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【 ルリア(ステイリー)】 
それはある日の事。 
本を借りる為に図書館に向かって歩いていた時だった 

「えぇと…今日出た課題は…」 
出た課題とそれに必要な本を書いたメモを眺めながら歩いていたら、その紙は風によって飛んでしまった 
「あ…!待って…!!」 
風に飛ばされた紙を追おうとすると紙はふわりと向きを変え、誰かの手の中に収まる 
「ちゃんと前を向いて歩かないと危ないですよ?」 
そこに居たのは自分の大好きな人 
(なんで紙がそっちに?………あ、そうか、魔法…!) 

いい加減慣れないとおかしい。けど魔法がなかった時間の方が長かった自分はすぐにピンと来なかったりする 
…単に鈍いだけとも言うけど… 

「あ、有難うございます…!」 
紙を受け取りつつ笑顔で応対する 
こういう風に困った時さらっと何でもないように助けて貰えて内心 
(…凄く恰好良いなぁ…)とドキドキしているが、なるべくそれを表に出さないよう努める 
「これから図書館にでも行かれるのですか?僕もこれから向かうところなのですが…」 
「え、えと…はい。図書館行きます…!えと…ならご一緒…出来ますか…?」 
「そうですか。では一緒に行きましょう」 
自分の誘いを受けて貰えたのが嬉しくて心が自然と浮き立つ 
「はい…!行きましょう…!」 
そして二人で歩きだした 


【 レイ 】 
エリュテイア魔道学院に入学して数日。レイは普段あまり人に見せない真摯な顔付きをしていた。 
いつもはへらへらと何を考えているか分からない笑みを浮かべているが、実は内心少し焦っていた。 
この異世界に訪れた時、旅の同伴者と離ればなれになってしまったのである。 
そのようなことは過去にも何度かあったが、持前の魔法で今までは探し出せた。しかし、このエリュテイアは魔法で溢れてて探知機能が上手く働かずに妨害されてしまうのだ。 
レイは同伴者を見つける手がかりを探すべく、国の中枢とも言えるだろう魔道学院に入学した。 
この国には中央図書館もあるらしいが、学院しか置いてない貴重な文書が読めるかもしれない。そう考え、今日は学院の図書館へと足を運ぼうとしていた。 
図書館へ向かう途中、一吹き強い風がびゅうと吹き込む。その時、近くで魔法を行使する力を感じた。 
魔法の根源に目を向けると、夜色の髪を持つ青年が飛んできた紙を風魔法で操作している。 
日常的に魔法が使われている風景を目の当たりにして、レイは感心そうに目を細めた。 

【 ルリア(ステイリー)】 
「彼は…初めて見る顔ですね。転入生でしょうか?」 
ステイリーの視線の先を見ると綺麗な人がそこに居た 
(…確かに見ない顔…。男の人…かな…?) 



「学院は広いですし知らないだけかもですけど…」 
ともう一度よく相手を見ようと目線を動かしたのが悪かった 
足をうっかりもつれさせてしまった 

「わわわわっ…!!」 
何とか最後の意地でステイリーを巻き込まないよう倒れ込む 
「だ、大丈夫ですか…?」 
「…済みません…」 
転んだのが恥ずかしくて思わず謝る 

そして転んだ際に手持ちの本やレポート用紙が飛んでその目線の彼の元にまで届いてしまった 
「…あ、す、すみません…!!今拾いますので…!」 
慌てて目の前の紙がこれ以上飛ばされないよう拾いつつ相手に謝る 


【 レイ 】 
どうやら向こうはこちらに気が付いたらしい。夜色の髪を持つ青年にレイはニコリと笑みを返した。 
旅の同伴者に薄気味悪いと評された微笑みを見せて静かにその場を立ち去ろうとするレイだが、突然青年と一緒にいた少女の方が足をもつれさせて転んだ。青年 
を巻き込まないため変に身体を捩ったせいか盛大に倒れ込む。まさか何もないところで転ぶとは思っていなくて、レイは一瞬反応に遅れた。 
「大丈夫?怪我していない?」 
レイは自分の足元まで飛んできた本や用紙を拾い集め、少女の元へ近寄った。 


【 ルリア 】 
目線の先に居た人に心配されて散った物を拾ってくれて駆け寄られてしまった 
恥ずかしくて思わず俯く 

まずは来てくれた相手に慌てて返答する 
「す…済みません…!!お手数おかけしました…!!だ、大丈夫です…!はい…!!」 
手からは血がにじんでいたりもするが羞恥のせいでルリアはそれどころではなかった 

