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※これは囚人君シリーズの人様のキャラを使ったSSです。ご理解下さいませ





「こっち…? いやあっちか?」 

看守になりたて青二才 
自分の今はそんなところだ 

彼女が警察になる事になり、裏で生きてる奴らを同じく警官にしようと説得して回るのに手を貸している 
けどまだまだ自分には力も経験も足りない。あの人みたく誰かの力に、更生する為に手を伸ばしてあげたいのに 
なかなか出来てない自分がもどかしかった 

今日も罪が重すぎて一旦捕らえて罪を贖わせないといけなかった奴が来たが、向こうが俺の顔を知っていて話しかけられた時油断したせいで逃げられてしまった 
警察になれるなんて夢のような話を信じ切れず捕らえる為の甘言と思い込んでしまったんだ 

信じて貰う事の大変さを感じつつ歩みを進める 
これ以上手遅れになる前に彼を探してあげないと、その後の道すら下手したら続かなくなってしまう 
そうはさせたくない 
相手を助ける為に、恩人のようになる為に足を進める 


彼はいた。一人震えて目につきにくい、そういう人たちが多く住む場所に 
今は大分浄化されて昔より閑散としてる 
「ひ…!? 俺を捕まえに来たのか!? 俺は騙されないぞ!!!」 
彼はひどく怯えた様子で後ずさる 
「確かに捕まえには来たけど警察官の話は嘘じゃない。なんなら看守にでもなるか?お前だって知ってるんだろう?俺だって昔はここに居た人間だ。けど現にこうして看守になってるだろう?」 
そう言いながら手を差し出す 
「うるさい! そうやって皆俺を騙す気なんだろう!? 俺に寄るなぁああ!」 
疑心暗鬼に取りつかれてる相手は俺を、救いを拒むように拒絶をする 
諦めるのは簡単だ。見逃すのだって簡単だ。けどそれは出来ない 
「騙す気はない。信じて貰うのが難しいのも分かってる。けど…」 
どうやって言葉を続けようか迷っていたら相手は小さくうずくまってしまった 
「どうした? 体の具合でも…」 
そう言って近づいた瞬間 

【避けろ!】 

と聞こえた気がして、何でか体が反射的に動いた 

「チッ…!」 
相手はどうやって用意したのかナイフを用意していた 
…殺されるとこだったらしい 
「…これ以上罪を重ねたらダメだ!」 
「うるせぇ!俺は…やらないと生きてけないんだよ!!」 
更に続く攻撃にどうにか対処する 
「聞け!そうしなくても生きていける道が…」 
「うるせぇ!!」 

「貴方がうるさいのよ」 

そう女性の声が聞こえた瞬間相手の男の急所にためらいなく蹴りが入った 
「ぐ……!」 
「シオン!?」 
「随分甘っちょろく頑張ってるわね。こういう輩は一回黙らせるのが早いのに」 
他の駆けつけた警官に囲まれあいつはまた捕まった 

到着した警官たちと少し会話して喧騒が離れていく 
「…難しいな」 
「仕方ないわ。でも諦めないんでしょ?」 
「あぁ…」 
「…気負い過ぎないでね。話が通じない相手だっているんだから」 
「そうだな」 
「貴方始末書ものでしょ?帰ったら?」 
「…もう少ししたらな」 
「…そ。じゃあね」 
シオンはそれ以上深入りしないでさらっと帰って行った 

一度は冤罪を相手のせいでくらった 
けどもう彼女に関してわだかまりはない 
同じ人を大事に思っている。それがわかるから 

少し疲れてため息をはいてゆっくり歩く 


小雨が降りだす 
構わずに足を止めて空を見上げた 

「そこにいるのか…?」 

紡いだ声に返答がない。当たり前だ 
だってあの人は…もういないんだから… 
でも、さっき頭に響いた気がした声は、今にして思えば確かにあの人の声だった…気がする 
「…青臭いかもしれないし危なっかしいかもしれない。けど…貴方の意思を無駄にしない。俺は…頑張るから…」 
誰に言った訳じゃない。自分に誓うよう呟いた 

【頑張れよ】 

思わず振り向いた先には誰もいない 
けど 

「あぁ…」 
わずかに微笑んでそして目を伏せた 


きっと見ていてくれている 
そう考えた方が頑張れる。だからそれでいい。いつかまた会える日が来た時、堂々と胸をはれるように前に進もう 
俺がそうして貰ったみたく、今度は俺の力で誰かを救えたなら… 


そして少年の囚人に会うのはそれからもう少しだけ、先のお話だった

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