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 ある日彼女はのたもうた

「強く…もっと強くなりたい…です」
「どうかしましたか? 何か困った事でもありましたか?」
 そう尋ねてみたけど彼女は首をぶんぶんふる
「ただ、私は…弱いから強くなりたいんです…」
「……どうしたのですか?」
 ルリアさんはどう考えても力(物理)で何かをどうこうしようとする人じゃないし…
 もしかして医者として患者を運ぶため物理の力を欲しているとか…?

「……ステイリーさんはお友達とお酒飲むじゃないですか…」
「…はい。そうですね」
 どうやら力(物理)とは違ったらしい
「私も、強くなりたいんです…。ステイリーさんと飲んで…語りあかしてみたいのです…

 なのにいつもすぐ潰れてしまって…」
 今日僕は仕事の付き合いで飲んできた。もしかしてすねているのだろうか? いや。多分これは…
「ルリアさんお酒飲みました?」
「…少し…。でもちょーっとです!まだまだいけます!」
 あぁ、やっぱりそうか…。なんかテンションがおかしいと思った
「強くなれたら…私とだって楽しく吞んで貰えます…。一杯一杯…おしゃべりして…
 ふわーとなって…」
「吞まなくても沢山お話は出来ますよ。もう寝ましょう?」
「やー!まだ、飲むのです!」
 ルリアさんは酔うとこうなんだよな…。いや、だだのこね方可愛いけど
「はいはい。じゃあ布団行きましょう」
 そう言って無理矢理抱き上げた

「違うちがうちーがーうーのですー!」
「暴れないでください、危ないので」

「…どんな時だって一緒にいて嬉しいとか、たのしいとか、同じでいたいだけで……吞むときだって同じがいいんです…。

 私だけのけ者は…いやです…」
「お酒の強弱は体質があるので無理しないでください。それに酔わないでお話していても十分楽しいですよ」

「…ステイリーさんのせいです」
 ベッドに優しく下した途端睨まれてそんな言葉。しかし彼女が睨んでも迫力がなく、なんだかすねてるみたいで可愛いらしい
「どうしてですか?」
「すていりーさんが…優しいから…私がつけあがる……」
「そうなのですか?」
「そうですよーぉー!!…ちょっとした時だって、いっしょにいるのに、生活しているのに、まだ、もっと、もっとほしくなる…。わがままになる……。お酒だっていっしょにのめたら…もっと一緒…」
 酔ってるせいか支離滅裂な言葉になっている。
 けどそれは確かに愛の言葉だった
「よくばってばっかになる…。まだ、ほしいなんて、よくばりになって……いつかは悪女になるんだ…」
 …どう考えてもルリアさんの悪女が想像できなくてちょっと笑ってしまった
「わらいごとじゃなーくーて!」
「それはお互いさまですよ」
「ふぇ?」
「好きな人がほしくなるのは当たり前なんですから」
「あたりまえ…?」
「そうですよ。そんな中で相手をいかに思いやれるか、でしょう?欲自体は普通です」
「…うにゅ……」
「人には向き、不向きがあるのでお酒は弱くても大丈夫ですよ」
「うー…」
「でも、今は貴方の欲にこたえましょうか?」
「ん~……?」
 手を、彼女の体に伸ばそうと思って…でもやめた
 暫く優しく髪をなでる。くせのない髪をさらさらと。何度か繰り返していたら予想通り彼女は寝入ってしまった

「おやすみなさい、ルリアさん」
 こう、結果が予測が出来るようなったあたりに慣れを自分でも感じた
 熱くなった顔を洗ってから寝よう。欲があってもそれだけにおぼれないために


 でも、彼女は酔ってない時にもう少しそういう我儘を言ってもいいのに
 それがいつか、ちゃんと言えるようなってくれたら嬉しいと思った
 甘えられなかった彼女が拗ねたりも出来る程甘えれる存在になれてきているのなら。これから先、家族になってもきっと上手くやれていけるんじゃないかって


 相手の我儘すらも欲しくなる自分も十分我儘なのかな。と感じた夜だった


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