次いでステイリーに顔を向けて 
「え、えと、その…だ、だ、大丈夫です…」 
差し出してくれた手を取る前に拾った物を慌てて纏める 
そして手を取って立ち上がり手が少し痛んだのを無視して服を軽く払った 


【 レイ 】 
転んだ少女は青年の手を取り立ち上がった。その様子に二人の友好関係が伺える。 
レイは拾い集めた資料を少女に手渡した。少女が服を払うのにつられて、ふと視線を落とす。 
「手、血が滲んでる」 
レイは少女の手を見つめた。ほんの少しの擦り傷だ。 
レイは僅かに眉を顰めた。怪我が痛そうだったからではない。自分が治癒魔法を使えないのを歯痒く思ったからだ。 
自分は人と違う――だから、肉体の損傷は治癒出来ない。それを痛感する。 
本当に大事な時に何も出来ない。過去の自分を一瞬思い出して、レイは傷口から目を逸らした。 
「保健室に行く?」 
少女が転んだのは自分に気を取られたからと分かっていたので、レイは少女を気遣って尋ねた。 


【 ルリア(ステイリー)】 
見知らぬ青年から散らばった物を受け取る 
「あ、有難うございます…!」 
兎に角何はともあれ頭を下げる 
改めて正面から顔を見ると中性的な顔立ちで…綺麗だなぁ…、とか間の抜けた事を考えてしまう 

そして言われて初めて怪我に気付き、心配させてるのを理解して慌てた 
「い、いえ…!大丈夫です…!この程度なら自分で治癒出来ますので…!」 
本来小さな怪我なら自然に治るのを待つ方が良いのだが、それではこの人に心配をかけてしまう 
ルリアは意識を集中させて詠唱をして回復魔法を使った 
小さな怪我はあっという間にふさがった 

「…え、えと…ご心配おかけしました…」 
もう一度、頭を下げるのだった 

「えっと、初めまして、ですよね。ステイリーと言います。こちらはルリアさんです」 
自己紹介をうっかりしていた… 
これも何かの縁とステイリーがしてくれた紹介にあわせてまた頭を下げた 


【 レイ 】 
どうやら自分の杞憂に過ぎなかったらしく、少女は治癒魔法を使い自分で怪我を治した。 
ここは世界でも有数の魔法大国。治癒魔法を使える人がいることが普通だと改めて認識される。 
頭を下げる少女を律儀だなぁ、なんて思っているとタイミングを見計らって青年が自己紹介をし始めた。レイもそれに応える。 
「君達に限らず殆どの人が初めまして、かな?俺はレイ。最近入学したばかりなんだ~」 
初対面、ということもあるがレイは最低限の挨拶しかしなかった。この学院に身を置くなら今後もこの二人に会う可能性はあるだろう。しかし、いつこの地から離れるか分からない旅をしているレイは、誰かと必要以上に距離を縮めようとしなかった。 
「じゃあ、大丈夫なら俺行くね。ちょっと図書館に用があるんだ」 
レイは早々に別れを告げて、図書館へ向かおうとした。 

【 ルリア 】 
相手はレイさんというらしくここに来たばかりらしい 
図書館に用事と言うので思わず声をかけた 

「あ、あの…!レイさん…!え、えと…ここの図書館は蔵書多くて…司書さんは居ますが…捕まらないと場所に迷いやすくて…え、えと…良ければ…目的の蔵書のおおよその場所位…ご案内しますが… 
余程特殊でなければ…その…わ、私…図書館よく使うので割りと詳しくて…その、えと………… 
…すみません……」 
今会ったばかりの初対面の人に図々しい事を言った気がして自分で言ってて恥ずかしくて思わず顔を赤くして縮こまった 


【 レイ 】 
足早に立ち去ろうとするレイに予想外の声がかかった。声をかけたのはルリアという少女の方だった。ルリアはたどたどしく用件を伝える。 
レイは突然の誘いに少し驚き、二人に尋ね返した。 
「良いの?それは助かるけど、君達も用事があるんじゃない?」 
見も知らぬ他人にそこまで気を使わなくても良いのに、とレイは思う。親切心は嫌いではないが、これまでの旅路生活の経験上、相手に探りを入れて第一声に遠 
慮の言葉が出る癖が付いていた。学院内でそんな警戒をする必要などないというのも分かっているのだが、根付いた習慣はなかなか抜けない。 


