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 魔導学院、とある日のラウンジ 
 何でもない日の一幕… 


 召喚魔法科の夜陣慈朗は魔導書に向かって一人、うんうん唸っていた… 
 そこへ同じ科の召古寛太がやって来る 
「はー…。また彼女が出来なかった…。召喚もなー、今度こそ可愛い子を!!って思ったら…ノア一人以上はまだまだやめておけって言われたし… 
 うん?あそこにいるのは…確か同じ科の奴か?おーい!どうした?腹でもくだしたか?」 
「む?…確かお前は…同じ召喚クラスだったな。何用か?」 
「おう。同じ召喚科。いや、お前がうんうん言ってるから腹でも痛いのかと思ったんだけど?」 
「む、いやな、このページの記述の意味がちょっとわからなくてな…調べても検討もつかなんだ。」 
「へー。どれどれ…」 
 慈朗は自分より後に学院に来た存在。寛太は先輩顔してみせようと本を覗き込んでみた。しかし理解出来なかった 
「…ってなんじゃこりゃー!先生に聞いた方が早そうだな、こりゃ」 
 先輩顔失敗で頭をぼりぼりかく 
 そもそも寛太もまだまだ勉強不足なのであった 
「むぅ、やはりそうか。これは相当高等な魔術書だったのだな」 
その実そうでもない。けれど二人にとっては難しいことに変わりはなかった 

 ふと、寛太は彼に聞いてみたい事があったのを思い出した 
 多分、だけど彼もきっとそうだと思ったから、これを機に思い切ってみる事にする 
「多分まぁ難しいんじゃないか? 
 あーあのさ?話ぶっ飛んで悪いけどさ、お前…現代人…つか日本人だよな…?制服だし…名前的に…」 
 これで違っていたら恥ずかしいが、やはり雰囲気とかがどうしたって同郷としか思えない 
「うん?ああ、そうか。お主もそうだったな。結構日本人?が多い気がするなこの学院は。」 
「ああ!やっぱそうか!そうか!良かった!こぉーんなファンタジーがマジにあるなんて興奮するよなー!すげーよなー!!」 
 仲間を見つけ寛太ははしゃいだ。現代日本人にとって異世界トリップは夢の現象なのだ
 そして慈朗もその言葉に反応して喜色を示す 
「だな!それに関しては神に感謝してもいいと思ったぞ!…しかし、現実は…は!いや何でもないぞ!俺様は結構いい感じだからな!!!」 
 と慈朗は何かを隠すように声を捲くし立てる 
「ん?なんだ?なんか現実問題にでもぶち当たったか?あー、それ分かるわー…。おれこっち来た当初即チートになれるって喜んだら違ったしなー。えーと確かジローだったっけ?俺の事は寛太でいいぞ!宜しく!!」 
 寛太はこの学院に来た当時は…ネット小説のように即開花してチートになって無双してそして‥ハーレムが築けると思っていたのであった…。今でもハーレムの夢は捨てていないが、ここは魔法があるファンタジー世界。でも努力なしに上達しない現実があるのは理解出来るようなっていた 
「…むぅ、同じ境遇だからな、なんでもお見通しというわけか、なかなかやるな…ええと寛太か。宜しく頼むぞ。あとジローではなく、慈朗、だ。」 
 慈朗は細かく突っ込みを入れた 
「そうそう。同じ境遇のやつがいるって分かるとなんか安心するなー。ここ未だに夢じゃね?とか思うけどそうじゃないみたいだしさ。え?つかどう違ったんだ?それ」 
「感じが違うのだ、イントネーションは大事だぞ?」 
 正確には漢字ではあるが 
「そ、そうか。おう。次郎?」 
「ちがーう!!それだと二人目かラーメンみたいではないか!!! 
 慈しむという字に朗らかの朗だ!!!結構違うんだぞ?」 
 慈朗はこだわるタイプだった模様だ。寛太は流石にたじろいだ 
「ええええ?!?!!?そ、そうか?えと?慈朗?これであってたか?」 
「うむ、それでいい。」 
「おう、つーかお前面白いな…」 
 ようやく正解で納得して貰えたようで一息ついた 

