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ある日の天馬(グレン)寮、中庭のベンチの上 
そこで人形と思わしき物がプラチナブロンドの髪を乱し寝転がっていた 

その人形は突然前触れもなく静かに人の視界から消えた 
浮遊感を感じ、人形もとい、小人のポクロは目を覚まし顔を上げた。どうやら自分は見覚えない少女の手の上にいるらしい 
「ん~?なんじゃ…?誰じゃ…?お主…」 
目をこすり起き上がる。口調はさておき愛くるしい外見でのその仕草は傍から見れば十分可愛く見える事だろう 
「お人形さんが喋った……!」 
薄めの桃色の髪に金の瞳の少女はわたわたした 
「ん~?わらわは人形じゃないぞえ?小人じゃ!お主は…見覚えないのう」 
少女は小人と聞いて眼を輝かせた 
「小人さん……!あ、そういえばエリュテイア祭で見たような……!え、えと、クリア・クラールハイト、です。普段は見えへんから見覚えなくて当たり前かなぁ」 
ポクロはそれで合点がいった。学院のお祭りで透明なままの子がいた。この子がその透明な娘の正体?だったらしい 
彼女は少女らしい愛くるしさと小人と聞いて目を輝かすあどけなさを持った子らしい 
なかなか可愛い子じゃのぅ、とポクロは老婆心を発動させた。子供は嫌いではない 
「そうじゃ。わらわはポクロじゃ。そうか、お主があの透明な娘っ子だったのじゃのぅ。なかなか可愛い娘っ子じゃのぅ」 
「か、可愛いのかな…?あ、えっと、起こしちゃってごめんなさい。元の場所に戻った方がいい…?」 
「あぁ、お主は可愛いおなごじゃぞ。別に寝てただけだから構わぬ。なんなら人形にはなれぬが遊びたかったなら多少は付き合うぞえ?」 
自分を人形と間違えたのならいじってみたかったのかと思い提案をしてみた 
「ううん、誰かの落としものかなぁと思って学生課に届けようかと……ご、ごめんなさい。えと、良かったらポクロちゃんと少しお話したいなぁ、なんて……」 
「そうか。良い子じゃのぅ」 
頭に手が届かないから指をナデナデと撫でる。孫をいつくしむように 

改めて手の上に乗ったまま相手を見る 
「ええぞえ?何か聞きたい事あるかえ?」 
「聞きたい事……えっと、じゃあ好きな食べ物は?」 
「そうじゃのぅー…酒のつまみじゃのぅ。チーズとかイカの塩辛とか良いのぅ」 
ポクロはこれが全力で夢を壊す言動だと分かってはいる。けど嘘をつく理由もさしてないので正直に言っただけだ 
「チーズとかイカの塩辛……そうなんや~……え、えと……じゃあ趣味とか……!」 
「趣味か…そうじゃのぅ…。イケメンを愛でたりこうして可愛い子と話したり…丈夫そうな花を見つけてその上で昼寝するのもなかなか乙じゃぞえ~」 
「お花の上でお昼寝かぁ~親指姫と間違えられたりしそうやねぇ」 
「ふふん、わらわは可愛いからのぅ。そう思った人間もいるかもしれないのぅ♪」 
と自信満々に返す。彼女は自分の見え方をよく知っているのだ 
「あ、ここにいるってことは先生?それとも生徒さんなのかな?魔法何か使えるん?」 
「生徒じゃぞえ。専攻は錬金科で属性魔法はまぁ火と水をちょろっとだけは使えるが錬金の道一筋故それしか出来ぬの」 
「錬金……!凄いねぇ。どんなもの錬金してるの?」 
「壊れた物を直したり改造したり属性つけたりとかそういうのが得意じゃのぅ」 
「へぇ~そうなんやぁ。ポクロちゃん凄いんやねぇ」 
「ふふふん♪そうじゃ、わらわは凄いのじゃ!」 
そこまで話して相手の事が気になった。透明な魔法は常にかかってる。それは日常においてすごく不便に違いない 
「お主は…透明なままなのは呪術の類なのかえ?魔法を常時発動するには手間がかかるしのぅ…」 
ポクロは長年生きて来た勘から相手が望まずこうなってると当たりを付けた 
「うん、魔法解けないんだぁ。持ったものも身に付けたもの全部魔法がかかっちゃうし……あんまり周りの人に気付いてもらえなくて……」 
「そうか…。それは寂しいのぅ。うーん…どうにか出来る物はなかったかのぅ…」 
「どうにか出来る……?」 
ポクロは暫し考えてみた。流石に呪いは専門外だけどここにいるという主張が出来るだけでもかなり違うはずだ、と 
「うむ!居場所主張だけならいけそうじゃ!ちょっとそっちのテーブルにおろしてほしいのじゃ」 
クリアは言われるがままに素直におろす。手から離れた途端彼女の姿はポクロの視界から消えた 
「ふむ、本当触れてないと見えないのじゃの。それじゃあ寂しいじゃろうのぅ…。よしよし、ちょっと待ってるがよいぞ~」 
ポクロは思いついたアイディアのままに、錬金鍋を取り出し素材を混ぜてアイテムを作っていく 
昔依頼を受けた時に作ったアイテムがそのまま使える。一からアイテムを作るのは苦手だが以前作った事があるものなら難はない 