【 ルリア(ステイリー)】 
「いえ、私たちもこれから丁度図書館へ向かうところでしたのでレイさんもよろしければ一緒に行きましょう。本をお探しでしたらルリアさんがとても頼りになりますよ」 
相手には多少の遠慮の雰囲気があったけど、此方から誘いをかけた事だしステイリーに自分が頼りになると言ってくれた事でやる気が万倍になった単純な娘であった 
「だ、大丈夫です…!!お役にたてるならその方が嬉しいですし拾って貰ったお礼です…!!本を選ぶの割とやるので遠慮なくどうぞです…!!頑張ります…!!」 

拳を握りしめつつやる気をみなぎらせるのであった 
「えと、どういう本をお探しですか…?」 
先ずは基本の質問からするのだった 


【 レイ 】 
社交辞令程度に自分に声をかけたのかと思ったが、相手はよほどお人好しらしい。 
深い人付き合いをしたがらないレイだが、目的の為に上辺だけは友好そうに取り繕っているので、心は距離を置きつつも下手に断るようなことはしなかった。 
「そう?じゃあ、お願いしちゃおっかな。ありがとうね、ルリちゃん」 
さらりとルリアに呼び名を付けつつ、ニコーと笑って見せる。 
レイは再び図書館に足を向け、わざとらしく手で顎を触り悩む仕草をした。 
「探しているって言ってもはっきり見つけたい本がある訳じゃなくて、探知系統の魔法学書……あるいは妨害魔法に詳しい本とか知ってる?」 
レイは同伴者のことを考えながら、これまで読んできた本を思い浮かべる。特に事情を話す必要もないので、敢えて人を探しているということは伏せておいた。 


【 ルリア(ステイリー)】 
「は、はい…ってえ!?は、はい…!!///」 
いきなり男の人?(アビゲイルさんの例もあるし身長で判断は危険かもしれない…!)にルリちゃん呼びされて遅れてちょっと気恥ずかしくなった 
でも嫌じゃないので指摘はしない 

「探知に妨害ですか…。基礎を学びたいのですか?それとも応用を探していますか?」 
基礎か応用かだけでも置いてある場所は少し違う 
鈍感ルリアは探し物の為と言う考えに至らぬという残念っぷりであった 

それより場所を思い出しながら歩く 
考え事に集中して前を見ていない 

「ルリアさん?一生懸命なのはいいことですがね?」 
このままでは壁にぶつかりそうなルリアの行く手をステイリーは手で塞いだ 


【 レイ 】 
ルリアは驚いた声を上げたが、その理由をレイは察しつつも敢えて口にしなかった。相手も特に嫌そうな素振りはしていない。 
レイは魔法をかける時のように人差し指を振る動作をしながら思案する。 
「基礎も応用も粗方試してみたからなー……新魔法を開発する手掛かりになるような文献ってある?」 
少なくとも自分の知る限りの魔法は全て試した。傲るつもりはないが、これでも偉大な魔法使いの弟子であり、旅路で学んだことは多い。上級魔法だって扱える。 
しかし、これだけ手を尽くして探し出せないとなると、何か別に要因があるのかもしれない。そうなると、その原因に応じた方法でアプローチする必要がある。最悪、閲覧禁止の棚に解決策がある場合、盗み出すのもいとわない。 
そんな危険なことを考えいるレイの横で、ルリアが図書館へと向かう廊下を外れて壁にぶつかりそうになっていた。だが、その前にステイリーがさっとルリアを庇う。レイはステイリーがよく彼女のことを見ているなと思った。でなければ、ルリアの行動にいち早く気付けないだろう。 
レイは二人を見比べて『成る程ねぇ』と悪戯を仕掛けた子供のようなほくそ笑んだ。 


【 ルリア(ステイリー)】 
え?と聞く前にステイリーの腕に支えられてしまった 
羞恥ですぐ離れたけど兎に角恥ずかしい 
「す、すみません…ステイリーさん…///有難うございました…」 

照れを誤魔化すようにレイの言葉を考えた 
「新魔法…ですか…。ステイリーさんの方がそう言うのは詳しいですが…あ、そうです!干渉魔法も調べてみたらどうでしょうか?」 
干渉魔法が新魔法かどうかはルリアにはいまいち分からないが術式に干渉する魔法を知る事は何かのヒントになるかもしれない 
レイの笑みには気付かずステイリーの反応を伺った 

ステイリーは話に興味を持ったような風に話に加わる 
「探知魔法に妨害魔法、ですか。何かを探しているけど妨害されて見つけられないということですかね。確かに妨害魔法が発動しているのならば干渉魔法でその術式を書き替え、効果を消すことは可能だと思いますが…干渉魔法ももう試しておられたりするのでしょうか?」 
ステイリーの発言で…あ、そう言う事か…!と今更気付く鈍感であった 