 そこへボブカットの黒髪の利発そうな少女、同じく召喚科の桜子がやって来た 
 彼女は何かを探すようにあたりを見回し彼らを見かけ近づいてきた 
「賑やかだな。話を割ってすまないが天牙を見かけなかったか?」 
「お―!桜子じゃん。天牙?見てないけど?」 
「む、ええとお主もその、日本人…か?というか天牙とは何者だ? ふむ、寛太は知っているのか。とりあえず俺は知らんな。」 
「ここにもいないか。せっかく団子を貰ったというのに。もう食べてしまおうか」 
「そういや俺桜子の名字しらねーや。日本人だよな?なんか俺より前の時代から来た?っぽい感じがしないでもないけど 
 まぁいいや。慈朗こいつ桜子。同じ召喚授業仲間でトリップ仲間な」 
 とまぁ、桜子とは前の授業からの仲でそれなりに話す間柄なので軽く紹介しておいた 
「ん?そうだな、日本人だ。天牙は私と契約した召喚対象だな。犬の妖怪だったか」 
「桜子殿か。ほうほう、犬…妖怪??大きいのか??」 
「昔は大きかったらしいが…。今も普通の犬よりは大きいな。あぁ、でもずっと犬の姿ではないんだ」 
「む?犬ではない???人の姿でもしてるのか?」 
「天牙はあれだよな……イケメンになるんだよな…」 
「人の姿をしている時の方が多いな。耳と尻尾はそのままだが。」 
「イケメン…か。つまりそうだな、ある程度力のある妖怪ということか。ふむ。」 

 一通り天牙について納得した後現在のメンツを慈朗は改めて眺めてみた 
「…なんというか、召喚クラスは日本人が多い印象だな…それとも日本人はここに集められるのか?」 
「なんかファンタジー小説にありそうな設定だな‥そう言ってみると‥」 
 寛太は無駄に読んだネット小説の知識で(帰ったらいきなり政府に捕まって力を使え!とかないよな…?ないよな!?!?)とか無駄な妄想をしていた 
「だな、こんな物語のような展開に自分が出会えて俺は感謝している。俺の時代が来た!と思ったぞ。」 
 そのセリフで我にかえって来た 
「そ、そうだな!俺の時代がキター!!って思うよな!!」 
「…やはりお主もか、寛太よ…!」 
 慈朗は感極まったのか、ちょっとウルウルしながらおもむろに寛太の手をがしっと掴む。 
 寛太もそれに返す 
 故郷より遠く離れた地で…同じ境遇、同じように考える事が出来る仲間がいたなんて…!! 
「おう、お前もか‥!慈朗…!!心の友よ…!」 
 謎の友情空間が発生した瞬間だったのであった 

「ところで二人とも団子食べるか?」 
 その間桜子は一人マイペースに団子を食し始めていたとか… 


「あ、俺団子欲しい。くれるならちょーだいな」 
「む、では俺も頂こうか、丁度小腹が減ってな。」 
 二人は気にせず遠慮なく団子を貰う 
「何か知らんが友情が芽生えたのか?良いことだ」 
「おう!芽生えた芽生えた!はー…日本茶が恋しい…」 
 団子と言えばお茶だ。それこそ日本人の心だ 
「しかし、団子はあるのか、つくづく不思議な学院だよな、ここは。」 
「お茶も探せばあるのか…?なんか無性に飲みたくなったぞ…」 
「団子に茶は必須だしな…」 
「だーよなー…」 
 団子もうまいがやはり水分がほしくなる。そして和の甘いものと言えばお茶。あの苦みで甘さをすっきりさせたい時もあるのであって 