暫し煮込んでそれは完成した。シンプルな腕輪の形をしている 
「…よし!出来たぞえ!これを腕に着けて魔力をこめるがいい!要はお主に触れなければいいのじゃ!これならここにいるという主張は出来るぞえ!」 
「これを腕につけたらえぇの?」 
そうして腕につけ、言われた通り魔力を注ぐと体の周りに花が現れた。それを見てわぁ、と声をあげる 

「このお花は透明になってない?ポクロちゃん凄いねぇ!」 
「うむ!ちゃーんと見えとるぞぇ。ふふふ、わらわは凄いのじゃ!」 
幻術なので人の邪魔にもならず可愛らしい花は存在をきちんと主張してくれる 

「えへへ、これで授業の点呼で存在主張出来るね。うち、声小さいから点呼も苦労してたんよ。ありがとぉ」 
クリアはポクロの手を握り笑顔を向ける 
「うむ。やはり顔が見えてる状態で話す方がええのぅ。呪いも大変じゃろうが人と触れ合って話すいい機会と思って励むのがよい。…なんて年寄りの言葉じゃ」 
「あんまり喋った事ない子に触れるのって相手は嫌かなぁって思ってなかなか出来ないんよねぇ……でもこれを切欠にお話、頑張ってみるね」 
「相手によりけりじゃ。がやはり見える方が気持ちは伝わるぞえ?うむ。精進するがいいのじゃ!」 
うむうむ。と頷く。これ位は年の功で偉そうにしても許される範囲だろう 
しんみりした空気を切り替えるように言葉を続ける 
「ところでお主は透明の魔法を物に使う事は出来るのかえ?」 
「出来るよ~。一定時間経つと元に戻っちゃうけど……」 
「ではこの魔法石に魔法を使っていっておくれ。腕輪代じゃ」 
「え、腕輪代それでえぇの?えぇっと、これに魔法やんね……」 
クリアは素直に石に魔法をかけていく。ポクロはいつかこの透明な魔法を使ってなにか物を作りたいなぁと色々構想を始める 
「うむうむ。じゃああと19個頼むのじゃ。んー…後は…よし、暫くは主を食堂で見かけたら食事を少し分けて貰うのじゃ!それで代金全てじゃ」 
ちゃっかりしてる小人は決してタダでは済まさなかった。彼女は小人サイズしか食べないので食堂では後夜祭でペアだったアレックスしかり、色々な子にあの手この手でたか…食事を分けて貰っている率が大半だ 
「それじゃあポクロちゃん見かけたら声かけるね」 
「うむ。そうしておくれ」 
魔法がかけ終わる頃、予鈴が響いた 
「あ、次の授業始まっちゃう…!お話と素敵な物作ってくれてありがとぉ、ポクロちゃん。またお話しようねぇ」 
「うむ。達者でのー」 
見えなくなってもちゃんと手を振って見送る 
さて、自分も行かなくては。いつもの鳥の魔導具に乗って一気に空を飛んでいく 

わぁっと可愛らしい歓声がちょっと聞こえた気がした 

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クリア「小人さんの好物はチーズとイカの塩辛……っと(メモメモ」 

▼クリアは間違った知識を手に入れた!

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