【 レイ 】 
ステイリーの返事にレイはヒュウと小さく口笛を吹いた。隠していないとはいえ、魔法の用途を察したらしい。あの断片的な情報でよく分かったものだ、とレイはステイリーの聡明さを内心賞賛する。 
「うーん、干渉魔法とは少し違うけど俺の専攻は魔力操作だから似たようなことは試してみたんだ。でも、干渉魔法ねぇ……そこから新たな術式を作ってみる価値はありそうかも」 
そう話している間に三人は図書館に着いた。学校図書館なので少し大きいくらいかなと思っていたが、予想以上に館内は広い。 
「そういえば、ステちゃんは何か新しい魔法の研究をしているのー?」 
館内なのでほんの少しだけ声を潜める。レイは調子に乗って、ルリアに愛称を付けても特に何も顔色を変えなかったステイリーにも勝手にあだ名で呼んだ。 


【 ルリア(ステイリー)】 
(…クローシアさんを思い出す…ステちゃん…) 
心の中だけの呼びかけにちょっと照れつつレイさんは随分気さくな人だな、と感じた 
ステイリーは一瞬ステちゃん呼びに眼を丸くしたようだがその後は何事もなかったかのように穏やかに話を続けた 
「…今はそうですね、紋章魔術や干渉魔術、魔道具などを掛け合わせてもっと魔法を向上できないか研究しているところです」 
彼の研究内容は詳しくは知らなかったが改めて聞いてみると、とても夢のある内容に感じる 
最終的に魔法の勉強が出来ない人や使えない人にも魔法が使えるように補助出来る道具や簡単な魔法が出来たらいいのにな、とかひっそり考える 

「しかし探知魔法が妨害されるとはいったい何を探しておられるんですか?まさか禁じられたものやどこかに封印された危険なものではないですよね?」 
ステイリーの質問にそれ聞いて大丈夫なのかな?とちょっと心配になってレイの反応を黙って待つ事にした 


【 レイ(ステイリー)】 
生真面目そうな彼のことだからてっきり嫌がるかなと思ったが、あっさりと受け入れられてしまったようだ。しかし、それも束の間ステイリーは訝しげにレイを問い詰める。 
「そんな危ないことしないよぅ。ただ単に人探しだよぅ」 
レイはわざと戯けて茶化した。事情はあれど、実際に嘘はついていない。 
「そうですか…?ならばいいのですが…」 
レイの態度では真偽の程はわからず、ステイリーはとりあえずレイを信じることにしたようだ。 
鋭いなぁ、と苦笑しつつも、これ以上深く探られないようにレイはくるりとルリアに向き合った。 
「そういえば~ルリちゃんの髪の星って魔法?この髪飾りが魔法道具なのかなー?」 
そう言って彼女の髪を一束掴む。断りもなく女性の髪を触るのは失礼だが、勝手にあだ名を付けた時も特に嫌そうな顔をしなかったルリアなのでレイは大丈夫だろうと判断した。ただし、その隣にいる青年がどう思うかは分からないが。 


【 ルリア(ステイリー)】 
人探し…。なかなか深い事情がありそうで大変そうだ 
手助けの一環が出来ればいいと、役に立ちそうな本を頭で検索を全力でかけていたら髪を一房、手に取られる 

「え…////え、えとえとえとえとえとえと…か、髪の星は…髪飾りにかかってて…飾り自体は普通の何でもないやつでして…す、ステイリーさんに魔法を定期的にかけて貰ってます…!!はい…!!///」 
流石に恥ずかしくて真っ赤になった。慌てつつも質問に答える 

「レイさん…気さくなのは良いことですがいきなり女性の髪を触るのは如何なものかと…」 
あくまでマナーとしてレイにそう説いたステイリーだが面白くなさそうな雰囲気を纏っている 


【 レイ 】 
髪に触れただけでルリアは予想以上に赤くなって慌てふためいた。 
ステイリーはそれが面白くなかったのか、礼儀として説きながらも明らかに不機嫌になっている。 
やっぱりそういう関係かぁ、なんて思うのと同時に、話題を逸らせたとレイは小賢しく目を細めた。ステイリーなら話を逸らしたことに気が付いているかもしれないが、これまでのやり取りから彼は節度をわきまえているので、これ以上言及したりはしないだろう。 
「ごめんね~、嫌だった?綺麗な髪だったからつい」 
そんな狡猾さをおくびにも出さずに、ルリアの髪を褒める。彼女が面と向かって嫌だとは言えない性格だろうと分かっていて、レイはわざと意地悪く尋ねた。 


