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 旅立つときに家を捨てた。
 俺は家に縛られていきたくなかったから――


 冒険に憧れたのは好奇心から。
 気の合う相棒を手に入れ、失敗もしつつ強くなっていった。
 この世界がまさか、いつだって敵に狙われて不安定な状態だったなんて知らなかった。妻にある女性に出会って、恋をして。疎んでいた家を彼女となら作りたいと願って家を建て。家族が増えた。
 小さな命は俺にそっくりでそりゃあ可愛いなんてもんじゃなかった。
 相棒も同じように恋人を作り、数年遅れて子供を授かった。

 お互い子煩悩になった。この子たちが理不尽に巻き込まれたりそれで命を落したりしてほしくない。それを願った。
 俺にとって勝手に将来を決めようとしてきた家。相棒は没落したとかなんとかで理不尽に捨てられたとかなんとか。そんな自分でどうしようもないものにこの子たちだけは巻き込まれてほしくない。
 そう強く願った時、女神が語り掛けてきたんだ。

 俺たちは恐怖した。この世界の脅威に。俺たちは冒険者だ。でかい敵に立ち向かわないでどうする!と互いを鼓舞した。何も知らず生きれば楽だ。だがそれで危険がなくなるわけじゃない。ならば自分たちの手で、未来を戦って切り開いていこうと覚悟した。
 妻は自分が守る。そこも意見は一致した。だから女神に願った願いは子供の事だった。
 
 何戦もした。息子に自慢もした。
 苦労して願いが叶うと言われた時は涙した。
 それでも戦いは当たり前のように続くのにはちょっとびっくりしたが世界を放置なんて出来ない。だから受け入れることにした。
 上層の方の知り合いまで出来て世界が広がったのが楽しかった。未知なものが増え、知れるものが増えたことにワクワクした。

 俺は相棒と一緒に戦った。毎回ギリギリだったりかなり消耗する戦いだった。
 家に帰って家族と過ごし、気力を何度養ったことだか。
 俺は息子の前でだけは弱音をはいてやらなかった。格好いいおやじになるのが夢だったんだ。父ちゃんは世界を守っているだぞって笑って言い続けてやるんだ。

 息子は俺の血を継いだだけある。冒険に興味を示し、ちょっと教え込めばひょいひょい旅に出るようなった。
 俺みたくなる!とキラキラ希望に輝いた目で俺の道を追ってくる。こりゃあ格好悪いとこ見せれないな、って気合いも入る。
 守る女を作れ、なんてどやっていったら本当に寂し気な女の子を見つけるあたり運命力が強すぎる。女神の庇護の補正はどこまであるのやら。

 息子と大冒険に出ようか。そんな夢を持ちつつ。それでも戦いは苦しくて。無茶な力の使い方を何度かしてしまった。家族を守る為……それがどういう結果をもたらすのか知らないまま……

 

 ある日世界がおかしく感じるようなった。
 ステラバトルを前にしてピリピリしているせいなのか?と思ったが周りがなんだか俺たちを非難しているよう見えた。
 それは段々心を侵食して。なぜか世界が恐ろしくて恐ろしくて。
 家族に手紙を思わず書いた。帰りたい。でもステラバトルまでに家に帰れる距離にいなかった。

 負けれない。俺たちが負けたら家族はどうなる。
 互いだけを信じ、家に帰ろうといいながら複数の敵と相対することになった。

 はっきりいってこっちが複数でいつもぎりぎりだ。きつかった。苦しかった。
 それでも戦った。俺たちは家に帰る。かえる。かえるかえるカエルカエル……


 ああ、終わった。勝てた。
 さあ、家に帰ろう。家族が待ってる。クルトはどこまで冒険の足を延ばせるようなっただろうか。
 テストがてら一緒に行こうか。その前に家族水入らずでちょっと出かけようか。
 妻の笑顔に会いたい。その一心で家に足を運ぶ。なんだか風景が変わった気がする。俺はそんな家をあけていたか?
 ふらふらと、歩き続けた。家を探して歩いて歩いて歩いて………


 どうしてどこにも家がないんだ。
 どうしてどこにも家族がいない。
 どうしてどうしてどうしてどうして
 ドウシテドウシテドウシテドウシ……


 苦しい。俺は家族に見捨てられたのか。悲しい。つらい。
 なぜだ。どうしてだ。どうして俺を捨てた!どうして俺の前から消えた!!

 相棒まで同じだった。家族に俺たちは捨てられた。
 ああ、この世界にはもう敵しかいないのか。
 俺たちが世界を守っているというのに。
 なぜ女神はこんな恐ろしい世界を俺たちに救えというのだ。


 それでも容赦なく次の戦いが待っている。
 俺たちを捨てた世界を守る戦いをしないといけない。
 気が狂いそうだ。

 あぁ、俺たちはどこで間違えたんだ……
 帰りたい。あの日の家にカエリタイ……カエリタい……


 俺たちは強かった。敵ばかりの戦いも慣れてしまえば何てことなかった。
 この世にこんなエクリプスがいたとは。
 しかし世界を救って何になるというのか。
 もう希望なんて見いだせない。それなのに戦う。

 俺たちは、なぜ戦うんだ。
 あぁ……いつまでこの地獄は続く……。妻や息子は一体どこにいるんだ……


 気づいたら知らない場所にいる。気づいたら記憶が飛んでいる。
 俺はもう、俺ですらいられなくなるというのか……。

 ちくしょう、女神…お前らの仕業か……。
 これが戦ってきた俺たちへの仕打ちか!!ならばあらがって見せる!
 絶対に生き延びて、お前らを……殺してやる!!!!!


 あぁ、腹減ったな……。
 家にあったオレンジの実…食いたいな。


   さみしい。クルシイ……誰か、俺達をタスケテクレ……

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