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…あれ?ここはどこ…? 
何をしていたんだっけ…? 

ショーウインドウに映る私は10にも満たない子供 
私…私は…どうしてこんな場所に…?うまく思いだせない… 

知らないまちなみ、知らない服装の人たち 
…一体どうなっているの…?ひょっとして…わたし…まいご…? 


「…お父さん…?おとうさーん…?…っく…ぐす…」 

知らない場所なのにお父さんと来てる訳じゃないのかな…?私おうちに帰れるの…?こわいよ… 

「おかあさーん…たすけてー…」 

死んで居なくなったお母さん。それでも助けて欲しくて呼んでみる 
けど何度泣いても会えなかったようにやっぱり会えない 

「…えと…迷子かな…?」 

知らないお兄ちゃんが私に話しかける 
でも怖くて怖くてそれどころじゃない 

「うぅ…ひっく…ぐす…」 

「うーん…そうだ!」 

そのお兄ちゃんはゲームがいっぱいあるにぎやかなお店に駆け寄った 
一つのゲームにお金を入れて何かの杖を握る 

「・・・・・・・????」 

思わずじーっとみてみる 

「エクストラギャラクティックストーム!」 

お兄ちゃんがそう叫ぶとその杖から何かが飛び出してその先にある的に当たった 

「!!!ええ!!!な、なぁに!?今の!?」 

「よし!取れた!」 

お兄ちゃんは可愛いピンクのハートの風船を手にして戻ってきた 

「…なぁに…?」 

「これ、あげるから泣きやきやみなよ!」 

……ええええ!!?? 

「…だ、だめ…!知らない人から物貰っちゃいけないのー!」 

お兄ちゃんはしゃがんで私と目線を合わせる 

「僕はステイリー。君は?」 

「…ルリア…です…」 

「ルリアね、うん、よろしく!」 

「よ、よろしく…?」 

「…これでもう知らない人じゃないよね?」 

…そう…なのかな?お名前知ったら知ってる人…か…。うんそうだ 

「…うん」 

「じゃあ、はい。どーぞ!」 

迷ったけど、可愛かったし欲しかった。だから手に取った 

「………ありがと…」 

ふわふわしてる風船。とっても可愛い… 
それにさっきの、不思議だった 

「お兄ちゃん凄いね…!ぎゃらくてぃーって…!」 

「へへーまぁね!」 

お兄ちゃんは得意げに胸を張る 

「う、うんうん…!さっきのあれなぁに?…もしかして…まほう?」 

「魔法だよ。?ルリアは魔法使えないの…?」 

む… 

「ふ、ふつう使えないもん…!!まほう使いは都会の人だけだし…じゃあお兄ちゃんはトカイジンなんだね!すごーい!!」 

確か近所のおばちゃん言ってた!優秀な魔法使いなら都会に住めるって。そーおうの仕事も生活もあるって 
このお兄ちゃんはそうなんだ…! 