「ええと確か教師にも日本人が居たような…?その教師に聞けばいいだろうか。」 
「え!?いたの!?!?」 
「だそうだ。確か来た時に日本人だからと紹介されたと思うぞ。ちょっとその気難しそうなその…中年?の男性だったと記憶してるぞ。」 
「どうせなら美味しい茶が飲みたい…」 
 と桜子はマイペースに団子を食し続ける 
「あー…もしかしていつも問題児に説教しているあの人か…?」 
 日本人気質が幸いしたのが言動があれな寛太も魔法的に問題を大きくおこしたことはなく、その先生の説教はくらったことはなかった 
「…そういえば、なんか気が付いたら説教してたような。確か召喚ではなく、変身魔法科だったはずだが。」 
「へー…先生って大変だなぁ…」 
「変身魔法科の先生か。名前は何といったかな…撫子先生だったか?」 
「ん?男で撫子なのか?それありなのか?」 
「あーなんか戦艦の名前だったか…?」 
 と桜子がおしいとこまで思い出してきた 
「あ、もしかしてヤーマートー♪か?」 

 そこへ同じく召喚科で日本人のフブキが入って来た 
 手にお盆をもって 
「…あ、居た居た。丁度日本人生徒そろい踏みね。日本茶を頂いたから故郷の味をおすそ分けに来たわ。」 
「ってうおおおおお!?!?噂をしたら日本茶がきた……だと!?!?」 
 ナイスタイミングすぎてオーバーリアクションで吃驚した寛太だった 
「…撫子とか戦艦って何?」 
「えーと日本人の変身魔法の先生の話してて名前が出て来なくて。もしかしてその先生から?それ」 
「そうね、ヤマト先生は日本人よ。私たちの後見人でもあるんだけども。 
 召喚クラスは日本人の比率が高いからって優先的に分けてくれたみたいね。まぁ異人街にいけばあるんだけどもね。」 
「おお!救いの神は居た!いや女神か!!!」 
 と慈朗は謎の感激をしている。 
「ヤマト先生か。どうにも関わりがないと忘れてしまうな…。有難く頂こう」 
 と桜子もありがたく茶を受け取る 
「そうかそうかー!丁度お茶ほしかったんだ!ありがたやー!!いただきまーす!」 
 そうやって受け取ろうとした時、うっかり寛太はフブキの豊満な胸元に目がいってしまった…。彼は健全なのであった 
「まぁすごいレアものってわけでもないけども、流通量はそう多くないからね、大切に飲みなさ…」 
 フブキは途中で視線に気づいて、一瞬沈黙の後にすごい冷たい目線でにらみつける。 
「うお!すまん!つい!!!!!」 
 と誤魔化さず、正直につい口を出てしまった 
「あ、桜子さん沢山貰ってもいいわよ。とりあえず約一名にはあまりあげなくていいから。」 
 そんな寛太にはさっそくの塩対応であった 
「いやー!まってー!!!いや、お嬢さんが可愛いしスタイル良いからついついなのー!!!」 
「…ふん」 
 フブキは視線をそらして不満げに鼻を鳴らす。 

「何がついなのかなー?おにーさん怒らないから正直に言ってみようかー?」 

 そんな阿呆なやりとりの中、どこから現れたのか一人の男が入ってきた 
「うわぉ!誰かきた!!いや、ついついこうちょーっとほよんとした部分に目がいってしまって!しょうがないだろ!俺男なのー!!!」 
 ここで多少は誤魔化せばいいのに寛太はバカ正直なのであった 
「…ルス!」 
 フブキは思わずと言った感じでそっと隠れるように移動するのだった 
「いやー!怪しい人じゃありませーん!君と同じ故郷の人間じゃないかー!!こっち来てプリーズ!!!」 
「…同郷とか思いたくないんだけども。まぁ野郎なんて同じよね大体。」 
「あーうん、わかる。男だもんな。わかるさ。でもな、見ていいの俺だけだから!」 
 キリッ!という効果音が聞こえて来そうな言い切りっぷりだった 
「ってルス!!!!んもう!!!!」 
 フブキは真っ赤になる。けどもまんざらでもなさそうな雰囲気がちょっとだけ混じる。
「いや、うん悪かった!悪かった!男はそんなと否定しない!だがそれは君が魅力的だからであってー!!って?え?なにそれ?え?その態度の差は!?ナニコレ!?!?」 