【 ルリア 】 
(…なんだかステイリーさんの空気が堅い…?と言うか…?) 
何となくいい気分じゃなさそうなのは伝わりつつそれが=嫉妬という確信は持てず 
レイの言葉にまた慌てふためく 

「い、いえ…!大丈夫です…!!か、髪そうでしょうか…?あ、有難うございます…///」 
男性(?)にそう言われるとやはりなんだか恥ずかしい 
でも褒められるのは嫌な気分ではない 
(ステイリーさんも綺麗って思ってくれてたら嬉しいな・・・) 
とか思考がちょっと明後日に飛びつつ意識をそらすように改めて本を考える 

「え、えと…本…!ま、まずは干渉魔法から探しますか?」 
ステイリーには自分の前で異性に必要以上に顔を寄せたりしないで欲しいとは言われてて、たまに抜けるが気をつけている(本人談)けど向こうが触って来た場合どうしていいのか分からない。 
振り払うなんて考えもしない性格故にされるがままに結果としてなってしまっている 


【 レイ 】 
恥ずかしさのせいか、照れ隠しするようルリアは本の話題に戻した。 
レイはあんまり人と接触するのは慣れていないのかなー、と密かに思う。 
「うん、そうだね。干渉魔法からお願いするよ~」 
ルリアが照れていることに気が付きながらも、至って何事もなかったかのように彼女の後ろについて行く。こうして見るとルリアの頭がほぼ真上から伺えた。 
「ルリちゃんって身長いくつ?」 
会話を途切れさせない為にレイはルリアに尋ねた。流石に背のことを気にしているかも知れないので小さいとまでは言わないでおく。それに自分と身長差がない女性の方があまりいない。 
レイは先程のこともあるので、触れない程度にルリアの頭の上にひらひらと手をかざした。 


【 ルリア 】 
「は、はい…!では此方です…!」 
干渉魔法はまだ本が少ないんだよなぁ…とか考えながら要望の通りの本のある場所に歩きだす 

ふいに身長を聞かれたので前に計った時を思い出す 
「え、えと…154cmです…。ちょっと小さめですよね。…レイさんは大きいですよね…。えと…其方は何センチですか…?」 
小さいのは別段コンプレックスではないので普通に返す 
聞かれるとやはり相手との差が気になってしまい質問をしてみた 


【 レイ 】 
干渉魔法のコーナーに着いたらしい。レイは干渉魔法に関する書物をざっと一瞥する。書物の量は他に比べるとあまり多いと言えない。 
「ん、ありがと~」 
レイは目に付いた一冊の本を手に取りパラパラと捲りつつ、二人と会話を続ける。 
「ごめん、気にしてた?でも、小さい子って可愛いよね~」 
口説いているとも取れる台詞だが、レイに他意はない。ルリアが気にしているかもしれないのでフォローのつもりでの発言だった。 
それにレイから見れば170cmあろうと小さいの部類に入ってしまう。女性に対して可愛いと褒めるのはいつものことだった。レイは女性としてはやや背の高い旅の同伴者に"小さくて可愛い"と言ったら、凄い嫌そうな顔して殴られたのを思い出す。 
「うーん、185以上はあったかなぁ?あ、もしかして話しにくいとかある?」 
見上げる形だと首が疲れるだろうと思い、レイは少し屈んでルリアと少し目線の高さを合わせた。 


【 ルリア 】 
(背が高いと便利そうだよなぁ…) 
と高い場所にある本を台座なしに取る姿に羨ましく感じつつ 
「い、いえ。特に気にしてないです、大丈夫ですので…!」 
小さい相手は可愛く見える。それは人間心理として普通の事なので若干照れつつ相手を見る 

確かに頭の上からだと聞こえにくいのはあるが、顔が近づく方がルリアには話しにくい(克服を頑張ってはいる最中の)人見知りであった 
「だ、大分差がありますね…。え、いえいえ…!だ、大丈夫です…ので…///」 
改めてちゃんと顔を見ると綺麗な人だな、と感じはするけどそれ以上にやはり医者モードスイッチがオフの時は顔が近づくと恥ずかしい 