「都会人…?」 

「そうだよー。…あれ?じゃあここは…都会…!?いつのまに…!?わ、わたし帰らなきゃ…!」 

都会にはお父さんの買い物につきあってきた事あったけどすごい遠くて…いつ来たのか覚えてないなんておかしい。けど知らない景色と魔法使いって事はそうとしか思えない 

「え、あ、ちょっと帰り道わかるの?」 

えーと確か… 

「え、えとね、北に行く列車に乗ればいいの…!」 

「北って…」 

そうとわかれば動くべし!そう思ってポケットをあさってみた 
けど… 

「おかね…ない……」 

また涙で視界が曇ってくる 

「…おとうさーん…」 

「わゎっ!泣かないで!」 

「わ…わたし…なんでここに居るのか…わからない…よぅ…。帰りたい…」 

「えー…お父さんは一緒に来たんじゃないの…?」 

「…わからない…」 

「こ、困ったな…」 

こまる…か。お父さんはこまってないのかな… 

「おとうさん…わたし…いなくても…わかってないと思う…」 

「どういうこと?」 

「だって…一緒にいてもおはなし…しない…。お父さんはお仕事のことしかおはなししてくれない…」 

「………そう、なんだ」 

だから、はぐれても探してくれてるのかわからない 

「…わたし、いてもいなくても同じ…」 

「そ、そんな事ないよ!」 

私は首を大きく振る 

「力に…なりたいのに…届かないの…!お母さんがいなくなってから…ずっとそうだもん…!」 

一度抑えていた気持ちを口にすれば涙があふれて止まらない 
そう言えば私、こういう事言ったの初めてだ… 

「…だから自分で帰らなきゃ…。お父さんは忙しいし…お手伝いは…わたしにしか出来ないもん…!」 

「…お金ないんだよね…?」 

…忘れてた… 

「…うん。帰れない……」 

「えーっとどのくらいいるのかな?」 

「…わからない…」 

いつもお父さんが払ってるしな… 

「手持ちで足りるかなー…」 

こんな状況でもお腹がくぅっと鳴いた 

「…お腹すいた…。わたしこのまま…がしするのかな…?」 

「餓死って…!ご飯のお金くらい持ってるから!何か食べたいものあるなら言って?」 

…流石に初めて会う人にそんなのよくない…。やっぱり首を振る 

「だいじょーぶ…。わるいよ」 

「遠慮しなくていいって!じゃあ適当にかってくるから座って待ってて!」 

そう言ってお兄ちゃんは立ち去ってしまう 

「え!?ええぇ…!?…変なお兄ちゃん…」 

都会の人って田舎者には優しくないってよく聞くのに… 
お兄ちゃんは優しい… 


言われた通り椅子に座りながら風船をつつく 
つんつん、つんつん 
…たのしい… 

「お待たせ!」 

その手にはアイス 
とっても美味しそう。風船を椅子にしっかりくくりつけて受け取った 

「…ありがと…。いただきます」 

一口口に入れたら味わった事のない味がふわりと広がる 

「おいしい…!このアイスとっても美味しい…!」 

「良かった」 

お兄ちゃんも笑ってくれてなんだかすごい嬉しくなった 

「うんうん…!ありがとう!ステイリーお兄ちゃん…!」 

食べながら気になったことを聞いてみる 

「ねぇねぇ!お兄ちゃんは魔法使いなんでしょ!?何が出来るの?」 

「え、何がって…一応属性魔法は基本的なものなら…」 

「へーへー!じゃあお星さまは!?手に取れる!?」 

魔法っていうのは凄い力なんだからそれ位出来るのかも? 

「え、星?うん、一番得意ではあるけど…」 

す、すごい…! 

「見たい!!あのねお父さん言ってた!死んじゃったお母さんはお星さまだって!お母さんに会えるの!?」 

星が手に取れるってそういうことだよね!? 

「…えと…」 

なんでか戸惑うお兄ちゃん 
それでも私はわくわくしながらお返事を待った 

「僕のは魔法だから…手にはとれるけど… 
 お母さんには会えない…かな…」 

「…そっか…」 

…やっぱり本物の星じゃなきゃだめなんだ… 
俯いて食べ終わったアイスを包んでいた紙を折る 

「うん、ごめんね…」 

「ううん…ありがとお兄ちゃん。お兄ちゃんは優しいね」 

そう言って笑うとお兄ちゃんは考え込んだ。そして手のひらに光る星を出した 

「ちょっと熱いから気をつけてね?」 

言われた通り注意して星を手に包む 

お星さまってこんなにキラキラしているんだ…!こんなに…綺麗なんだ…! 
こんなに…傍で…見れるんだ…! 

「夜だともっと綺麗なんだけどね」 

「ううん!今でもきれい!!…お母さんじゃなくても嬉しい…!」 

「そっか…」 

「うん…!本当にありがとう…!」 

初めて手に取った星はとても温かくって、優しい感じがした 

「寂しくなったらいつでも見せてあげるよ」 

「…本当!?本当に!?…い、いいの…!?」 

「うん」 

胸がぎゅーって締めつけられた 
嬉しくて嬉しくて 
寂しくなったらいつでも、このお兄ちゃんが…星をくれる… 
それはとてもとても嬉しい 

「え、えとね…じゃあ…私はお礼に…」 

…何をあげれるかな?…あ、そうだ! 