 そんな中 
「では遠慮なく…」 
 桜子はのんびり茶をすすっている 
「うむ、茶が美味いな…やはり団子には日本茶に限る」 
 と慈朗も枠外でのんびりというか関わらないようにしてるのであった 


「ま、さ、か……これは…リア充空間…!??!?!?! 
 ううう…リア充滅びよ…orz 美少女と恋人なんて…そんな羨ましいぞこんちくしょーーーー!!!」 
「真っ赤になっちゃって可愛いだろー。俺の彼女」 
 ルスも彼女だけ強調しながらそう言い放つ 
「う、ううう、んもう!!!バカぁ!!!!」 
 真っ赤になって、ルスの腕をぺしぺし叩くフブキ 

 もうこれは疑う余地もないほどの桃色空間であった 
「ううううううううううーらーやーまーしいいいいいいい!!!!!!俺だって彼女欲しいのに―欲しいのに―!!! 
 リア充空間だーーー!!!逃げろー!!おーれーだってーいつかは青春謳歌してやるんだーーーーー!!」 

 ……とまぁエコーを残しつつ寛太は脱兎した…と思いきや 

「げふげふ・・・の、のどにつま…だ・・・だれか‥たすk・・・・」 
 なぜ走りつつ団子を口に入れたのやら…。一人悶える声が響いた… 
「…は!あ、寛太!寛太しっかりしろ…!傷は浅い…!」 
 慈朗は流石にかけより彼を支えた 
「うう・・・・じろ・・・う…おれは ・・・もう・・・だめ・・・だ・・・・」 
「死ぬなー!まだだ!まだ助かる道はある!!!うおおおお!!」 
 そうして寛太をお姫様だっこして全力で保健室に走った慈朗でなのであった 


 …二人の声は届かなくなった 

「友情かと思っていたがあれは今流行りのフとかいうやつだったのか?」 
と桜子はのたもうた 
「…ふ?何それ。」 
「男同士が仲いいことをそういうらしい」 
「へー。そうなんだ。普通のふ??」 
「どうなんだろうな?私はフとしか聞いてないからな…」 
「ふーん。まぁ色々あるのね。」 
 と早くも興味を無くし気味に話すフブキであった 


「ん?賑やかだと思ったらいい匂いがするな…。そこの者たち、それはなんだ?」 
 とまぁそこへ新しい生徒がやってきた 
 やはり召喚科の少女、グラチィアであった 
「ん?ええと貴女も確か召喚クラスの人よね。これは日本茶と言ってね…渋いけども美味しいお茶よ。一杯如何?」 
 とお茶を勧める。 
「ほう…そうだな。私はグラチ…いや、グリと呼んでくれ。召喚授業専攻の者だ。にほんちゃ…実においしそうだ。頂こう」 
 グリと名乗った小さな少女は興味深々にお茶を覗き込む 
「なんか召喚授業のクラスも個性的なやつが多いよなー。フブキちゃーん、俺も飲んでいい?」 
「グリさんね。…なんか昔の絵本を思い出すわ。…まぁいいわよ、はい、どうぞ。」 
 とルスにもお茶を出す。 
「サンキュー、フブキちゃん!」 