反射的に俯いてしまう気弱の性であった 
ふと後ろにいるステイリーに目線をやると目を瞑ってるのに気付いてどうしたのかな?と心配する 


【 レイ 】 
顔が近づいた為か、ルリアはまた顔を赤くして伏せてしまった。よっぽどの恥ずかしがり屋なんだなと思いつつ、レイは一旦目線を戻し、手に取った干渉魔法の本を戻す。 
「ありがとう、後は自分で調べるよ。君達も図書館に用があったんでしょう?お礼といえるか分からないけど、俺にも出来ることがあるなら付き合うよ~」 
レイは早々に干渉魔法の書棚から離れた。もし危険な魔法を使うことになれば、何か問題が起こった時に彼らが自分の事情を知っていると後々が面倒になるだからだ。足がつくようなヘマはしない。 
特に察しの良いステイリーには一度疑念の目を向けられたので、慎重に行動する。……まぁ、その彼は雑念を払うかのように瞑目していて、それどころじゃなさそうだが。正直、ちょっと面白い。 
普段は人の関係に首を突っ込まないレイだが、からかい甲斐があってついつい悪戯心が働く彼であった。 


【 ルリア(ステイリー、レイ)】 
レイが離れると同時に息を漏らすのが聞こえる 
「…もういいのですか?私は本の返却と課題と研究に必要な本を借りに来ただけですし特には…」 
そういってステイリーはルリアに目線を送った 
「え、えと…もう大丈夫なのですか…?探知と妨害の場所まで案内しますよ…? 
わ、私も…課題の本を探しに来ただけなので…探すのはすぐ終わりますし…」 
もう一通り試した後なら参考になるのかは分からない。けどここの蔵書数を考えれば何か新しい発見もあるかもしれない 
手助けを申し出た以上途中で放り出すのは性分ではない。のでやはり案内を申し出るのだった 

「そうだね、一応確認までに見ておこっかな。じゃあ、案内お願いね~」 
「は、はい…!ではこちらです…!」 
レイが頼ってくれたのでルリアは張り切って先導をした 

「では先ずはここの一角が探知系の応用です…!」 
とかなりの蔵書数を前にルリアは少し位絞った方が良いだろうな、と考える 
確か妨害関係の事も記された本があった気がした 

「えと…あの辺りに確か良さげな本が…」 
それはかなり上の方の蔵書だった筈でレイの身長でも届くかどうか…。ルリアは素直に壁にある梯子に登り始めた 
慣れているからおっかなびっくりではないが、本の位置ばかりを考えてるせいでスカートの意識がまるでない…

【 レイ 】 
ルリアに案内されて探知系の蔵書まで案内される。 
上の方に目的の本があるのか、ルリアは梯子を使って登り始めた。ちなみに丈は短くないものの、ルリアはスカートを履いている。 
「あー、ルリちゃんストップストップ」 
自分の背と角度の問題で見える心配もないと思うが、とりあえず自分の目線より上に言ってしまう前に引きとめた。仮に見えた所でレイは何とも思わないのだか、後から気付いたルリアの方が恥ずかしさで居たたまれなくなるだろう。流石にそれは可哀想だ。 


【 ルリア(ステイリー)】 
色々考えつつだったので一瞬テンポが遅れてレイの言葉に反応した 
「…え?は、はい!?どうしました…!?」 
と振り向いた瞬間、ヒールが梯子を踏み外し、体が傾くのだった 

「わわわ…!!!?」 
「ちょ、ルリアさん…!」 


【 レイ 】 
声をかけられて振り向いた瞬間、ルリアが足を踏み外した。 
……うん、これまでの出来事から若干そんな予感はしていた。 
ステイリーがルリアを受けめようとさっと手を伸ばす。 
レイは気付かれないよう重力魔法を使って、ステイリーへの負担を軽減させようとした。 


【 ルリア(ステイリー)】 
落ちる時、一瞬体が軽くなったような感覚がしてステイリーの腕の中に収まった 
「一体何をしているのですか…気をつけて下さい…」 
それを疑問に思う間もなく自分の感情は羞恥で一杯になった 
「あ…す、す、すみませ…!!」 

とにかく恥ずかしい 
嬉しいけど、ドキドキするけど 
吃驚しすぎてわたわたしてしまうがまだ立ち上がれそうになくへたりと力が抜けてしまった 
ふとステイリーの顔を見るとレイを見ていた 
…どうしたんだろうか…? 


【 レイ 】 
何か言いたげにステイリーがこちらを見つめる。レイはそれを知らないふりして二人を茶化した。 
「わー、ステちゃん王子様みたーい。かっこい~」 
ヒューヒューとわざとらしく口で言って二人を囃し立てる。別に隠すようなことでもないが、ステイリーのことだから、レイが魔法を使ったと分かればお礼の一つくらい言うだろう。ただ、なんとなくそれが嫌で、レイはいつもの調子でふざけた。 


【 ルリア(ステイリー)】 
レイのからかいにまた激しく真っ赤にぼふん!となりつつ 
王子様なんてフレーズに(ステイリーさんが私の王子様…だったら…もの凄く嬉しい…!!)とか乙女思考が全開になっていた 
ステイリーはというと「そんなことないですよ…」とレイから眼を逸らし、ルリアへと顔を向ける 