「お兄ちゃんのお嫁さんになる!」 

「え…?!」 

「本当だよ!!」 

このお兄ちゃんとずーっと一緒ならそれはとても嬉しい 

「あ、う、うん。ありがとう」 

ありがとうって言ってくれた。…嬉しい…! 

「うん!!」 

って言った次の瞬間 
目眩がして頭がふわふわした… 

「…て…あれ…?」 

私…?『私』… 

そう、私はステイリーさんと図書館に来ていたんだ…それで…ついでに一緒に買い物しようとしてて… 
手を見る。お守り鏡を出して姿を映すといつもの姿 
目線も違う 

戻った… 
私、良く分からないけど小さくなってたんだ… 
…となるとやっぱり… 

「…す、ステイリーさん…?」 

…以外に居ないだろうけど… 
お、幼い…!可愛い…! 

「あれ、ルリアは?」 

呼び捨てにされて思わずドキっとしてしまう 

「わ、私がルリアです…」 

「ルリアが急にでかくなった…?!」 

あ、よかった。信じて貰えた 

「そ、そうですね」 

「何?とある機関に魔法で子どもにされてたとか?!」 

こんな年でも理論的に考えるんだ…ステイリーさんって 
…そういう事にしておこう 

「…みたいです…。す、すみませんご心配おかけしまして…」 

…これひょっとしてあれかな?前男の子になっちゃた時と同じ… 
あれ?ステイリーさんはいつ戻るんだろう? 

「いや、うん。いいんだけど…」 

「あ…アイス代金…お返ししますね…」 

「いーよ!ルリアに買ったんだし!」 

…可愛い… 
これが噂に聞くステイリーさんの中二病時代…。でも優しいとこは昔から変わらないんだな… 

「有難うございます…!ごちそうさまでした」 

「それよりもうちゃんと家に帰れるよね?」 

「はい。大丈夫です」 

「なら良かった」 

今より子供っぽい笑い方にドキドキする 
…昔はこういう笑い方してたんだ…。今じゃ大人びた雰囲気の笑い方だしなぁ… 

し、しかしどうやって戻してあげれば!? 

「え、えと…途中まで一緒に来てもらって良いですか…?」 

「大きくなっても帰り道わからないの?しょうがないなー」 

「す、すみません…!一緒のが…心強くて…!」 

とにかく今のステイリーさんを置いて行く訳には…! 

「駅で良かった?」 

…電車に乗ってしまう訳にもいかないし… 
え、えと…ヤマト先生に相談しよう!うん! 

「え、えとその前に用事がありまして…付き合って頂けると…」 

「わかった。どこ行くの?」 

…貴方が良い人で本当嬉しいです…!ステイリーさん…! 

「し、知り合いの先生のところに…」 

「ふーん?」 

嘘はそんなついてない…はず… 
とにかく先生に相談すれば道はきっと開ける! 

