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 自分と彼女が出会ったのはとある何でもない日 
 シトナがちょっと俯いていたら、具合でも悪いのか? と声をかけたのが始まりだった 

 それから、顔を見れば挨拶をする程度の知人となり、少しずつ会話もするようなってきた。 
 そんなある日の会話の一幕 



「……しけた面を見せるな。悩みがあるなら言えばいいだろう…ったく」 
 少し彼女が俯いた様子だったのでそうやってぶっきらぼうにそう言う。 
「…すみません…。悩みというか…その、自分は弱くて言葉を誰かに伝えるのも怖くて怖くて…。…こんな自分が嫌いなのに変えれない。私は強くて心優しいあなたが羨ましい…。こんな私でもあなたのように強くなれますか…?」 
 彼女はこんなひねくれた言葉を言う自分には見合わない言葉を紡ぐ。優しいなんて、柄じゃない。 
「何を恐れる必要があるんだか…。あんたは俺みたく言葉で敵を作るタイプじゃないだろうに。勘違いするな。言いたいように言うのは強いんじゃなくて人曰く無神経だそうだぞ。俺はどうでも良いけど…。別に俺はあんたが何言おうと大丈夫だし気にするな。ったく…」 
「…あ、ありがとうございます。気遣ってくださって…。やはりあなたは優しい方なのですね。こんな声が小さくて何を話そうかと迷っていても真剣に聞いてくださって…。…今までの私は誰かにまた嫌われてしまうと考えてしまって言葉を伝えるのが怖くなっていました…。でも、だけどあなたの言葉を聞いて少し勇気が出たのです。だから、その…迷惑でなければこれからも私とお話をしてくれないでしょうか…?」 
「だから別に…あー、そう思いたきゃもうそれでいい。人の話聞くなんて普通の事だろうがったく…。人間全員に好かれるなんて幻想なんだから気にしてんなっての。別に…あんたが喋りたいなら勝手に喋ればいいだろう」 
 大人しそうなタイプ程思い込んだら頑固な節がある。 
 ならそれで相手が自分に対して話しやすくなるのならもうそれでいい。言葉を封じ込めて、心を閉ざすなんて真似なんてする必要なんてないのだから。 

「…そうですね、あなたの言う通りかもしれません…。皆に好かれるのは無理ですよね。気にしているだけ損かもしれません…。 
 …これはただの独り言なのですが…、あなたに出会えて良かったです。冷たく見えて、実は根が優しく不器用なあなたが私は好きですよ…」 
 ……そう言われて、なんと返事していいか分からず少し頭をかいた。不器用なのは当たっているのだろうが…自分は相手にとってそういう人なのか、と  
「…一人言がでかいな、あんた。…まぁまた勝手にひとり言言いたければ言えばいい…」 
「…はい、そうですね。ただ、私の話だけじゃなく次はあなたのお話が聞いてみたいです。その…ご迷惑でなければまたいつかあなたのことについてもっと知れたらいいなと思います…」 
「…あっそ」 

 やはりそれ以上の言葉は出てこなかった 
 けど次があるのなら、少しくらいは自分の事を話してもいいのかもしれない 
 そんな風に感じたのだった 

 

後日〜 


「ねぇねぇ、シトナ。最近、よく楽しい顔をしながら外に出るよね。フフ、何かあった?」 

「…うん。優しい人とね、知り合えたの…。その…よく図書館で会った時とかね、お話をするんだけどあの人、前の人達に比べてちゃんと私の言葉を最後まで聞いてくれるの…。」 

「そうなんだ。シトナの言葉を最後までちゃんと待って聞いてくれる人だったら、素敵な人なんだろうね。良かった。変な人に巻き込まれてなくて。シトナはよく悪い人に騙されるんだから気をつけなきゃ。」 

「…わかってるよ、ミトナ。大丈夫、昔みたいに悪い人に騙されて無理やり連れていかれそうになったりはしないから…。」 

「本当に?シトナは誰にも優しいから心配だな。 
それにしてもシトナがそんな顔するなんて珍しいね。フフ、もしかしてその人のこと好きなんじゃないの?」 

「そうね、好きかな…。良きお話相手だなって思ってるよ。」 

「そうなんだ。…これは前途多難だな。いつ、シトナは恋をするんだろう…。(小声で)」 

「?…そういえば、ミトナも最近よく楽しそうな顔をしてるよね…。」 

「あ、そうなの。フフ、聞いて。この間ね………。」 


そうこうして双子は互いの話で盛り上がったとさ。 

​※相方さん寄贈画像。感謝です

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