 グリは何かに迷うようにお茶を眺めたが、やがて毒見…ここでは大丈夫…とか呟きつつ意を決するように飲み込んだ 
 そして熱さに悶えた 
 見苦しくないよう取り繕いつつフブキの方に返答する 
「…そ、そうだな…絵本…みたいだな…」 
「おぉっと、大丈夫か?熱かったのか?」 
「大丈夫?」 
 と背中を擦る 
「だ、大丈夫だ。心配には及ばない。うむ…。だが感謝する」 
 グリは一息ついて顔を上げなおした 

「うむ…なかなか渋いな…。しかしこれはこれで味わいがある…。よし、今度グラにも飲ませてみるとしよう。あやつ渋い味は平気だったか…?苦手だったらそれはそれで愉快だしな 
 これはどこで買えるのだ?娘よ」 
「まぁ淹れ方にもよるんですけどもね。ああ、これですか?今回は貰い物ですが、多分…異人街なら扱ってる店もあるんではないのかしらね。」 
「そうか。情報提供感謝する」 
 幼女のわりに、偉そうに喋る子であった 

「良かったら団子もどうだ?茶にあうぞ」 
 とあとちょうど三本あるらしい団子を桜子は差し出した 
「お?いいのか?食べてみたいぞ!」 
「あら、じゃぁ私も頂きます。ありがとね、桜子。」 
「お、俺もいいの?サンキュー♪」 

グリはきちんと席につき、それから手を合わせた 
「では遠慮なく。頂きます」 
「団子も茶もうま」 
 皆で和やかに茶を団子を楽しむ 
 そしてグリは皆を見回した。女性2人は同じ科で顔は覚えていた。確か名前は… 
「えーと、確かフブキに桜子だったな。そこの男性のお方はすまないが知らない。申し訳ない」 
「ええ、まぁルスは別のクラスだからね。仕方ないわ。」 
「ルスと申すのか。そうか。宜しく頼む。グリと呼ぶのを許そう」 
「俺は属性魔法の方だからな。よろしくグリちゃん☆」 
「…む?」 
 フブキはちょっと一瞬不機嫌そうにルスを見る 
「ほう、属性魔法か。どんなものだ?」 
 ルスに興味を持つグリにまた不機嫌そうになるフブキの頭をルスはぽんぽんしながら 
「火とか水とか生み出したり操ったりする魔法だな。見たことないか?」 
「一応見た事はある。だがルスの魔法で見た事がない。見てみたいぞ」 
「…」 
 フブキはとりあえず落ち着くが、やはりちょっと不満げであった 
「まぁ属性魔法なら私も少しは使えるわよ。氷限定だけど」 
「おお、そうなのか!」 
「まぁ初対面だからしょーがねぇなそれはwんーそうだなぁ…」 
 ルスは何をやるのか考えそして 

「俺の場合は得意なのは重力魔法な」 
「ほう…?」 
「例えばこんな感じで」 
 といいつつルスは魔法でフブキを浮かすのだった 
「…ってきゃ!」 
 前フリなく浮いた。そのせいでフブキはバランス崩しかけスカートが捲れそうに…! 
「おお!いいな!ずるいぞ!私も浮いてみたいぞ!」 

「も、もう!!!いきなりなにすんのよー!!!ばかぁー!!!」 
 それどころじゃないフブキは真っ赤になってスカートを押さえてる。 
「おっと、悪い悪い!」 
 そしてちゃっかりお姫様抱っこでキャッチするルスであった 
「ひゃ…!も、もう…やるならちゃんと言ってからにしてよね?」 
 そして相変わらず顔を真っ赤にしながらも、ルスに抱き留められてまんざらでは無さそうな様子であった 
  
 グリはというとそんな二人が目に入ってない様子で 
「ふむ…。なかなか応用範囲が大きそうな魔法だな…。そうでなくても重力‥強力だな…」 
と独り言を言い、そしておもむろにルスの前に立った 

