ぼくはレティの手をとって強引に進みだす 

「あ、ちょっと!先生またですわ~。お菓子有難うございましたですわ」 

手を振って見送る先生横目にぼくはずんずん先に進んで行くのだった 



そして少しして先生が見えなくなって図書館が目の前になってぼくは手を離した 

「…痛かった?ごめん」 

あれ?普通に謝ったのになんか不満顔されたんだけど 

「それは大丈夫ですわ。でも手はこのまま!」 

そう言われてぎゅっと握られる 
…なんか…意識してやられると恥ずかしいような… 

「全く…相変わらずお子様なんだから…」 

そう言いながら手を振りほどけない自分が大概だ 

「あら?そんな事ありませんわよ?アズサのがお子様なんじゃなくて?」 

どーのーくーちーがー!! 
と言いたくなったのを全力でこらえた 
よし、我慢できたぞ!少しは成長出来た!自分! 

卵は館内に入って本当にすぐに目に付いた 
一応念のため光らせてみたら光ったし間違いない 

「はいはい。…あったね。とりあえず回収っと…」 

「へぇ、アズサの柄直接見ると本当に綺麗ですわね」 

「そうだね。絵描いた人普通に尊敬する」 

そういいながら握られてる手を意識しすぎないよう平静を保つ 

「では次は私のですわ!頑張りますわよー!」 

「はいはい」 

そう呆れたようにため息をついて先に突っ走るレティに引っ張られた 


ずっと後に知った話だけど 
この当時レティはもうぼくの気持ちも、自分の気持ちも気付いていて 
彼女の気持ちに気付いてなかったぼくのがお子様だったと知るのは…まだ先の話 


そしてぼくの卵には…レティの姿が暗闇で光って浮かびあがるようなってると知ったのは…翌日の話だった… 
あの先生いつの間に…

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