「ルリアさん、立てますか?」 
そっと床に下ろされなんとか足に力を入れつつゆっくり立ち上がる 
「あ、有難うございました…」 
本音ではもう少し、あのままで居たかったという気持ちもあったけど人目があるので我慢した 
「そ、そういえば…レイさん…どうしました…?何か良い本見つけましたか…?」 
改めて自分を止めた理由を尋ねてみた 


【 レイ 】 
「? ああ、うん、見つかったから大丈夫だよ」 
ルリアは何故途中で引き止められたのか分かっていなかったので、レイは空気を読んで黙っておいた。危ないから気をつけてねー、と一言だけ注意しておく。 
「じゃあ、お姫様を護るナイト?ステちゃんが王子様じゃないなら俺が王子様になってみようかな~」 
思った以上の反応を見せてくれた二人にレイは更に冗談を続けた。 


【 ルリア(ステイリー)】 
「そ、そうですか…。見つかったのなら何よりです…!」 
気をつけてね、という忠告には済みません…と顔を真っ赤にして謝る 

「そうですね、ナイトの方がしっくりくる気がします…」 
そしてナイトという単語にステイリーが肯定を示すと 
(守ってばっかりだし案外近いかも…?ナイトと言うより…保護者に近そうだけど…) 
なんて自分の考えに若干凹みつつ 

レイの言葉にルリアの天然鈍感がまたも発動した 
(…王子様って…なろうと思ってなれるの!?…いや、違うか…えーと…誰かの王子様にって事…?) 
…と… 
=自分の王子様という発想に至らなかった 

どういう事なのかうまく意味が理解しきれず説明を求めようと戸惑うようにステイリーを見上げる 
「………本気ならば構いませんよ。本気ならば」 
ステイリーはレイを見据えるように静かに言い放つ 
ルリアが見上げているのに気付くと、少し複雑そうな顔で微笑った 


【 レイ(ステイリー)】 
てっきり少しは慌てふためくかと思ったのだが、ステイリーの返答は何やら複雑なものだった。何か特別な事情でもあるのだろうか。レイは地雷を踏んだかな、と一瞬危惧するも、相手が何処か苦しそうな感じがしてスッと鋭い目付きに変わった。 
「随分と酷いこと言うんだね」 
レイはやれやれといった様子で首を振る。今までの様子を見て、ルリアがステイリーに好意を抱いているのは明らかだ。なのに、ステイリーはそれを否定すると 
も取れる発言をした。もし、これがルリアの一方通行であればレイは何も言わなかったが、ステイリーもルリアに対して好意を持っているのは傍から見え見えで 
ある。とてもステイリーが本心を言っているとは思えない。 
レイは一歩前に出て、ステイリーを追い詰めるように近づく。 
「……じゃあ、本気だったら良いんだ?」 
彼の肩に手を置き、先程よりも低い声で耳元で囁いた。 

「……もちろん」 
耳元で囁かれた声に一瞬言葉を詰まらたようだが眼を閉じ静かにそうレイに告げる。 
「酷いことは…百も承知だよ。でもナイトはナイトらしく…姫の幸せを願うだけさ」 
レイにだけ聞こえるように、そして苦々しく笑った。 

ステイリーの諦めたような言葉を聞いてレイは彼から離れた。これ以上問い詰めても彼の答えは変わらないだろう。 
「……なーんてね、冗談だよ」 
レイは先程と同じ調子でにっこりと貼り付けた笑みに戻った。取ったりしないから安心して、と軽くステイリーの肩を叩く。彼は俯いていて、どんな顔をしているのか伺えない。それでも、何か葛藤しているのだけは感じ取れた。 
ステイリー達に背を向けて、レイは再び少し先を歩き始めた。そして、背を向けたままスッと人差し指を立てる。 
「でも、一つだけアドバイス。……何が大切か見極めないと、いつか全部失くしてしまうよ」 
その声色は相変わらず軽々しく、明るい。 
レイは自分自身の行動に少し驚いた。何故、親しくもない彼らにこんなことを言ったのだろう。己の過去を思い出してか、それとも――。 

「…アドバイス、痛み入ります」 
俯きながら自嘲気味に笑っていたステイリーはレイの言葉を聞くと何かを感じたのかそう呟く。 

「さて、本のことは聞けたし、俺はもう戻ろうかな」 
本当はもう少し調べていくつもりだった。しかし、どうも彼らといると調子が狂う。レイはこれ以上らしくないことをしないよう、図書館の入り口を見て、彼らと別れることをそれとなく示唆した。 