「よし、ルス。お前私のものになる気はないか?不自由な生活はさせないぞ!」 

 そう言い切ったあとちょっとばつが悪そうに 
「困難がないとは言えないがな…」 
 とは付け加えておく 
「ふぁっ?!ww」 
 まぁ案の定というか普通にルスは驚いた 
「お前が欲しいんだ」 
 それを意に介さずグリは続ける 
「これはあれか、逆プロポーズというやつか?」 
と桜子 
「…ちょっと待って、それはどういうこと…?」 
 グリの唐突な発言に謎のオーラを発しつつ、彼女に思わず詰め寄るフブキであった 
「ん?ああ、私は人材が欲しいんだ。私の力になってくれる存在がな。ルスの力は是非とも欲しいと思ったんだ 
 私は色々あって居場所を侵略された身でな。奪還を目指していているのだがいかんせん、人材が不足しすぎていてな…」 
 今グリにいる味方は召喚成功した悪魔一人。無論彼を信じてはいる。いるがたった二人でどうこう出来るなどと夢を見れるほど彼女は子供でなかった 
「…なんだ、そういう意味ね。でも正直その言い方は誤解しか生まないから、気を付けた方がいいわよ。」 
 とフブキは安堵したように言う。 
「そうか?」 
「やだ、俺にはフブキちゃんという彼女が…!と思ったらなんか違った!」 
「か、彼女とか言わない…!…あ、でもこういう時は言った方が…?ううん。」 
「・・・・・ああ、そう言う事か・・・」  
 二人のやりとりは幼き少女でも意味を察する事は出来た 
「そうか…愛しいものがこの地にいる存在か…じゃあ無理は言えぬな…。すまない、忘れてくれ。私の道に付き合わせられる存在じゃなかったのだな」 
 少女は小さな体をさらにシュンと縮こませ、でもすぐに堂々と顔を上げた 

「騒がせてすまない。愛するものを大事にしてやってくれ 
 茶と団子美味かった。ではな。あなた方の道に幸おおからんことを 
 では、失礼する」 
 そう言ってグリは丁寧にお辞儀をして颯爽と立ち去って言った 
 心の中では召喚魔のグラにお茶と団子を買って行ってやろうと思いながら 
「口に合ったなら何よりだ。またな」 
「え、ええ。ではまたね。」 
 女性2人はそう声をかけ、ルスはその小さな背中に手を振る 

「ちっこいのにしっかりした子だなぁ」 
「そうね、ちょっと変わった子だけども…まぁ色々あるのよね。多分。」 
「あの子も重いもん抱えてんだなぁ」 
「ホント、この学院って訳あり多すぎね。まぁあまり色々言えないけども。」 
「まぁだから個性的な奴ら多くて楽しいんだけどなw」 
 そう言ってカラっと笑うルス 
「そうね。まぁホント色々あるけど。」 
 ふと、ちょっとだけフブキは不機嫌そうな表情になる。 
「ん?何不機嫌そうな顔してんの?勝手に浮かせたの怒ってる?」 
「そ、それはもういいわ…まぁその、色々、仕方ないわよね。」 
「でも、次にやる時はちゃんと言ってよね?こっちだって、心の準備とか色々あるんだから…」 
 と、ルスの服の裾を摘まむ 
「ん、りょーかい☆」 
 そんな仕草が可愛くて、次友人のステイリーにあったら彼女自慢してやろうと思うルスであった 


 桜子も立ち去りさっきまでの喧騒がうそのように静まり返る 
「…なんか二人になっちゃったわね。」 
「二人っきりは嫌?」 
「…別に。」 
 フブキはちょっと照れたのか顔を背けて言う。 
「よっし、んじゃこのまま二人でどっかいっちゃう?」 
「な、…そ、そうね。偶には、うん。いいかも…ね?」 
 とそっと手を差し出す 
「そうこなくっちゃな!」 
 そう言ってルスは満面の笑みでフブキの手を握り、そのままラウンジを後にしたのだった 



end

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