…しかしそれにしても… 
私…お嫁さんになりたい…って…。ち、小さくなっても…星で釣れるんだな…私…。ちょっと恥ずかしい… 

…元の彼には決して聞けない事が聞きたくなった…。今目の前の彼にくらい… 

「…ねぇ、私の方が年上になっちゃいましたがさっきの有効ですか?」 

「え?」 

「…お嫁さん…。貰ってくれます…?」 

「え…。えと…」 

目の前の彼は元のその人を思いおこさせるように真っ赤になった 
…相変わらずなんだな…。優しくて、出来ない約束はしなくて 
…だから大好き 

「…ふふ。御免なさい。聞いてみたかっただけです」 

「な、なんだよ!吃驚したじゃないか…! 
 それより行くなら早く行こう!」 

「はーい。…行きましょう!」 

風船を手にして立ちあがり二人で歩き出す 
いつもより近い目線。でもやっぱり彼のが背が高い 

本当は返事、欲しかったけど 
でも『今』はそれで良いのかも。それが私達らしい気がした。そんなある日の騒動だった 

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そしてのおまけ 

ステイリーさんは途中で元に戻った 

「…あ…」 

「えーっと…?」 

「も、戻りましたね…」 

…いかん、やばい… 
私が覚えてるって事は勿論… 

「覚えて…ますか…?」 

さっきの質問を、とは続けれなかった 

「・・・・・・・・・・・・・」 

その反応が答えであろう… 

「…あ、あの…忘れて…下さい…」 

顔が…熱い…。もの凄い…熱い… 

「こちらも…」 

「はい…」 

お互いもじもじしながらとにかくくすぐったくて、でも嫌な気持ちじゃなくて 
そんな事言いながらまた、お互い忘れられないんだろうな…とか考えるのだった… 


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更におまけ 
 


「…そう言えばようやく中二病時代のステイリーさんが見れました…」 

「…!!」 

小さなつぶやきだったけど相手の耳に入ったらしい 

「あ、いえ、その…気になっていたので…! 
 で、でも…ステイリーさんはステイリーさんでした…!」 

「穴があれば入りたいです…」 

「え?恰好よかったですよエクストラギャラクティックストーム!って」 

「やめてください!!」 

ステイリーさんは心底恥ずかしそうに真っ赤になって手で顔を抑える。な、何故…!? 

「えぇ!?素敵でしたのに…!」 

「いやいやいや!」 

…恰好よかったのに… 

「…もう言わないのですか…?」 

「言いませんよ…」 

「…そうですか…。ちょっと勿体ないですね…」 

ルスさんから聞いたゲームセンターの二つ名、流星のステイリー!その姿をやっと見れたのに… 

「・・・・・・・・・」 

あ、しまった!無言にさせてしまった…! 

「す、すみません…! あ、あのですね私その…どんなでもやっぱりステイリーさんを好きになったものでして…」 

…うん、自分で言ってて恥ずかしい… 

「はい…」 

相手も私の言葉を思い出しているのかやっぱり真っ赤で… 
互いにさっきから真っ赤にしかなってない… 

「…これは…お互いつつかない方が身のためですね…」 

「…そうして下さい…」 

後は無言になった 

歩きながら考える 
結局お互いどの時に会ってもそれでも私は彼を好きになる 
それが分かって嬉しかった 


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そしてさらにおまけ


元の年齢に私達はその前の目的通りにスーパーに来て買い物をしていた 
ステイリーさんには私に付き合って貰ってる 

「ねぇ、ステイリーさん、その…好きな食べ物とか…食べたい食材とか選んでくれません…?」 

「どうしてです?」 

「その…今日のお礼!そうお礼に…今度のお弁当、リクエストお聞きします…!」 

料理の練習に付き合って欲しいと週に1-2回作ってるお弁当。そろそろ目新しいメニューも開発してみたい 
そしてどうせなら彼の好みにしたい 

「え、えと…ワンパターンにならない為にも意見が欲しくて…む、難しいのでも頑張りますよ!?」 

…ぐっと拳を握り締める私から目を逸らし何かあの先生に教わると…とか言ってる気がする 


「…ルリアさんの故郷の料理が食べてみたいです」 

少し考えて言われた言葉がそれだった 

「ええ!!…い、田舎料理ですよ…!?」 

「構いません。ルリアさんの故郷の味、教えてください」 

…私の味に興味、あるのかな…?そう思うとちょっと嬉しい 

「は、はい…!頑張ります…!」 

再度拳を握りしめ気合を入れ直すのだった 


材料を集めるのを手伝って貰いつつちょっと言ってみる 

「…渡すの新学期になりますが…でも…その…休み中でも会えるなら作りますよ…?」 

妙にドキドキ緊張しながら言ってみた 

「いえ、良いですよ。大丈夫です。休みの間くらいゆっくりしてください」 

…それは彼なりの優しさなのは知ってる 
だから素直に頷いた 


でも、休みの間も会う口実がちょっと欲しかったから残念で 
それならせめて、特訓しておこう。そう心に決めるのだった 

ステイリーがルリアの言ったことの意図に気付いたのはそれから暫く先だったとかなんとか 


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