【 ルリア(レイ)】 
疑問が繋がる前に二人が険悪な雰囲気になって、おたおたしていたらレイが何故かステイリーにアドバイスを言って立ち去ろうとする 
「え…も、もう良いのですか?」 
強く引き止めるつもりはなくとも、本をまだちゃんと選んでいないのに本当に良いのか慌てて聞いておいた 

「入学手続きとかでしばらくバタついていたから少し疲れててね。今日はもう十分だよ」 
本当は強力な魔法を使っても、この身体が疲れることはない。 
早く二人と離れる為に適当な理由を言ってルリアの気遣いをそっと遠慮した。 
「案内ありがとう。それじゃあね」 
レイは手を振って、短く別れを告げる。どうせしばらくすれば、あの二人も今日のことなどどうでも良い記憶としか残ってないだろう。過ぎ行くものはいずれ忘れ去られてゆく。自分がそうであるように。 
後ろは振り返らず、前だけを見る。 
(ほんと、何処にいるんだよ) 
レイは今傍らにいないパートナーのことを考えた。 


【 ルリア(ステイリー)】 
「あ…は、はい…。ゆっくり休んで下さい…」 
と言って立ち去るレイの背を見送った 
そんな疲れてるようには見えなかったが自分の観察眼不足だろう。まだまだ修行が足りない… 

結局さっきの不穏な空気はなんだったのか改めて考える 
ステイリーは理由なくあんな空気を出す人じゃない 

少し考えてようやくレイが自分の王子様になっちゃおうと言った事を理解してちょっと赤面した。あれは冗談と分かってはいるのだけど 
…それでステイリーが言ったのは…… 

(ちょっとどころでなく身勝手なんじゃ…? 
本気なら、私の王子様になっていいなんて…) 

急にむかむかしてきてジト目でステイリーを見上げた 
物言いたげに 

視線に気づいたステイリーは気まずそうに眼を伏せて重く口を開く 
「…ルリアさんの気持ちを無視するような発言をしてしまいすみません。ですが…いつまでも王子の登場しない物語なんてつまらないでしょう?」 

まただ 
この人はまた私の幸せの形を勝手に作り上げる 
どれだけ伝えても、このままのが幸せと伝えても相手は納得しない 
私は何度この恋心を否定される?叶わなくても、王子様じゃなくても、それでも私は… 

「…つまらなくて良いんです…」 
目線をそらして本棚を眺めたらさっき探した本が目に入った。場所が移動していたのか覚え違えていたらしい。そっとその本を手にする 
「…私、ちょっとレイさん追いかけてきます…」 
泣きそうだからそれ以上は言わず、相手に背を向けた 
まだ急げば追いつくだろう 

そのまま駆けだそうとしたら引きとめるように腕を掴まれた 
振り返ると自分は何をしてるんだというような顔でステイリーは掴んだ腕を見下ろし 
「…言ってることとやってることが全然違って嫌になりますね…」 
唇を噛みながら俯く 
「…あんなことを言っておいてレイさんが冗談だと笑った時もほっとしてしまいましたし…僕は本当に、何を…」 

相手の言葉を聞いて、さっきまで感じていた哀しい気持ちが溶けた 
ちゃんと、好きでいてくれてる。それが何より嬉しい 

「…ステイリーさん…」 
名前を呼んで腕に逆らわず相手の肩下に頭をぽすっとのせた 
何を言えばいいのか分からなかった。ただ、通じさせる事が出来ない気持ちでも、それでも…大切だと感じるから 

ちゃんと笑顔を向けた 
「王子様がいたとしても…その王子様の元に行かせられるよりも、私は…やっぱりここのが良いみたいです…」 
少しだけ、そのまま鼓動を聞く 
「私、我儘ですね…。御免なさい…」 
この気持ちが相手を追い詰めてるのに気付いていても、友達のままでも、手放せない 

「僕の方こそ…勝手ですみません…」 
勝手なんて、そんな風に思った事なんてない 
どうしようもなく切なくなったり苦しくなる事もあるけど、それ以上に嬉しいとか、幸せとかくれるこの気持ち 
相手も少しでも、同じように側を望んでくれている限りはそうしていたい 

「大丈夫です。私は…ちゃんと今、幸せですから」 
そっと顔を上げた 

「え、えと…今日…このまま一緒に…いて…大丈夫ですか…?」 
袖口を軽く握って改めて尋ねた 

「…はい」 
そう言ってまた二人で歩きだす 

今は、まだ離れたくないと願った 



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